東京都内を流れる一級河川、神田川。
井の頭恩賜公園に源流があって、杉並区、新宿区、文京区、千代田区などを通って隅田川へと注ぐ、東京を代表する都市河川の一つです。
フォークグループ「かぐや姫」の代表曲・「神田川」でも知られ(若い世代にはあまり馴染みがないかもしれませんが…)、多くの人が一度は名前を聞いたことのある川ではないでしょうか。
神田川は、江戸時代から開発が行われ、流域に多数の魅力ある場所を持つ一方で、近代の都市化の影響を受け、たびたび氾濫を繰り返してきた歴史も持っています。
過去には台風や集中豪雨による大規模な浸水被害も発生しており、現在も大規模な河川整備が進められています。
この記事では、神田川の特徴や過去の水害、ハザードマップによる浸水想定、そして具体的な防災対策までをわかりやすく解説します。
神田川流域で、不動産を所有している方、入居を検討している方や入居者募集をされている方、そしてすでに神田川流域に住んでいる方や通勤・通学で利用している方にも役立つ情報です。
ぜひ参考にしてくださいね。
神田川の基本情報と特徴
神田川はどこを流れている?

今回、神田川についてあらためて調べてみて意外に感じたことは、神田川の源流は三鷹市の井の頭恩賜公園内にある「井の頭池」であること。
スワンボートや噴水で親しまれ、都内有数の憩いのスポットとして知られる井の頭池が、まさか神田川のルーツだなんて!
これまで以上にロマンを感じながら見られそうです。

井の頭池を水源とする神田川は、久我山駅、高井戸駅、高田馬場駅、飯田橋駅、御茶ノ水駅、秋葉原駅付近など、東京の住宅地や繁華街のそばを流れながら東へ進み、最終的には両国橋付近で隅田川に合流します。
流域は三鷹市をはじめ、杉並区、中野区、新宿区、豊島区、文京区、千代田区、台東区、中央区と広範囲にわたり、東京の暮らしや都市機能と深く関わっている河川です。
上流は、寛永6年(1629年)頃に上水道として開削され、かつては文京区関口大滝橋より上流を神田上水、JR飯田橋駅付近までを江戸川、さらに下流を神田川と呼んでいました。(地下鉄の「江戸川橋駅」が、現在の江戸川付近ではなく神田川付近にあるのは、この頃の名称が由来です。)
流路延長は24.6 km、流域面積105.0 km2と、東京都内における中小河川としては最大規模。また、全区間にわたり開渠(かいきょ)※ であることも都心を流れている川としてはとても珍しいポイントです。また、神田川の支川には、善福寺川、妙正寺川、江古田川、派川には日本橋川、亀島川があります。
※開渠(かいきょ)=フタや地下構造物で覆われず、空に開かれた状態で流れている川や水路。対義語は暗渠(あんきょ)
神田川流域の土地利用の変遷
神田川流域の下流部は、昭和初期にすでに市街地が形成されており、中・上流部においても流域のほぼ中央を通る JR 中央線などの鉄道や道路を中心として、東京の中でも比較的早い時期から市街化が進んできました。
昭和20~30年代に中・上流部の開発が進むのに合わせて流域内の市街化は急激に拡大し、現在ではほぼ全域(平成15年時点で97%)が市街化され、流域内の自然地(田畑・森林・空地・公園・水面など)の比率は流域全体の1割以下となっています。
流域の中・下流部は、東京及び日本の経済・産業・情報の中心であり、高度な土地利用が行われ、縦横に通じる地下鉄道や地下街なども広範囲に多く存在しています。

神田川流域の魅力
神田川は流域が広範囲に渡るため、全ての魅力は書ききれませんが、なんと言っても神田駅付近で行われる、日本三大祭りと言われる「神田祭」が有名ではないでしょうか。
2年に一度開催される神田祭では、通常は陸上でのお神輿がメインとなりますが、2015年には、神輿を船に乗せて川や海を渡る「船渡御(ふなとぎょ)」という形式が12年ぶりに復活しました。
隅田川から神田川へかけて船渡御が行われた模様は圧巻なので、ぜひ神田祭の公式YouTubeチャンネルの貴重な映像を見てみてくださいね。


