東急電鉄目黒線「洗足」駅。渋谷駅から電車で20分弱、自由が丘駅へは10分弱とアクセスのいい場所です。
商店街「洗足いちょう通り」は飲食店やカフェなどが充実。駅からすぐに広がる住宅街はとても静かで、穏やかさが魅力です。
そんな洗足駅の地盤や防災情報はどうなのでしょうか?
株式会社トラスト・ファイブは、首都圏で30年近く不動産開発を行なってきた「土地のプロ」として、街の地盤や防災情報などを発信しています。
街で見かける「普通の不動産屋さん」と違って、仲介(賃貸物件や中古物件の紹介)をしていないので、普通の不動産屋さんが書きづらいことも記事にできる立場です。
物件をお探しの際には、こちらの情報もぜひ役立ててくださいね。
洗足駅周辺の防災情報
洗足駅周辺は、目黒区・大田区・品川区の3つの自治体にまたがるエリアです。
- Q洗足駅周辺の水害リスクは?
- A
エリア内には地下に埋設された暗渠(あんきょ)となっている立会川が流れており、現在は立会川幹線として下水道に転用されています。立会川周辺では、深い浸水に見舞われる可能性があります。最大で浸水深3.0mの想定です。
また水路から離れた場所にも、1.0m程度までの浸水が想定されている場所があります。
- Q洗足駅周辺の土砂災害リスクは?
- A
南千束2丁目では、土砂災害警戒区域に指定されている場所があります。警戒区域の範囲は広くありませんが、地震や水害が発生した際には十分な注意が必要です。
- Q洗足駅周辺の液状化リスクは?
- A
北千束1丁目では、地震が発生した際に地盤が液体状になる液状化現象が起こる可能性が高いエリアがあります。道路や建物に被害が出る場合があるので、地震発生時には要注意です。
- Q洗足駅周辺の地盤は?
- A
洗足駅周辺の地盤は全体的には安定していますが、立会川や洗足池付近では軟弱な地盤が見られます。軟弱な地盤のエリアは、地震発生時に周囲より揺れやすいと予想されています。
- Q洗足駅周辺の地震リスクは?
- A
地震発生時の建物倒壊リスクは低い地区が多いものの、火災リスクはやや高い地区があります。建物倒壊リスクや火災リスクなどを合わせた総合的なリスクでは、中程度以下となっています。
洗足駅周辺でお部屋探しの際は本記事の防災情報も参考にしながら、安心して暮らせる住まいを見つけてください。
洗足駅周辺の洪水リスク|立会川周辺では最大3.0mの浸水が想定
立会川周辺は、深い浸水が想定されているエリアが続いています。最大で3.0mの浸水が発生する可能性があります。
立会川から離れた一部地域でも1.0m程度までの浸水が想定されているので、内水氾濫(下水道などの排水能力を上回る大雨によって、地上に雨水があふれる現象)に注意が必要です。
洗足駅周辺の洪水・内水氾濫ハザードマップ
洗足駅周辺の浸水リスクは、目黒区・大田区・品川区の3つの自治体から提供されている水害ハザードマップで確認することができます。
それぞれのハザードマップを見比べると、浸水の深さに関する区分が自治体によって異なっています。目黒区は6段階の表記、大田区と品川区は5段階の表記です。
本記事では、各自治体の水害ハザードマップをもとに、洗足駅周辺の浸水リスクを比較・検証していきます。
目黒区の水害ハザードマップ


立会川の周辺エリアでは、最大で2.0mの浸水が想定されています。2.0mの浸水は、一般家屋における1階軒下に相当する深さなので、早めの避難行動が必要です。
また、立会川より南側でも、約1.0mの浸水が発生する可能性があり、内水氾濫への警戒が必要です。
大田区の防災ハザードマップ



北千束3丁目では浸水深1.0mの想定エリアが見られますが、大田区内では立会川幹線の影響を受けないため、人の背丈以上の深い浸水は想定されていません。
品川区の浸水ハザードマップ


洗足駅周辺の品川区内では、立会川周辺で最大3.0mの浸水が想定されています。
目黒区のハザードマップでは立会川周辺は最大2.0mとなっていましたが、品川区のハザードマップの区分は2.0mの区切りがないため、浸水想定が多少異なります。
洗足駅周辺の避難所情報




