この連載は、「一人暮らしで趣味を満喫しているオタク女子(そして腐女子)が家を買ったら……?」という物語を描く、1話5分のほっこりwebノベルです。
「家を買ったときの話、身近な友達には聞きにくい……」そんな疑問が解決するかも!
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「今は、買いどきじゃないかもしれません」
カーサミア不動産の担当者、吉村さんの発言に私は驚いた。
だって、家を買ってもらうことがこの人の仕事なのに……逆に、購入を止められた!?
「藤吉さんの『買いたい』という気持ちと、物件の出方とか藤吉さん自身の状況とかがうまく噛み合っていないというか……いまから半年間、それまでに貯蓄を増やしたり、御自身の家計をほんの少しだけ見直されてみたり。住宅ローン事務手数料、税金、 仲介手数料などの【諸費用】をしっかりと貯める準備期間に当ててみたらいかがですか?」
準備期間。
そんな提案に、……私は奮起した。
そう。
広々収納があって、壁にポスターも貼れて、親友が近くに住んでいて、私の資産になる……。
私が納得できる、理想の生活を、わくわくする自分の家を手に入れるために。
* * *
「まずは、家計の見直しからだ!」
支払い履歴やカードの履歴を床に並べて、ガッツポーズ。
なるべく推しに貢ぎたい(※新規グッズを買ったり、ゲームに課金したり、舞台を見に行ったりすること)という気持ちで、自分の生活はなるべく切り詰めていたけれど……。
「スマホ、家にいる時間はWifiにつなげるから格安SIMでもいいかもな」
「うーーん、ペットボトルのお茶代けっこうあるかも。160円を会社に行くたびに買っているから……160×20で、3,200円か。これに会社の近くのワンコイン弁当をつけてて……13,200円っ! けっこう大きいな。あ、このあいだマンション買ったっていう先輩、最近はお弁当にマイボトルで、給湯室のお茶飲んでるなぁ」
ガサゴソ。
グッズの山をひっくり返す。
「あった!」
タンブラー!
これは、たしかコンビニで『プロメア』コラボのくじをやっているときにB賞をあてたときの景品だ。もったいなくて使っていなかったけれど、デザインもおしゃれで「アニメグッズ!」って感じじゃないし、大きさもちょうどいい。会社にいてもこれを使ってたらテンションが上がりそうだ。
「マイボトル、確保。あとはお弁当箱は……ジップロックコンテナでいいかな」
前にTwitterで、四角いジップロックコンテナをお弁当箱にして使っている画像を見たことがある。汁漏れがしなくていいと聞いたし、なにより具材がちょっと透けて見えてお洒落だった。スクリュー蓋のジップロックコンテナには、たしか汁物も入れられるみたいだ。カレーとか持っていけるかも?
「たしか、うちにいくつかあるからそれを使おう!」
お弁当箱ゲット。
なんだか、楽しくなってきた。
……でも。
「お菓子は必要経費だな」
お菓子、すぐにはやめられないんだよなぁ……ダイエットにもなるから、段階的に減らそう。そうしよう。
* * *
――半年後。
いくつかの物件を見ては、やっぱりちょっと違う! というのを繰り返して。
ちょっとずつ、お弁当やマイボトル……さらにはお菓子の削減(3キロ痩せた!)にも慣れてきたころ。
私は、久々に記帳した貯金通帳を見て微笑んだ。
「……やったぁ、目標達成!」
預金通帳には、2,000,000という数字。
いちじゅうひゃくせんまんじゅうまんひゃくまん、……200万!
これで、準備は整った。
ちょっと高い物件も視野に入れられるかもしれないし、もしお手頃な物件ならローンを組んだあとに貯金が残ってがちょっと楽になるかもしれない。
ちょっと、強くなった気分だ。
霊基再臨!(ちがう)
――そんなある日。 カーサミア不動産から提案された、一軒の物件。
大井町。
11帖のひろびろワンルーム。
ウォークインクローゼット。
間取りや条件、添付されている写真に――ビビッときた。
頭金と諸費用。
マンション購入時に貯金から出すお金(=自己資金)…という意味では似ていますが、別物です。
頭金は、言葉を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
物件価格のうち、住宅ローンを組まずに現金で支払う部分のことです。
諸費用は、物件価格とは別に必要になるお金です。
仲介手数料、住宅ローン融資事務手数料、各種税金などなど。中古マンションの場合は、物件価格の7~10%が目安になります。2000万円の中古マンションを買う場合、140~200万円程度です。
賃貸でも敷金・礼金・仲介手数料などで数十万円はかかりますが、購入の場合はもっと高いので、ビックリしてしまいますよね。
もちろん、頭金・諸費用ともに出せない場合でも、中古マンションを買うことはできます(収入や勤務状況など、ご本人の条件によっては…ですが)。
ので、貯金ゼロでも買いたい方も、まずはご相談くださいね。
頭金がゼロの場合は、物件価格の全額を住宅ローンで借りることになります。頭金があると、少し金利の低いローンを選べるなどのメリットがありますが、いまは低金利なので、そこまでこだわらなくて大丈夫です。
諸費用もゼロのときは、住宅ローンとは別に「諸費用ローン」を組むことになります。月々の支払い金額を変えない場合、諸費用ローンがある分、住宅ローンの返済に回せる金額(=物件予算)が減ってしまいます。
逆に言えば、諸費用分の貯金があれば、住宅ローンに回せるお金(=物件予算)が増やせるので、物件の選択肢が増やせます!
藤吉さんの場合は、半年で諸費用分のお金を貯められる目途があったので、貯金してから買うことにしました。
けれども、どのタイミングで・どうやって買うのがいいのかは、人によって異なります。
あなたのライフスタイルに合わせて最適なタイミングを考えてくださいね。
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