また、万世橋付近には、甲武鉄道(後のJR中央線)万世橋駅跡を利用した「マーチエキュート神田万世橋」が誕生しました。
つい先日行ってきましたが、川沿いのレンガ造りの建物にお洒落な飲食店などが入っており、とても居心地が良かったです。


あいみょん「今夜このまま」MVでもこの景色が映っていました!
近年は環境改善が進む
1950年代後半から60年代の高度経済成長期には、生活排水の垂れ流しなどで河川の汚濁が進み、生物が住めず”死の川”と呼ばれるほど水質が悪化していました。
その後環境改善の機運が高まり、下水処理施設整備などによって 今では水もきれいになり、アユの遡上やカワセミが見られるほどになったそうです。
余談ですが、その昔転勤族だった私の母は、小学生位の頃一時期高田馬場に住んでいたそうで、近くにあった神田川は本当に汚く匂いがきつかったことを覚えていると話していました。今では考えられないことですね。
数十年で魅力溢れる川へと生まれ変わった神田川。たくさんの人の想いと努力を感じます。
過去にはたびたび水害も発生
そんな魅力いっぱいの神田川ですが、過去にはたびたび水害も発生しています。過去最も被害が大きかったのは1958年9月に発生した狩野川台風。
その後も夏を中心に台風や集中豪雨などに伴う洪水が発生し、床下・床上浸水の被害が出ています。
| 年月日 | 洪水要因 | 浸水面積(ha) | 浸水棟数 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 床下 | 床上 | 合計 | |||
| 1958年(昭和33年)9月 | 狩野川台風 | 1,194.0 | 19,962 | 18,394 | 38,356 |
| 1981年(昭和56年)7月 | 集中豪雨 | 188.7 | 4,073 | 1,624 | 5,697 |
| 1993年(平成5年)8月 | 台風11号 | 117.1 | 3,271 | 1,435 | 4,706 |
| 2005年(平成17年)9月 | 集中豪雨 | 125.9 | 1,265 | 2,236 | 3,591 |
昭和56年7月豪雨:神田川(新宿区)

神田川の水害リスクで押さえておくべきポイント
さて、ここまで神田川がどんな川なのかや歴史について見てきましたが、”水害”という側面では、「都市構造とセットでリスクが生まれている川」という理解をしてもらえたらと思います。
神田川流域全体に共通する以下のポイントを押さえたうえで、次項でハザードマップの詳細を見ていきましょう。
①都市化により、雨水の流出が短時間に集中しやすい
神田川流域は市街化率が全国でトップといわれる97%にも達し、雨が地面に染み込まずそのまま川へ流れ込むという都市部ならではの特徴があります。その結果、短時間で一気に水位が上昇し、いざ避難しようとしても間に合わなくなる危険性があります。
②家屋倒壊の危険性がある場所が点在している
神田川流域には、「家屋倒壊等氾濫区域」に指定されている区域が多数存在します。「家屋倒壊等氾濫区域」には【氾濫流】【河岸侵食】の2種類があります。
「家屋倒壊等氾濫区域(氾濫流)」では木造家屋は倒壊のおそれがありますが、頑強な高層のビルがある場合には倒壊等の恐れは低いため、ただちに立退き避難が必要との判断にはならない場合もあります。

③冠水に弱い「地下空間」が存在する
不特定多数が利用する地下鉄や地下街から個人住宅の地下室や半地下室など、神田川流域には地下空間が多数存在しています。
地上の冠水が浅い場合でも、地下空間の出入口の高さを超えると、一気に地下空間に水が流れ込み短時間で浸水深が上昇するというように、地上の建物が浸水する場合と異なる危険性があります。
浸水時の地下空間の危険性

神田川流域の水害リスクをハザードマップで確認
各市町村の発行するハザードマップもありますが、神田川は対象の市区町村が多いため、本記事では国土交通省のポータルサイト「重ねるハザードマップ」で、浸水リスク・家屋倒壊等氾濫区域・土砂災害リスクについて確認をしていきます。
神田川全体の浸水予想

