この連載は、実家暮らしをしている新卒2年目の20代女子が、一人暮らしへの憧れから「オトナ女子のよりよい暮らし」を求めて部屋選びをする という、1話5分のあるある満載のwebノベルです。
「そろそろ一人暮らししたいな」と考え始めたあなた…!一人暮らしする前の準備を整えやすくなるかもしれませんよ!
> この連載を最初から読む
著:蛙田アメコ / イラスト:八咲ヒサ
「コンセントの位置は重要だよ!」
会社の休み時間。
たまたま一緒になった同僚が、力強く宣言した。
「コンセントの位置?」
「そう! いま住んでる家さ、コンセントがめっちゃ少ないんだよね。居間ならたこ足配線でなんとかなるんだけどさ……キッチンが」
「キッチン?」
「うん、あまりにもコンセントが少なくてさ……うち、炊飯器ないんだよね」
「ええ! どうやってごはん炊いてるですか!」
「フライパンで炊いてるよ。それか、チンするパックごはん。いやぁ、トイレの真横にしかコンセントなくてさ……炊飯器置くのはちょっとねぇ?」
「たしかに……」
チェックポイント、コンセントの位置。
それは全然考えたこともなかった。
ひとり暮らしをしたいと思い始めて数週間。
今週末に、いよいよ実際に内見に行くことになったので、「どんなところを気にした方がいいか」のチェックリストを作ろうと色々な人にインタビューをしている。
趣味が第一の自由人、藤吉先輩曰く。
『収納はめっちゃ大切だよ! ロフトは空調がきかなくて寝室にはできなかったかな。結局物置になっちゃったんだけど……大きいものは入らないから、やっぱりごちゃごちゃになってた!』
と、収納の大きさを強調していた。
キッチンにこだわったという会社の先輩2人に話を聞いたら、
「絶対にIHがいいわよ! 掃除が楽だし! あとね、ウチの娘は地方の美大で油絵やってるんだけど、部屋はIH選んでたわよ~、油絵の作業してる部屋は火気厳禁なの! 」
「俺は絶対にガス火がよくて、2口コンロがあるとこを探した。やっぱ火が目で見えないと、なんとなくやりにくくてさ」
「な、なるほど!?」
絶対、IH派。
絶対、ガス火派。
めっちゃ意見が割れてる!
でも、たしかにお互いの言っていることはわかるなぁ。
結局は、好みってことなのかな。私は、どっちがいいだろう。
「あ! そういえば、プロパンのところはガス代が高かったなぁ」
「プロパン?」
ガス火派の先輩が、うんうんと頷く。
「えっと、ガスには都市ガスってのとプロパンガスってのがあって、プロパンガスだとガス会社によってはガス代がめちゃくちゃ高いことがあるんだよ。昔プロパンガスの物件住んでた時に、3日間煮込んだ特製カレーを作ったんだが――」
「3日!」
「ああ。その月はガス代がやばいことになってた……っていうか、いま住んでる都市ガスの物件だとガス代は前の半額くらいになったぜ」
「そんなに!」
「まぁ、極端な例だとは思うけどな」
へぇ、知らなった!
ガス代……生活費のなかでも、なかなか大きく削るのは難しそうだ。できれば都市ガスの物件がいいな。
うん、もしかして。
こういう知識ってもしかして将来彼氏ができたときとか、結婚するとかってときに有利なんじゃないかな!
やっぱり「何もわからない」って子よりも、2人で家を選ぶときに色々とわかってる方が好感度も高いっていうか。
『すごいなぁ、琴美ちゃん。さすがひとり暮らししたことあると違うね! 頼りにしてるよ』
とか彼氏に言われちゃったりするかもしれない!
いやぁ照れるなぁっ!
「……家村、さっきから何にやにやしてるんだ?」
「えっ!? うそ、私にやにやしてました!?」
「ああ、かなり」
「えええ……!」
ガス火派の先輩に指摘されて、顔が真っ赤に火照ってしまった。
は、恥ずかしい!
* * *
「……よし、リスト完成!」
◆物件探しチェックポイントリスト
・月7万円前後の家賃(管理費、共益費込み)
・駅から徒歩30分以内
・会社から電車で30分以内
・できればオートロック
・できればロフトNG
・コンセントの位置
・キッチンがきれい
・コンロの種類に注意(ガス・IH)
・バストイレは別
・脱衣所もあるといい
・洗濯機は室内
・収納スペースの確認
「おお、なんかそれっぽい……!」
すごい、なんだか引っ越しできそうな気がしてくる。
週末はいよいよ内見だ。
ふふふ、不動産屋さんいい人だといいな。
すてきな部屋、見つかるかな……。
次回「7話 実家女子、はじめての内見~コンロの種類はゆずれない~」