洗足駅周辺では、目黒区と大田区に避難所が指定されています。避難所は居住自治体に関係なく、避難が必要な人なら利用できますので、住んでいる場所に近い避難所を確認しておきましょう。
目黒区内の避難所は、原町2丁目にある「原町小学校」と洗足1丁目にある「第九中学校」となっています。
大田区内は、北千束1丁目にある「清水窪小学校」と北千束2丁目にある「赤松小学校」が避難所に指定されています。
避難所は災害の状況に応じて開設されますので、各自治体のホームページなどでこまめに避難情報をチェックしましょう。
洗足駅周辺の土砂災害リスク|南千束2丁目に土砂災害警戒区域
土砂災害には、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)・土石流・地すべりの3種類があります。洗足駅周辺の警戒区域は、すべて急傾斜地の崩壊による土砂災害となっています。
東京都では、土砂災害の危険がある区域を「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」および「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」として指定しています。イエローゾーンは人の生命または身体に危害が及ぶ可能性のある場所、レッドゾーンは建物に損壊が生じて人の生命または身体に著しい危害が及ぶ可能性のある場所です。
洗足駅周辺では、南千束2丁目の一部がイエローゾーンに指定されており、土砂災害への警戒が必要です。
洗足駅周辺の土砂災害ハザードマップ


南千束2丁目に土砂災害警戒区域に指定されている場所があります。警戒区域の範囲は狭いですが、水害や地震発生時には注意が必要です。
土砂災害が発生する前には、地鳴りが聞こえたり、突然湧き水が出たり、小石がパラパラと落ちてきたりするといった兆候が現れることがあります。これらの異変に気づいた場合は、ただちに避難しなければなりません。
洗足駅周辺の液状化リスク|北千束1丁目の一部はリスクが高め
大田区の防災ハザードマップでは、地盤の液状化の可能性がある場所を示したマップを提供しています。液状化とは、地震の揺れによって地下水位の高い砂の地盤が液体状になり、構造物などの損壊につながる現象です。
目黒区と品川区からは液状化に関するハザードマップが提供されていないため、本記事では大田区のみの液状化リスクを確認していきます。
北千束1丁目の一部では、液状化が発生する可能性が高いと予想されています。一方、洗足駅の隣駅の大岡山駅に近いエリアでは液状化の可能性が低いと見られています。
洗足駅周辺(大田区)の液状化可能性マップ


北千束1丁目の北側エリアでは、液状化の危険性が「高い」と予想されています。東寄りの地域でも「やや高い」予想です。
大岡山駅付近や東急目黒線より南側のエリアでは、低リスクとなっています。
洗足駅周辺の地盤|立会川や洗足池周辺は軟弱な地盤
ここからは、国立研究開発法人の防災科学技術研究所が提供している「地震ハザードステーション」のデータで洗足駅周辺の地盤の特徴を見ていきます。
洗足駅周辺は比較的丈夫な地盤が広範囲に見られますが、立会川や洗足池周辺は軟弱な地盤が続いています。地震の際には、こうした川や池の近くは揺れが大きくなる傾向があると予測されています。
洗足駅周辺の地形区分


洗足駅周辺は、2種類の地盤で形成されています。
洗足駅周辺で広い範囲に分布している「火山灰台地」は火山灰が堆積した地形で、関東の中では比較的丈夫な地盤のひとつです。
もう一つの「谷底低地」はやわらかい土や枯れた植物などが堆積した軟弱な地盤。川の流れで運ばれた土砂によって形成されていて、洗足駅周辺では立会川周辺や南千束2丁目にある洗足池付近で見られます。
洗足駅周辺の「揺れやすさ」目安

上の地図は、表層地盤増幅率を表したものです。表層地盤増幅率の数値が高い場所ほど、地震の際に揺れやすいエリアと考えることができます。
最も広い範囲に見られるのは、増幅率1.4~1.6のエリアです。東側エリアでは増幅率1.6~2.0となっており、比較的揺れやすい場所となっています。
原町や洗足池付近では増幅率2.0~2.5との予想で、洗足駅周辺の中では最も揺れやすいとされています。
反対に、小山7丁目や北千束1・3丁目の一部では増幅率が1.2〜1.4と低く、比較的揺れにくいと見られています。
一般的に軟弱な地盤のエリアでは地震発生時に揺れやすい傾向が見られ、洗足駅周辺でも谷底低地のエリアが揺れやすいと予想されています。
洗足駅周辺で震度6強以上の地震に見舞われる確率