神田川は流域が広いので、まずは全体感を見てみましょう(今回は、重ねるハザードマップの「洪水浸水想定区域(想定最大規模)」を参照しています)。
川沿いはまんべんなく浸水想定がされており、多くの場所が浸水深0.0―0.5m(大人の膝までつかる程度)を示す「黄色」や浸水深0.5―3.0m(1階天井まで浸水する程度)を示す「薄オレンジ」、ところにより浸水深3.0―5.0m(2階部分まで浸水する程度)を示す「薄い赤」となっています。
3.0m以上の浸水予想エリアが多い荒川や多摩川などと比較すると、神田川の浸水予想は軽度に見えるかもしれません。しかし、支流も含めて川沿いは全て一定の浸水リスクがあります。
3mであっても「1階天井まで浸水する程度」となりますし、上述の通り地下空間においては浸水規模が小さくても被害が出やすいため、油断してはいけません。しっかりと水害リスクを把握し、適切な対策をしておく必要のあるエリアとなります。
神田川全体の家屋倒壊等氾濫区域


さらに注意したいのは、赤で囲われている「家屋倒壊等氾濫区域」です。
「河岸侵食」と「氾濫流」の2種類があります。「家屋倒壊等氾濫区域(河岸侵食)」は、支流の善福寺川・妙正寺川を含めた神田川沿い全域で指定されており「家屋倒壊等氾濫区域(氾濫流)」は点在しています。
筆者は、2024年夏に山形県で大雨による水害により大破してしまった川沿いの家や堤防を見たことがあります。普段は癒しを与えてくれる川ですが、ひとたび大雨が降れば大きな脅威となることを忘れてはいけません。

神田川流域のエリア別水害予想
続いて、浸水予想・家屋倒壊等氾濫区域をもう少し細かく見ていきましょう。
なおこの地図の縮尺では細かな部分が見づらいため、リスクの高いエリアについては地名を挙げています。該当するエリアに関わりを持つ方は、ぜひ自治体のハザードマップや「重ねるハザードマップ」にて詳細をご確認くださいね。
井の頭公園〜高井戸駅付近

家屋倒壊等の危険性があるエリア

特に、下高井戸二丁目で指定されている区域に東京都立中央ろう学校があり、要配慮者が集う場所である点に注意が必要です。
土砂災害の危険性があるエリアも

方南町駅〜中野坂上駅付近

家屋倒壊等の危険性があるエリア

中野坂上駅〜神楽坂駅付近

家屋倒壊等の危険性があるエリア

新宿から東中野近辺付近では新宿区北新宿二丁目、北新宿三丁目、北新宿四丁目、中野区東中野一丁目が 家屋倒壊等氾濫区域(氾濫流)となっています。

下落合駅~高田馬場駅にかけてでは、新宿区下落合二丁目、高田馬場三丁目、下落合一丁目、下落合二丁目、豊島区高田一丁目が家屋倒壊等氾濫区域(氾濫流)。

また、豊島区高田一丁目、文京区後楽二丁目、水道一丁目も家屋倒壊等氾濫区域(氾濫流)となっています。
神楽坂駅〜浅草橋(隅田川合流地点)付近

家屋倒壊等の危険性があるエリア

千代田区飯田橋三丁目、飯田橋四丁目、神田三崎町三丁目、新宿区下宮比町、文京区後楽一丁目に氾濫流によって家屋などが倒壊する危険のあるエリアがあります。
土砂災害の危険性があるエリアも
などには、土砂災害警戒区域に指定されている場所もあります。千代田区以外の4区については、水害ハザードマップと別に土砂災害ハザードマップが開示されているので、詳細はこちらをご確認ください。

個人や企業でできる水害対策
ここまで見てきて、「神田川流域って意外とリスクあるかも」と感じた方も多いかもしれません。
では、こうした水害からの被害を最小限に抑えてハッピーに生きていくには、どんな対策をすればいいのでしょうか?
ここでは
- あらかじめ地域の水害リスクを知る
- いざという時”リアルタイム”で防災情報を掴む
- 適切な避難方法(逃げ方)を知る
- 浸水を防ぐための対策
- 浸水後に備える
の5段階に分けて具体的な対策をいくつか紹介します。一気に全部じゃなくていいのでぜひ取り組んでみてくださいね!
あらかじめ地域の水害リスクを知る
ハザードマップを見る
先ほど各区のハザードマップを基に主な水害リスクを解説しましたが、各自治体のハザードマップはネットでも公開されています。必ず事前に確認しておきましょう。(ハザードマップには地震・津波・水害などいくつか種類がありますが、今回は「水害」をチェックしましょう!)
ハザードマップを見る際には、自分の住む家や職場などが浸水するエリアなのか、該当エリアの場合は何mの浸水予想なのか、また家屋倒壊等氾濫区域に指定されていないかなどを細かく見ていきましょう。
ハザードマップはあくまで「予測」なので、ここにリスクが書かれていないからと言って絶対に安心というわけではありません。とはいえ、まずはどこにどんなリスクがあるのかを「知る」ことはとても大切です。
神田川が流れる自治体のハザードマップ一覧


