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【腐女子、家を買う。】1話 腐女子、飲み会に行く

連載|腐女子、家を買う
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この連載は、「一人暮らしで趣味を満喫しているオタク女子(そして腐女子)が家を買ったら……?」という物語を描く、1話5分のほっこりwebノベルです。

「家を買ったときの話、身近な友達には聞きにくい……」そんな疑問が解決するかも!

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 私がマイホーム購入をする、 そんな夢みたいなこと考えたこともなかった。

 私、藤吉夕美はビールを飲み干した。

 う、うまい!

 金曜日の夜7時。

 8年前から細々と勤めている会社に中途社員が入社したので、歓迎会というやつである。

 普段はお酒は飲まないけれど、会社のお金なので遠慮なく飲み食いする予定だ。


「っくぅ~~、うまい!」

「……ですね」


 先輩の男性社員が叫ぶ「うまい!」に、とりあえず同調する。

 たしかにビールも美味しいし、お刺身もうまい。

 けれど、今日は今ハマっているソシャゲの公式生放送がある予定なのだ。

 今頃、新しいキャラクターの実装やイベント開催のお知らせでネット上は沸き立っていることだろう。

 ああ、はやくチェックしたい。情報はよ!


 別にビールは悪くないし、会社の飲み会もがダメってわけじゃないけれど……帰ってTwitterしつつ録画したアニメを観たり、なんならレイトショーでただいま絶賛ドはまりしている映画を観に行けば、ビールなんかよりもよっぽど火消し魂に火がつくというのに!

 あ、いや、べつに私の仕事は火消し(※とても面白い映画『プロメア』の主人公の職業である)でもなんでもないのですけど。


「なんだよ、藤吉。おまえ、しけた顔して」

「しけてないっす。先輩こそすでに顔が赤いですよ」

「そうか?」

「そうですね。もしかして、あまりお酒強くないんじゃないです?」

「ばれたか! うっははは~。まいっちゃうなぁ。あっ、ビールおかわりください! ほかに何か飲む人~?」

「……ご機嫌ですね」

「おう。実はな」

 と、先輩は声を落とす。

「俺、このたびマンションを買いまして」

「お、おお。おめでとうございます」

「今度、二人目が生まれただろ。だから、良い物件をずっと探してたんだよ」

「ああ、お子さんが」


 先輩は、今年で35歳とか36歳とかそんな年齢だ。

 おととし社内結婚してから、立て続けに奥さんが妊娠して今や二児のパパである。


「そうかぁ、マンションですかあ」

「なんだ、藤吉。お前も買うのか?」

「いやいや! 私独身ですし、全然買わないっす。ただ、もうすぐ今住んでる家の更新月だなぁ~って」

「ああ。更新料かあ」

「家賃の2か月分……っ、ねんどろ25個分のお値段……っ!!」

「なんて?」

「なんでもないっす」


 ねんどろ。ねんどろいど。
 2頭身で可愛い、フィギュアである。
 推しキャラのねんどろはとりあえず買う。これ、オタクの習性。

 ねんどろは、買えば推しのフィギュアが手に入るのに、物件の更新料は後には何も残らない。

 虚無である。……あーあ、しばらくは、色々我慢しなくちゃだな。

 ああ、どうして生きているだけでこんなにお金がかかるんだろう。

 私はただ、推しにだけ貢ぎたいのに!!

 こんな状態じゃあ、先輩みたいに家を買うなんて――とてもじゃないけど考えられないな。

 ふう、とため息をつく私に、赤ら顔の先輩は爆笑した。……笑い事じゃねぇぞ。

 そのあとすぐに、本日の主役である新入社員さんが、

「お疲れ様です!」

 と元気よく挨拶にきて、先輩との会話は終わった。

 あとはラストオーダーまでどんちゃん騒ぎである。

 なお、先輩は酔いつぶれた。


   * * *

 
「うおおお。帰るぞぉ~、マイスウィートホームにぃ~っ!」


 先輩、叫んでる。よっぽどマンションを買ったのが嬉しいんだなぁ。

 ……でもちょっと面倒くさい酔い方してるな、先輩。

 そうため息をつきながら、デロデロに酔っぱらっている先輩を横目に一次会で失礼することにした。


 乗り換え1回。

 東急東横線。日吉駅。

 働き始めたときから住んでいる、なじみの街だ。

 駅に降りた瞬間、帰ってきたぞという気持ちになった。


「さーて、明日はオフ会だ!」


 明日は土曜日。

 長年のオタク友達とお泊り会の予定がある。

 『プロメア』に どハマりした流れからの、同じ製作陣の『キルラキル』全話イッキ鑑賞会合宿である。

 ……まさか、その合宿で運命の出会いがあるなんて。

 このときの私には知る由もなかった。

*** TIPS ***

一人暮らし女性(単身女性)の持ち家率を年齢別に見ると、こんな感じです。

30歳未満 2.1%
30代  12.4%
40代  61.5%
50代  68.4%
(出典:総務省統計局 平成26年全国消費実態調査)

30歳では、まだ自分の家を持っている人は少数派。 トウキチさんも 「いやいや! 私独身ですし、全然買わないっす」と答えていますね。

でも40代になると、独身でも家を買っている女性が多数派になっていきます。

ちなみに40代以降は、一人暮らし男性より、一人暮らし女性の方が、持ち家率が高いんですよ。女性の方が堅実に将来を考えている証拠かもしれません。

次回「2話 腐女子、友達の家に行く。

毎週水曜・土曜更新!

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