一人暮らしなら、災害時に頼れるのも自分だけ。日本は30年以内に大型地震が必ず来るとも言われていますし、近年は想定外の大雨による災害も頻発しています。
日頃からの備えも大切ですが、そもそも、なるべく災害に遭わないように暮らしたいと思いますよね。
こんにちは。カーサミア編集部員で宅建士のアサノです。私はズボラ女子かつ心配性で、リスクは事前につぶしておきたい性格。そんな私が、地震・洪水に強い町についてご紹介します。
この記事では、自分でリスクを調べる方法や、編集部で災害リスクを調べた上でのおすすめの町もご紹介しています。最後までぜひご覧くださいね。
お部屋探しのとき、地震・水害などの災害のリスクを考える理由
近年は大規模な災害が相次いだため、現在は住まいを契約する際に、不動産業者から入居者に向けて水害リスクや土砂災害リスクなどを「重要事項説明」として説明することが義務付けられています。
でも実際のところ、契約まで進んだ段階で初めてリスクを知っても、考え直すことが難しい場合もあるでしょう。お部屋探しの段階で、ある程度は自分でも把握しておきたいものです。
あらゆる災害リスクが少ない町を選べれば理想的です。しかし、地震・水害(洪水・高潮など)・土砂災害・津波などのすべてにおいてリスクの少ない町と、自分の住みたいエリアが一致しないこともあるでしょう。
そうしたとき、たとえば「洪水リスクの高いエリアだから、しっかり備えたうえで上層階に住む」という選択肢もあります。
筆者はリスクを避けたい性格ですが、特に賃貸の場合は、購入する場合よりも許容範囲が大きくなるとも考えています。賃貸なら何かあったときにも身軽に引っ越せるからです。自分がどの程度まで許容できるのか、価値観やライフスタイルを考えておくことも大切ですね。
それぞれのリスクに応じた備えをするためにも、町ごとのリスクを知っておきましょう。
東京都で地震に強い町は?
東京都内で地震に強い町については、調べやすいです。
東京都が市区町村を横断して、被害想定や危険度調査を行っているからです。
想定される5種類の地震による震度予測
まずは地震に強い町を探すため、東京都が発表している「首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)」を見てみましょう。
この被害想定は、東日本大震災を踏まえ策定した
「首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年公表)」
「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定(平成25年公表)」
を、10年ぶりに見直したものになります。
想定されている5種類の地震モデルについて、それぞれの震度予測は以下の通りです。
都心南部直下地震(マグニチュード7.3)
東京都の南側、フィリピン海プレート内で地震が発生した場合の予測です。
都内で最大規模の被害が想定される地震で、震度6強以上の範囲は23区の東南部を中心に、約6割に広がると想定されています。
江東区・品川区・目黒区・大田区の一部では震度7も予測されています。
多摩東部直下地震(マグニチュード7.3)
こちらは多摩地域の東部を震源域とするプレート内地震予測です。
多摩地域に大きな被害が想定されますが、震度7以上の地域はごくわずか。震度6強以上の範囲は多摩地域の2割です。23区内でも、震度6強以上が予測されるエリアがあります。
大正関東地震(マグニチュード8クラス)
1923年(大正12年)9月1日に南関東を中心に発生した「関東大震災」クラスの地震が起きた場合の予測です。
震度7の面積はごくわずかで、震度6強以上の範囲は区部南部や東部、町田市等において見られます。マグニチュードは大きいものの、揺れは都心南部直下地震より小さな規模になると想定されています。
立川断層帯地震(マグニチュード7.4)
立川断層で地震が発生した場合の被害予測です。活断層を震源とする地震であり、大きく揺れるエリアは多摩地域のみです。震度6強以上の範囲は多摩地域の約2割に広がっています。
発生源が地中の浅い部分のため、立川市とその周辺を中心に、震度7(地図の赤い部分)が目立ちます。
一方で多摩東部直下地震と比較すると、区部での揺れは小規模になりそうです。
南海トラフ巨大地震
震度は区部・多摩・島しょ部、いずれの地域でも、ほぼ5強以下となります。揺れによる被害はほぼ発生しない見込みです。
ただし、後述するように南海トラフ地震が起きた場合には、最大2.6mを超える大きな津波が予想されています。揺れそのものよりも、津波の被害に気を付ける必要があるということです。
総合的に見て、地震の際に揺れにくい町は?