過去の浸水実績を知る

神田川流域は、過去何度も浸水をした実績があります。どこでどの程度浸水をしたのかといった「過去」について知ることは、今後の水害対策を考える上でもとても大切です。
上の図の左下の凡例にある通り、過去3回の大雨被害による浸水実績が青色で示されています。また、こちらの水害リスク情報システム 浸水実績図では、見たい住所を入力すると2019年10月までの浸水実績を詳細に確認できます。
いざというとき ”リアルタイムで” 防災情報を掴む
防災アプリ
防災アプリを利用すれば、防災に関するあらゆる情報がすぐに確認できるので、スマホにダウンロードしておくのがおすすめです。

Yahoo!防災速報 [App store] [Google play]
特務機関NERV防災 [App store] [Google play]
Yahoo!防災速報では急な雨予報などについても即時通知がきたり、NERV防災は雨雲レーダーが見られたりするなど、日常使いにも便利です。
上記2つのアプリいずれも、設定で「現在地との連動通知」をオンにしておくと、その時いる場所に対して必要な通知が飛んでくるのでおすすめです。(ちなみに私は上記どちらもスマホに入れています!)
洪水キキクル
洪水キキクル:https://www.jma.go.jp/bosai/risk/

すでに雨が降り始めていて、近くの川が溢れたり土砂災害になったりする危険性が”今”どのくらい高まっているのかリアルタイムで知りたい場面では、気象庁が提供するWebサイト「キキクル」がおすすめです。
浸水・洪水・土砂の3種類について確認をすることができます。
国土交通省 | 川の防災情報
川の防災情報:https://www.river.go.jp/kawabou/pc/ov
国土交通省が提供する「川の防災情報」では、全国の河川の水位や降雨の情報など、水災害に関する様々な情報を紹介しています。
河川の様子をリアルタイムで確認できるライブカメラも利用できます。

そのほか、各自治体のウェブサイトや、近年では自治体公式のLINEやXなどのSNSアカウントで情報を発信している場合も多いです。
「情報を制する者は災害を制する」という言葉があるほど、いかに信頼性の高い情報を迅速に取れるようにしておけるかは、いざというときに命を守るためにとても重要です。用途に応じてぜひ使ってみてくださいね。
適切な避難方法(逃げ方)を知る
水害リスクを知ったうえで次に大切なのが、「どう逃げるか」です。
特に神田川のような都市河川では、短時間で状況が変わることもあるため、あらかじめ適切な避難の考え方を整理しておくことが重要です。
”避難”の考え方
神田川のような都市河川は、水位の上昇がとても速いのが特徴です。短時間の豪雨で状況が急激に変わることがあります。そのため、垂直避難を前提に考えておくことが大切です。
垂直避難とは、遠くの避難所へ移動するのではなく、建物の上の階など、高くて安全な場所へ避難する方法です。
また、避難指示が出てから逃げるのではなく、「危なくなる前に早めに動く」という意識を持っておくことが大切です。
避難場所の確認
大地震や火災時の避難場所と、水害の時の避難場所は異なります。水害が発生した時に逃げる場所がどこにあるのかを事前に確認しておきましょう。各自治体が指定している避難所は、以下のリンクから確認ができます。
避難場所の注意点
避難場所に関する要注意ポイントとしては、水害用の避難場所と指定されていても想定以上の雨量の時など、「その場所に浸水リスクがあると、避難場所として開設されない可能性もある」ということです。
「新たな防災気象情報」について(令和8年〜)
令和8年5月29日より、気象の警報などが大きく変わりました。河川氾濫、大雨、土砂災害、高潮に関する情報等は、これまで警戒レベルとの対応が複雑でわかりにくくなっていましたが、今回の改善により、避難情報の5段階の警戒レベルに対応し、避難の判断をしやすくなっています。
例えば、これまでの大雨警報は、「レベル3大雨警報」という名称に変更になり、レベルの数字と一緒に情報が伝えられます。レベル4やレベル3の情報が発表された場合には、キキクルや河川の水位情報等の情報を確認して早めの避難を心がけてください。

