今回は、「首都直下地震に備えた防災グッズの見直し」に関して紹介します。こんにちは、カーサミアライターのえなです。防災士という防災系の資格保有者である私が、防災に関する疑問を解決していきます。
東京都は、2022年5月25日に、10年ぶりに見直した首都直下地震の被害想定を公表しました。
10年前よりも住宅の耐震化や家具転倒防止対策が進んだことにより、死者や全壊棟数の想定は減少しています。しかし、防災・減災対策を一人ひとりが強化することで、さらに被害の軽減が可能です。
地震に備えてすでに対策を行っているという方も、これをきっかけにぜひ地震対策の見直しを一度行ってみてください。
質問:首都直下地震被害想定改定により見直すべきことは?
首都直下地震の被害想定が改定されましたね。私はいままでそれなりに備えてきたつもりですが、さらに見直したいと考えています。防災士のお立場だと、どのような見直しを行いますか?
今回の首都直下地震の被害想定の改定をきっかけに、地震対策を一度見直したいですね。では、見直すべきポイントを伺ってみましょう!
回答:首都直下地震被害想定改定により見直すべき防災グッズと対策
2022年5月25日に10年ぶりに改定された「首都直下地震被害想定」により、見直すべき防災グッズや地震対策を紹介していきます。
見直し案(1) 備蓄を3日分から1週間分へ見直す
今回の首都直下地震被害想定改定により、新たに発災から時系列的に被害状況や社会的影響をまとめた、「災害シナリオ」が追加されました。
これによると、「発災直後〜1日後」には帰宅困難者などにより、避難所の物資がすぐに枯渇したり、スーパーやコンビニなどで食料品や生活必需品が売り切れ、入手困難になったりする可能性があるとされています。
また、「発災後3日後〜」は家庭での備蓄が枯渇した在宅避難者が避難所へ移動し、避難者が増加することにより、必要な物資が行き渡らなくなったり、避難所の衛生状況が急激に悪化したりすることが予想されています。
食料品や生活必需品の確保で困ったり、備蓄が足りずに途中で避難所へ避難したりということのないよう、備蓄を3日分しか用意していないという場合には、1週間以上分の備蓄を用意するように見直しをしてほしいと思います。
見直し案(2) 火災防止対策を見直す
地震の影響により、電化製品が転倒したり破損したりすることや、停電後の復旧などにより、時には火災が発生する場合があります。
建物耐震化等が進んだことにより、10年前の被害想定よりも火災による死者数や燃失棟数は減少していると発表されました。
しかし、私たちがさらに次のような対策を行うことでより死者数や燃失棟数は減少すると想定されています。
家庭用消火器の設置
自宅で地震後に火事が発生した場合、初期消火を行えれば被害の拡大を防げる可能性があります。
そのため、一般住宅でも使いやすいように開発された「家庭用消火器」を、キッチン周りなどに一台設置するのがおすすめ。カラフルでおしゃれなデザインの商品もあり、お手入れや利用方法も簡単なものがあるため、ぜひ難しく考えずに設置してほしいです。
「家庭用消火器は必要?どこで買える?防災のプロのおすすめは…」の記事では、おすすめの家庭用消火器を紹介しているので購入の際の参考にしてみてください。
感震ブレーカーの設置
感震ブレーカーとは、強い揺れを感知した場合に自動でブレーカーを落とし、電気の共有を遮断してくれる装置のことです。設置することで、電気が原因となる火災や停電復旧後の通電火災を防ぐのに有効です。
工事が必要な「分電盤タイプ」の場合は取り付けは、大家さんへの相談が必要です。しかしおもりやバネなどを利用した「簡易タイプ」や、「コンセントタイプ」など、工事が不要で、自分でも簡単に取り付けが可能な感震ブレーカーもありますよ。
見直し案(3) 充電器を見直す