上記のように、東京では複数の発生源の地震が想定されています。発生源が異なると、当然ながら揺れるエリアも異なります。
それでは、「どんな地震にも強いエリア」はあるのでしょうか?
複数の地震を横断して、揺れの予測を確認できる地図があります。
国立研究開発法人 防災科学技術研究所の出している「地震ハザードステーション J-SHIS MAP」を見てみましょう。
「震度5強」以上の揺れに見舞われる確率
地図のほぼ全体が、危険度の高いことを示す紫色に塗りつぶされています。
東京近郊のすべての町が「震度5強」以上の揺れに見舞われる可能性が高いということです。
「震度5強」とは
- 物につかまらないと歩くことが難しい
- 棚にある食器や本が落ちる
- 固定していない家具が倒れることがある
- 補強されていないブロック塀が崩れることがある
とされる強い揺れです。
「震度6強」以上の揺れに見舞われる確率
「震度6強」以上の非常に強い地震に絞ると、エリアによって色の違いが出てきました。23区内や近郊は、リスクが高いことを示す「赤色~紫色」のエリアがほとんどです。
このように東京近郊は、広い範囲で揺れに見舞われる可能性があります。
「震度6強」とは
- はわないと動くことができない、飛ばされることもある
- 固定していない家具のほとんどが移動し、倒れる
- 耐震性の低い木造建築は傾いたり、倒れるものが多くなる
- 大きな地割れが生じたり、大規模な地すべり、山の崩落が発生することがある
という、非常に強い揺れです。
ただし、この「地震ハザードステーション」の色分けされた地図を見るときには、「まだ想定されていない地震」が起きる可能性もある、ということに注意する必要があります。
たとえば、大きな被害を出した令和6年能登半島地震(2024年1月)では震度7の揺れが観測されていますが、この地域は「震度6強以上の揺れに見舞われる確率:0.1~3%」と、強い揺れが来ることはほとんど想定されていませんでした。
地震に関する「総合危険度」測定調査
また、地震による危険は、揺れそのものによる耐震性の低い建物の倒壊リスクだけではありません。
火災の発生による延焼のリスクもあります。また、道路や公園が少ない住宅密集地域では、危険地域からの避難や消火・救助活動が困難になるリスクもあります。
こうした危険性を総合的に判断し、東京都では「地震に関する地域危険度測定調査」を公開しています。
「全ての町で同じ強さの揺れが生じた場合の危険性」を出しているので、想定されている地震が起きた場合はもちろん、想定されていない震源で地震が起きた場合のリスクも織り込まれていると考えられます。
地震リスクの「総合危険度」
地震リスクの「総合危険度」として、町丁目ごとに、相対的な危険度が色分けされています。
この総合危険度は、それぞれの町の「建物倒壊危険度」と、「火災危険度」を基に、「災害時活動困難係数」をかけ合わせて測定しています。
建物倒壊危険度とは
地盤(揺れやすさ・液状化の可能性)、建物の密集度、建物特性(耐震性の高い構造かどうか・建築年代)の3つ項目をもとに算出されています。
出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)あなたのまちの地域危険度パンフレット|東京都
危険度の高い地域は、地震が起きた場合に揺れやすい(揺れが増幅されやすい)地盤で、古い木造や軽量鉄骨造の建物が密集している地域です。
具体的には、荒川や墨田川沿いのいわゆる下町地域などに分布しています。
火災危険度とは
地震が起こると、揺れにより発生した火災の延焼により、広い地域で被害を受ける危険性があります。火災危険度は、出火の危険性と延焼の危険性を基に測定されています。
出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)あなたのまちの地域危険度パンフレット|東京都
危険度の高い地域は、耐火性能の低い木造住宅が密集し、延焼を遮断する広い道路や公園が少ない地域です。23区内の環状7号線の内側や、区部ではJR中央線沿線に分布しています。
災害時活動困難係数とは
以下の二つの項目によって定められます。
活動有効空間不足率
出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)あなたのまちの地域危険度パンフレット|東京都
避難や消火、救助、救援など、災害時活動に有効な空間が不足していると、災害時活動困難係数が高くなります。
道路ネットワーク密度不足率
出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)あなたのまちの地域危険度パンフレット|東京都
避難や消火、救助、救援など、災害時活動のために必要になる幅の広い道路と被災地を繋ぐネットワークが不足していると、災害時活動困難係数が高くなります。
総じて災害時の救助活動が難しくなるのは、広い道路の整備がそれほど進んでいない地域です。多摩地域や、23区西部などに分布しています。
一方で都心部や東京東部は、災害時活動困難係数が低い地域です。
地震の総合危険度が高い町・低い町