これらの避難情報は、市町村から防災無線などを通じて伝えられるほか、テレビ、ラジオ、インターネット、アプリ、行政の公式LINEなど様々な媒体を通じて入手できます。
レベル5では、もう避難することも間に合わないほど危険性が高いため、基本的にはレベル4までに全員が危険な場所から避難することが必要です。高齢者・妊婦・子連れ・障がい者など、避難に時間がかかる人はレベル3のうちに避難しましょう。
不動産を所有・管理する立場の方は、大雨予報が出された時点で、この後の項で解説するような「排水溝が詰まっていないか点検」「土嚢や止水板の準備」や、入居者などとの情報共有をしっかりと行うことも、被害を生まないために重要です。
注意すべき点として、警戒レベルが必ずしも順番に発令されるとは限りません。
状況が急変することもあるため、市町村から避難情報が発令されていない場合でも、気象庁からの情報を参考にして早め早めに対策をとりましょう。
逃げる(避難する)ときの注意点
では実際に避難するとなった場合、どんな点に気をつければよいのでしょうか。
特に都市河川である神田川流域では、短時間で状況が変わることもあるため、行動時の注意点を押さえておくことが大切です。
川や用水路には近づかない
増水している川は、見た目以上に流れが速くなっていることがあります。
また、水位が急上昇することもあるため、「ちょっと様子を見に行く」といった行動は絶対に避けましょう。
特に夜間や大雨時は視界も悪く、足元の状況が分かりにくくなります。安全な場所から離れないことが基本です。
マンホールや側溝に注意する
内水氾濫が発生している場合、マンホールのふたが外れていたり、水圧で浮き上がったりすることがあります。
水が溜まっている道路では、見た目では分からない危険が潜んでいることもあります。
足元が見えない場所にはできるだけ入らないようにしましょう。どうしても歩かなければならない場合は、傘や杖などで足元を確認しながら進むようにしましょう。
長靴よりもスニーカーを推奨
「雨だから長靴」と考えてしまいがちですが、水位が高い場合は、長靴の中に水が入って動きにくくなったり、脱げてしまったりする危険性があります。
そのため、避難時は脱げにくく歩きやすい靴(スニーカーなど)で避難しましょう。
地下空間には近づかない・入らない
地下室や地下街、地下駐車場などは、短時間で水が流れ込む可能性があります。
特に都市部では、内水氾濫によって一気に水が流入することもあるため、地下空間は最もリスクの高い場所の一つです。
避難時はできるだけ地上、そして高い場所へ移動することを意識しましょう。
無理に移動せず「その場で安全確保」も選択肢に入れる
避難というと「とにかく外に出る」と思いがちですが、都市型水害では移動そのものがリスクになることも多いです。
すでに周囲の道路が冠水している場合や、外に出ることで危険が高まる場合は、無理に移動する必要はありません。
建物の上階へ移動する「垂直避難」を選ぶことも重要です。
「どこへ逃げるか」だけでなく、
「今いる場所で安全を確保できるか」という視点も持っておくと、より現実的な判断ができると思います。
浸水を防ぐための対策
ここまでで解説したように、神田川流域では短時間の豪雨によって急激に水が増える可能性があります。そこで大事なのが、そもそも建物の中に水を入れないための対策です。
「いざ浸水してから対応する」のではなく、事前にできることを少しずつ積み重ねておくことがポイントです。
土のうや止水板を準備する
地下室や地下駐車場、半地下の住居やオフィスは、短時間で浸水する可能性があります。
建物の出入口から水が入り込むのを防ぐために、土のうや止水板(防水板)を準備しておきましょう。
特に注意したいのは、「必要になってから準備しようとしても間に合わない」という点です。大雨が予想されると、ホームセンターなどでも品薄になることがあります。
なお、自治体によっては
- 土のうを自由に持ち出せる「土のうステーション」
- 防水板設置の費用補助制度
などが用意されている場合もあります。
「〇〇区 土のうステーション」などで検索してみたり、自治体の担当部署へ問い合わせたりして、利用できる制度を見つけてくださいね。
排水溝やベランダの掃除をする
落ち葉やゴミが詰まっていると、水の流れがせき止められてしまい、本来排水されるはずの雨水が建物側にあふれてしまうことがあります。
建物周囲の側溝、ベランダや屋上の排水口、雨どいなど、排水周りの設備は定期的にチェックして掃除しておきましょう。
排水設備の点検をしておく
建物に備わっている排水設備も重要なポイントです。
例えば、
