この連載は、「一人暮らしで趣味を満喫しているオタク女子(そして腐女子)が家を買ったら……?」という物語を描く、1話5分のほっこりwebノベルです。
「家を買ったときの話、身近な友達には聞きにくい……」そんな疑問が解決するかも!
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家を買う、という一大決心をしてから1ヶ月。
仕事終わりや、休みの日に内見を繰り返していた。
そのあいだにも、平日にカーサミア不動産の担当・吉村さん(すごく格好いい女の人で、住宅購入のプロ!)から届くメールをチェックする日々。
カーサミアの独自に作成しているおすすめ度スコア(住宅の価値を多角的に評価する基準)や、自分で書き出してみた家選びのこだわりポイントがあるので、迷いに迷う……ということはない。
迷いがないぶん、新しい悩みが発生してしまった。
それは……。
「い、いまいち推したい家がない……!」
そう。
全部理想の家というのは見つからない。
たとえば、駅や駅からの距離が理想的だと思ったら築年数が微妙だったりとか。
築浅で広い、と思ったら駅から30分(終バスが21時台)だったりとか。
ピンとこない、という感じだ。あっちが立てばこっちが立たず。
土曜の夜。
今日も内見を終えてきた私はスマホを操作して、ある人に電話をかけた。
「ずにさん」だ。
ずにさん。
本名は結城梓さん。親友で、オタ仲間で、私の憧れの人。
コールメロディが鳴って止まって、すぐに柔らかい声が聞こえてきた。
『はいはぁい、ずにちゃんやでぇ。どうしたの、トウキチちゃん?』
「あ、こんばんは! ずにさん、お疲れさまですっ」
トウキチちゃん、というのは私がネット上で名乗っているハンドルネームだ。カタカナ表記にしているのだけれど、関西出身のずにさんのはんなりとした喋り方で呼ばれると「とーきちちゃん」って感じだ。
ずにさんは、「家を買った女」の先輩でもある。
「いやあ、実は家探しをしてるんですけど……けっこう苦労してて」
『ふむふむ』
「なんかこう、これ! っていうのがないんですよね」
『まあ、高い買い物だからねぇ。ズバッとは決められないわぁ』
「ずにさんもそうでしたか!?」
『もちろん。でも、そのカーサミア不動産だっけ。トウキチちゃんの使ってるサイト、話聞くにすんごい丁寧やし、腹割って話してみたらいいやん』
「そ、そうかな」
『そうよぉ! うちに紹介してほしいくらい!』
「いやいや、ずにさんもう自分の家持ってるじゃないですか!」
『人生に1回しか買っちゃいけないなんてことないやん! たとえば売って、また別の物件買ってもいいし』
「まあ、そうですけど」
『例えば……今から、変なこというけどさ、トウキチちゃんが家買ったとして、ウチとずっと仲良くしてくれるとするでしょ。それでさ、将来「いや、ウチらもう一緒に住も!」ってなったらお互いの家売って、いい感じの3LDKとか買ってもええやん』
「あはは、なにそれ!」
『でも、いいでしょう〜?』
「すっごい、いいです!」
二人してケラケラと笑い転げる。
ずにさんの発想はいつだってパワフルで、突拍子もなくて、実現できるかはわからないけどワクワクする。そんなずにさんのことを、私はいつも眩しく思う。
『そういうわけで、次うちが家買うことになったらカーサミア不動産ってところ紹介してな?』
「了解です」
その日はずいぶんと長電話をして、明け方に寝落ちした。
* * *
「ってことがあったんですよ」
「わああ、ご紹介ありがとうございます!」
カーサミア不動産の担当、吉村さんに事の経緯を話してみた。
「ふむ……藤吉さん、『ピンとくる物件がない』と思われているんですね」
「す、すみません。なんだか、自分の貯金額とか物件の値段とかを比べると……いまいち買うぞ! ってなる物件が見つからないっていうか」
「いいんです! 逆に、教えてくださってありがとうございます」
「もう、この物件でいいかな? っていう候補はあるんですけど……」
私の言葉に吉村さんは少し考えるようなそぶりをして、――意外なことを提案してくれた。
「……藤吉さん。もしかしたら、今はまだ買いどきじゃないかもしれないです」
「ええっ!?」
「あ、そんなに長いスパンの話ではなくて! 藤吉さんの『買いたい』っていう気持ちと、物件の出方とか藤吉さん自身の状況とかがうまく噛み合っていないのかも……と感じまして」
吉村さんは
「それから、諸費用についても気にかかります」
「諸費用、ですか。あっ、なんか前に説明していただきましたよね」
「はい。物件の価格とは別に、購入時に必要になってくる費用ですね。住宅ローン事務手数料、税金、仲介手数料など……物件にもよりますが、物件価格の7%~10%くらいが目安になります。諸費用のローンもありますが、できれば即金でお支払いいただいたほうがいいかと。」
「そうだった……!」
「つまりですね。自前でご用意いただける諸経費が増額すると、いま検討しているよりも少しだけ価格帯が上の物件でも検討できる幅ができます。もちろん、手ごろな物件が見つかったら、貯金が手元に残るわけですから安心ですよね」
「あ!」
それって、つまり。
「選ぶ幅が広がる、と?」
「そういうことです!」
吉村さんは力強くうなずいてくれた。
「もしよかったら、それまでに貯蓄を増やしたり、御自身の家計をほんの少しだけ見直されてみたりという【準備期間】に当ててみたらいかがですか?」
「準備期間……!」
そんな考え方が!
私はびっくりして、目を丸くする。
吉村さん、やっぱりプロだ!
*** TIPS ***
カーサミアでは、「いまはお客様にとってベストな状態ではない」と感じたら、それを誠実にフィードバックする会社が「良心的な不動産会社」だと考えています。
いまの予算で希望のお部屋が見つからないときも、妥協しないほうがいい条件について、きちんとお話してくれる不動産会社であれば信頼できるでしょう。
たとえば…
・「あと5分くらい駅から遠くなってもいいや」
⚠️ 将来性が狭まります。5分伸びるだけでも探している人が減っていくので、将来手放すときに思った値段で売れない・貸せないということにもなりかねません。
・「築45年でも、リノベーションされているから大丈夫」
⚠️ 室内をリノベーションしても、建物の構造やおおもとの品質は変わりません。特に旧耐震の物件(1981年以前の建物)を選ぶときには、細心の注意が必要です。
・「安くて広いなら、地盤のことは気にしない」
⚠️ いくら建物を頑丈に建てても、地盤が軟弱だと、地震がきたときの被害は甚大です。大雨時の浸水被害も心配です。
・「月々の支払いを+3万円しても、頑張ればいける」
⚠️ "頑張る" は現実的ではありません。きちんと実行できる資金計画を確認し、無理のない計画を立てていきましょう。
「買いどきじゃない」は「買えない」とは違います。
いつ、どんなふうにアナタが「買いどき」を迎えるのかを、しっかりサポートしてくれる不動産会社を選んでくださいね。
次回「12話 腐女子、金を貯める。」
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