洗足駅周辺における震度6強以上の揺れに見舞われる確率を見てみると、6~26%が大半ですが、北側エリアにある原町などの一部地域では26~100%の予想となっています。

東京近郊全体の震度6強以上の確率を見ると、6~26%のエリアが広範囲に見られます。洗足駅周辺の原町の一部では、比較的高い確率が予測されているようです。
震度5弱 | 100.0% |
震度5強 | 93.1% |
震度6弱 | 49.5% |
震度6強 | 9.5% |
上の表は、洗足駅周辺で今後30年間に起こる地震の確率を、震度ごとに表したものです。
今後30年以内に、震度5弱は100%、5強は93%と高い確率で見舞われる予想されています。震度が上がるにつれて確率は下がりますが、震度6弱でも50%弱と安心できない数値です。防災意識を持って、いざという時の備えをしておきましょう。
洗足駅周辺の地震リスク|東側エリアの一部では火災リスクがやや高め
東京都が提供する「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」で、地震発生時の各種リスクを見ていきましょう。この地図では地区ごとに5段階でランク付けされており、ランク1が最も低リスクで数字が上がるにつれてリスクが高くなります。
建物倒壊危険度はランク2の地区が多く、建物倒壊リスクは比較的低いエリアです。火災危険度ではランク4に該当する地区が東側エリアの一部に見られ、やや高リスクとなっています。
閑静な住宅地である洗足駅周辺では建物が多く建ち並ぶため、建物倒壊や火災といった二次災害につながるリスクが少なからずあるようです。
洗足駅周辺の「建物倒壊危険度」


洗足駅周辺における建物倒壊危険度は、ランク1からランク3までの地区があります。
最も低リスクとなるランク1には、南千束2丁目のみが該当しています。
ランク2の地区は、洗足2丁目と碑文谷1丁目、南1・2・3丁目、北千束1・2・3丁目、南千束1丁目、荏原7丁目、小山5・7丁目、旗の台1・2・6丁目となっています。
洗足駅周辺で最も高リスクとなるのは、ランク3の洗足1丁目と原町1・2丁目、目黒本町5・6丁目、荏原5・6丁目、小山6丁目、旗の台5丁目です。
洗足駅周辺の「火災危険度」


火災危険度ではランク4までの地区があり、火災リスクがやや高い地区が見られます。
ランク1には、南千束2丁目と旗の台1丁目が入っています。
ランク2の地区は、洗足2丁目と碑文谷1丁目、南1・2丁目、北千束2丁目、小山5・7丁目、旗の台2丁目です。
ランク3の地区が最も多く、洗足1丁目と原町1・2丁目、南3丁目、目黒本町5・6丁目、北千束1・3丁目、南千束1丁目、荏原5丁目、旗の台5・6丁目が該当しています。
洗足駅周辺で最も高リスクとなるのは、ランク4の荏原6・7丁目と小山6丁目です。ランク4の地区は、東側エリアに集中していることがわかります。
洗足駅周辺の地震に関する「総合危険度」