- 排水ポンプが正常に動くか
- 逆流防止弁が機能しているか
- 地下の排水設備に異常がないか
などを事前に確認しておくことで、浸水リスクを下げられます。
特に企業や店舗の場合は、設備管理の一環として定期点検を行っておくと安心です。
半地下・低地の使い方を見直す
神田川流域のような都市部では、半地下空間が水害リスクの影響を受けやすい場所になります。
そのため、
- 重要な設備や在庫を置かない
- 水に弱いものは上階へ移動する
- 新たに物件を選ぶ際は立地や構造を確認する
といった視点も大切です。
浸水対策というと特別な設備が必要に感じるかもしれませんが、実は「排水口の掃除」や「モノの置き場所の見直し」など、すぐにできる対策も多いんです。
特に都市型水害では、ちょっとした備えの差によって、被害の大きさを左右することもあります。
できることから一つずつでも取り組んでおくと、いざというときの安心感がかなり変わってきますよ。
浸水後に備える
どれだけ対策していても、想定を超える豪雨によって浸水が発生してしまう可能性はゼロではありません。だからこそ大切なのが、「浸水してしまった後」のことまで見据えて準備しておくことです。
被害を最小限に抑え、その後の生活や事業の立て直しをスムーズにするために、事前にできることを整理しておきましょう。
水害時のタイムラインを決めておく
まず重要なのが、「いつ・誰が・何をするか」を事前に決めておくことです。
都市河川では水位上昇が非常に速いため、
「その場の判断」では対応が遅れる場合もあります。
あらかじめ
- 大雨予報が出たら何をするか
- 警戒レベル3で誰が動くか
- レベル4でどこまで対応を完了させるか
といった行動の流れ(タイムライン)を決めておくことで、迷わず行動できるようになります。
建物の管理者であれば、テナントへの連絡手順や設備停止の判断基準も含めて整理しておくことが重要です。
加入している保険の内容を確認する
意外と見落としがちなのが、保険の内容です。
火災保険の中に水害補償が含まれているかどうか、補償範囲や支払い条件などをあらかじめ確認しておきましょう。
水害後の復旧には大きな費用がかかることもあるため、
保険の有無や内容が、その後の再建に大きく影響する場合があります。
必要に応じて、補償内容の見直しも検討してみると良いかもしれません。
備蓄品を準備する
浸水被害が発生すると、停電や断水が起きる可能性があります。そのため、最低でも3日分程度を備蓄しておくと安心です。
例えば
- 飲料水・食料
- 簡易トイレ
- 懐中電灯・ランタン
- モバイルバッテリー
- 衛生用品(ウェットティッシュなど)
などが挙げられます。
特に水害の場合は、トイレが使えなくなるケースもあるため、簡易トイレは優先度が高い備えの一つです。
重要なモノの置き場所を見直す
浸水リスクがある場所に、重要なモノを置いていないかも確認しておきましょう。
例えば
- パソコンや外付けハードディスク
- モバイルバッテリーや非常用電源
- 契約書・保険証券などの重要書類
- 事業に必要なデータや在庫
などです。
これらを床に近い場所や地下に置いている場合は、あらかじめ上の階へ移動させておくだけでも被害を大きく減らすことができますよ。
水害対策は、「どう防ぐか」と合わせて「起きた後にどう動けるか」も同じくらい重要です。
特に都市部では、復旧に時間がかかるケースもあります。
「もし浸水したらどうする?」を一度具体的に考えておくだけでも、いざというときの判断のスピードや安心感が大きく変わってきます。
防災力アップに向けた神田川流域の取り組み
ここまで神田川の水害リスクについて見てきましたが、過去の様々な水害の経験なども踏まえて、国や東京都、各自治体では被害を軽減するための対策も進められています。
こうした取り組みを知っておくことで、「どこまで備えられているのか」「どこに限界があるのか」を理解しやすくなります。
東京都における豪雨対策基本方針の経緯
神田川は、1986年(昭和61年)に全国の総合治水対策が必要な17河川の一つに選定され、重点的に取り組まれてきた河川です。東京都はこれまで治水に積極的に取り組んでおり、2007年(平成19年)8月には時間雨量75mmまでの対応強化を目標とする『東京都豪雨対策基本方針』を策定しました。
また近年の気候変動による気温上昇に伴い、降雨量が1.1倍に増加する可能性を踏まえ、2023年(令和5年)12月には2度目の改定をしました。豪雨対策の5つの施策を強化加速することで、人々の生命及び社会経済の礎となる強靭な都市を築き上げていくため、更なる整備が続けられています。