「災害シナリオ」によると「発災後3日後〜」には徐々に停電が減少するとされています。しかし、発電所自体が停電している場合や電力供給不足の場合には、「発災後1週間後〜」も計画停電が継続される可能性があります。
そのため、情報収集や安否確認に欠かせないスマホが充電できるよう、モバイルバッテリーを用意していたとしても、停電が長期化した場合にはバッテリーの充電が保たないことが考えられます。
長期化した停電時にもスマホや家電などが利用できるよう、ソーラー式のモバイルバッテリー、または大容量バッテリーのポータブル充電器へ、現在備えている充電器を見直すことをおすすめします。
見直し案(4) 自宅の安全性を見直す
建物耐震化等が進められたことや、家具転倒・落下防止対策の実施率が向上したことから、10年前よりも全倒壊数や建物の倒壊による死者数や家具の下敷きによる死者数は減少しています。
しかし、火災同様にさらに私たちが以下のような対策を行うことで被害想定は軽減されるでしょう。
自宅の耐震性を確認する
自宅の耐震性の確認を行いましょう。築年数、新耐震基準かどうか、賃貸の構造、耐震新診断の結果などを元に確認するといいです。
詳細がわからない場合は、大家さんや管理会社に確認してみましょう。もし、耐震性に不安がある場合は、引っ越しも検討してみてください。
家具転倒・落下防止対策
自宅の家具転倒・落下防止対策の見直しを行いましょう。きちんと固定しているつもりでも固定が緩んでいたり、新しく買った家具は固定を忘れていたりする場合もあります。
また、家具の転倒防止だけでなく家具の落下防止や移動防止にも目を向けてほしいです。例えば、食器棚などの扉付きの家具の場合、転倒は免れたとしても扉が開き、中の食器などは散乱してしまう可能性があります。
他にも、キャスター付きの家具は飛んできて怪我をする可能性があります。移動防止や落下防止対策が必要な家具や小物がないかも確認してみてほしいです。
見直し案(5) 帰宅困難への備えを見直す
テレワークが広がったことで、10年前の想定よりも帰宅困難者は減少しています。しかしそれでも、都心南部直下地震が発生した場合には、帰宅困難者は約453万にも及ぶとされています。
地震により鉄道や新幹線の運行が停止することが想定され、「1週間後〜」順次運行が再開される予想ですが、多くの区間で運行停止は継続され、長い場合は1ヶ月以上復旧に時間を要する場合もあります。
また、平常時であれば鉄道等の運行が停止した場合、バス等の代替交通が実施されますが、道路寸断などにより代替交通による帰宅も困難になることが予想されるでしょう。
もし帰宅困難者となった場合に困らないためにも、自宅の備えだけでなく、次のような帰宅困難への備えの見直しも行ってください。
職場でも備えを行う
帰宅困難に備えて、職場に次のような防災グッズをキャビネットやロッカーに用意しておくと安心です。また、これらのアイテムをリュックに詰めて用意しておけば、両手が空いた状態で持ち出せて便利です。
- 飲料水、食糧
- モバイルバッテリー
- 携帯ラジオ
- 運動靴
- 懐中電灯
- 着替え
- 救急用具セット
- 洗面用具
- 常備薬
- 現金(小銭)
- 生理用品 など
防災ポーチを持ち歩く
帰宅困難や外出時の災害に備えて、いつも持ち歩くかばんの中には防災ポーチを用意しておきましょう。
防災ポーチにはどのようなものを備えればいいのかは、「0次の備え・防災ポーチを作ろう。必要なグッズ10選【防災士解説】」の記事を参考にしてみてください!
私たち一人ひとりがさらに地震対策を強化することで、地震による被害は大きく軽減すると考えています。
今回の首都直下地震被害想定の改定により対策の見直しを行うだけでなく、防災の日や季節の変わり目などには定期的に地震対策の見直しを行ってみてほしいです。
出典:首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)|東京都防災ホームページ