洗足駅周辺の地震に関する総合危険度(建物倒壊危険度と火災危険度などを合わせたもの)は、ランク1からランク3までの地区が見られます。
ランク1に該当する地区は、南千束2丁目のみです。
ランク2には、洗足2丁目と原町2丁目、碑文谷1丁目、南1・2丁目、北千束2丁目、南千束1丁目、小山5・7丁目、旗の台1・2丁目が入っています。
洗足駅周辺で最も高リスクとなるランク3には、洗足1丁目と原町1丁目、南3丁目、目黒本町5・6丁目、北千束1・3丁目、荏原5・6・7丁目、小山6丁目、旗の台5・6丁目が該当しています。
洗足駅周辺では、火災リスクがやや高い地区であっても、総合的な地震リスクは中程度の予想です。
洗足駅周辺の災害事例|過去に複数の浸水被害
目黒区・大田区・品川区のホームページでは、過去に区内で発生した浸水被害を掲載しています。目黒区のホームページでは平成16年度から令和5年度までの浸水被害、大田区は昭和60年から令和5年までに発生した被害の大きい浸水実績、品川区は平成元年以降の被害を閲覧できます。
洗足駅周辺では、9度の浸水被害が確認できます。平成25年7月23日の集中豪雨では、6つの地区で被害が出るほどの浸水が発生しています。
また、東京都が提供している「水害リスク情報システム」の浸水実績図でも、都内で発生した浸水被害を確認することができます。この実績図では、洗足駅周辺において平成11年と平成16年に発生した浸水被害が掲載されています。
目黒区の浸水事例(床上浸水)
昭和60年7月14日 | 集中豪雨 | 大田区南千束1・2 |
昭和62年7月25日 | 集中豪雨 | 大田区南千束1 |
平成2年9月13日 | 集中豪雨 | 大田区北千束1 |
平成3年9月19日 | 台風・長雨 | 大田区南千束2 |
平成11年8月29日 | 集中豪雨 | 品川区小山5・6・7 品川区荏原6・7 品川区旗の台2 |
平成16年10月8~9日 | 台風 | 大田区南千束1 |
平成16年10月20日 | 台風23号 | 目黒区目黒本町5・6 目黒区碑文谷1 |
平成22年12月3日 | 大雨 | 品川区小山5・6 |
平成25年7月23日 | 集中豪雨(大雨) | 目黒区目黒本町6 目黒区原町1 目黒区洗足1 目黒区碑文谷1 大田区北千束1 品川区荏原7 |
参考:浸水履歴【平成16年度~令和5年度データ】|目黒区ホームページ、大田区浸水実績図(昭和60年~令和5年)|大田区ホームページ、品川区町丁別浸水実績一覧(大井・荏原(1)地区、荏原(2)・八潮地区)|品川区ホームページ 2025年2月26日閲覧
上の表は、目黒区・大田区・品川区で提供されている浸水実績をもとに、洗足駅周辺における床上浸水の被害をまとめたものです。なお、大田区の浸水実績は床下浸水と床上浸水を場所ごとにまとめて掲載しているため、床下浸水のみの事例も含まれます。
洗足駅周辺では、昭和60年から平成25年までの間に9度の浸水被害に見舞われています。平成11年8月29日や平成25年7月23日の集中豪雨では、6つの地区で浸水が発生するほどの被害となっています。
東京都「水害リスク情報システム」に掲載された浸水実績図

東京都の「水害リスク情報システム」では、1989年(平成元年)7月26日から2019年(令和元年)10月13日までに東京都で発生した浸水被害を地図上で確認することができます。
浸水実績図では、洗足駅周辺で2度の被害が掲載されています。
1度目は1999年(平成11年)8月29日の集中豪雨による被害です。洗足駅周辺だけでも、荏原6・7丁目と小山5・6・7丁目、旗の台2・5丁目、原町1丁目などの広範囲で浸水が発生しています。
2度目は、2004年(平成16年)10月9日の台風22号による被害です。南千束1丁目などの家屋が浸水被害に遭っています。
洗足駅周辺の水害対策
近年、気候変動による集中豪雨が増加傾向にあり、各地で浸水被害が頻発しています。洗足駅周辺でも、過去の浸水実績から集中豪雨による被害の多さがうかがえます。
こうした状況を受け、目黒区は平成22年5月に「目黒区総合治水対策基本計画」を改訂し、さらなる治水対策に取り組んでいます。具体的には雨水流出抑制対策として、道路や公園、学校の校庭といった公共施設に雨水浸透ますや貯留施設の設置。さらに、公共施設に雨水を地中へ浸透させる透水性舗装を施し、河川の氾濫などによる被害の軽減を図っています。
品川区でも平成25年3月に「品川区総合治水対策推進計画」を改訂し、治水対策を推進中です。目黒区と同様に雨水流出抑制施設の設置推進に加え、東京都が進めている下水道整備の一部を区が受託して取り組んでいます。
大田区では、区内27カ所の土のうステーション設置や災害情報の提供といった対策を積極的に進めています。
参考:総合治水対策の取組み|目黒区ホームページ、風水害が起きる前に備えましょう!!|大田区ホームページ、品川区における総合治水対策の取組状況|品川区ホームページ