神田川の整備目標・内容
神田川流域では、年超過確率1/20規模(1時間あたり75mm)の降雨に対応することを目標としています。洪水対策として、主に (1)河道拡幅 (2)河床掘削 (3)調節池の整備を行い、下図に示す各河川の計画流量の確保を目指しています。

河道拡幅・河床掘削
1時間あたり50mm規模の降雨による計画高水流量を安全に流下させるため、未改修区間の河道の拡幅を行っていますが、 合流先である隅田川の流下能力に合わせて暫定的な河床高にしています。将来、隅田川の河床掘削が完了した後に河床掘削を行っていきます。

調節池
神田川流域では、治水安全度を早期に向上させるために、神田川・環状七号線地下調節池、鷺宮調節池や善福寺川調節池等の調節池を整備しています。神田川・環状七号線地下調節池については、東京都建設局公式のYoutube動画で詳細に説明されているので、興味のある方はぜひ見てみてください。

高潮対策
神田川の日本橋分派点より下流、日本橋川全川及び亀島川全川は高潮対策対象区間となっており、防潮堤の整備等を進めています。
高潮による災害発生の防止又は軽減に対しては、昭和34年の伊勢湾台風と同規模の台風が東京湾及び主要河川に対して最大の被害をもたらすコースを進んだときに発生する高潮(A.P.+5.1m)に対して、安全であることを目標としています。
防潮堤の整備
高潮の影響を受ける神田川(隅田川合流点から日本橋川分派点まで)、日本橋川、亀島川において、防潮堤の整備及び計画河床への掘削を行います。

現在の整備状況は、以下の通り公開されています。まだ道半ばではありますが、着実に整備が進められています。

こうした継続的な取り組みによって、流域全体の安全性は少しずつ高められています。
インフラ整備だけではカバーしきれない
ここまで紹介したように、神田川流域では様々なインフラ整備が進められています。
しかし「インフラ整備が進んでいるなら、もう大丈夫」と言えるかというと、実はそう簡単でもありません。
近年増えている想定を超える豪雨に対しては、これらの対策だけで完全に防ぎきることは難しいのが現実です。
大切なのは、「ハード面(インフラ整備)」と「ソフト面(避難・情報・各自の備え)」をセットで考えることです。
「インフラが整備されているなら安心」と思いがちですが、インフラ整備は”被害をゼロにする”ものではなく、”被害をできるだけ減らす”ための対策です。
だからこそ、「整備されているから大丈夫」ではなく、「整備はされていても、自分でも備えておく」という姿勢が大切です。
まとめ
神田川は、私たちの生活にとても身近な川です。
一方で、都市化や気候変動により、特に夏場の季節には水害リスクが高まる川でもあります。
被害を減らすためにできることは、ハザードマップで事前にリスクを把握しておくこと、早めに避難の判断をすること、建物への対策を講じることなどがあります。
まずは「どんなリスクがあるんだろう?」と、地域のハザードマップを一度確認してみることから始めてみてください。そして地域や物件の状況に応じて、必要な対策を進めてみてもらえたら嬉しいです。