この総合危険度調査から、地震に関する危険度の高い町・低い町をピックアップしました。
23区内の町
東京都の「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)地域危険度一覧表」をもとに、危険度が最も高いとされている「ランク5」の85町丁目を、危険度が高い順に並べました。
地盤が弱い「沖積低地」で、建物倒壊危険度・火災危険度ともに高い23区東部の町が中心です。
しかし地盤が強い「台地」でも、昔からの建物が密集している地域では、火災危険度と災害時活動困難係数が高いことにより、総合危険度が高く判定されている町もあります。
区 町丁目名 | 地盤分類 | 建物倒壊 危険度 ランク | 火災 危険度 ランク | 災害時 活動困難 係数 | 総合 危険度 順位 |
---|---|---|---|---|---|
荒川区荒川6丁目 | 沖積低地3 | 5 | 5 | 0.3 | 1 |
荒川区町屋4丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.31 | 2 |
足立区柳原2丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.22 | 3 |
足立区千住柳町 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.3 | 4 |
墨田区京島2丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.21 | 5 |
墨田区墨田3丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.24 | 6 |
足立区千住大川町 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.29 | 7 |
江東区北砂4丁目 | 沖積低地5 | 5 | 5 | 0.31 | 8 |
墨田区押上3丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.27 | 9 |
足立区関原2丁目 | 沖積低地5 | 5 | 5 | 0.28 | 10 |
大田区羽田6丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.28 | 11 |
荒川区南千住1丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.24 | 12 |
北区志茂4丁目 | 沖積低地5 | 4 | 5 | 0.3 | 13 |
北区岸町2丁目 | 沖積低地2 | 5 | 5 | 0.36 | 14 |
墨田区東向島1丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.22 | 15 |
江東区北砂3丁目 | 沖積低地5 | 5 | 5 | 0.26 | 16 |
葛飾区東四つ木3丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.2 | 17 |
江東区北砂6丁目 | 沖積低地5 | 5 | 5 | 0.23 | 18 |
墨田区八広3丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.24 | 19 |
足立区中川2丁目 | 沖積低地5 | 4 | 5 | 0.37 | 20 |
足立区千住4丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.23 | 21 |
荒川区西尾久6丁目 | 沖積低地3 | 4 | 5 | 0.33 | 22 |
荒川区南千住5丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.22 | 23 |
大田区羽田3丁目 | 沖積低地3 | 5 | 5 | 0.23 | 24 |
足立区千住寿町 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.18 | 25 |
荒川区荒川3丁目 | 沖積低地3 | 5 | 5 | 0.24 | 26 |
荒川区町屋2丁目 | 沖積低地3 | 5 | 5 | 0.28 | 27 |
荒川区西尾久5丁目 | 沖積低地3 | 5 | 5 | 0.23 | 28 |
墨田区墨田4丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.27 | 29 |
大田区西蒲田4丁目 | 沖積低地3 | 4 | 4 | 0.42 | 30 |
足立区千住元町 | 沖積低地5 | 5 | 5 | 0.26 | 31 |
北区志茂5丁目 | 沖積低地5 | 4 | 5 | 0.25 | 32 |
足立区柳原1丁目 | 沖積低地4 | 5 | 5 | 0.23 | 33 |
大田区仲六郷2丁目 | 沖積低地3 | 4 | 5 | 0.31 | 34 |
江戸川区平井2丁目 | 沖積低地4 |