この連載は、実家暮らしをしている新卒2年目の20代女子が、一人暮らしへの憧れから「オトナ女子のよりよい暮らし」を求めて部屋選びをする という、1話5分のあるある満載のwebノベルです。
「そろそろ一人暮らししたいな」と考え始めたあなた…!一人暮らしする前の準備を整えやすくなるかもしれませんよ!
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著:蛙田アメコ / イラスト:八咲ヒサ
「今日もよろしくお願いいたします」
「はい、よろしくお願いいたします」
もう何度か会っているアルアル不動産の田中さん。
私の理想の家探しのパートナーだ。
ちょっとドキドキしながら、私は印刷してきたリストを取り出した。
◆ 私の理想の部屋 【ひとり暮らしに譲れないことリスト】
・ 月7~8万円前後の家賃(管理費、共益費込)
・ 駅から徒歩15分以内
・ 会社からドアtoドアで1時間以内
・ 女性を比較的多く見かける街であること(必ず街を散策すること)
・ 駅前や家との間に、スーパーやドラッグストア・コンビニがある
・ 夜道が暗くない(駅からのルートにお店がある、大通り沿いなど)
・ 洪水・土砂災害・津波のリスクがない場所であること
(ハザードマップをチェック)
・ マンションタイプ(絶対ではない)
・ 2階以上 、できればオートロック&カメラ付きインターホンあり
・ 東向きか南向き(絶対ではない)
・ キッチンは2口コンロ以上、絶対ガス火(都市ガス)
・ コンセントが十分に設置されている
・ 冷蔵庫や電子レンジ・炊飯器などの家電がおけるスペースがある
・ バストイレは別、3点ユニット(トイレも一緒のやつ)はNG
・ 洗濯機は室内必須、置き場所と家事動線の確認
・ 玄関に大きめな物入がある、室内の収納スペースも確認
・ …できたらペット飼育可能
「えっと……実は今まで色々お部屋を見せてもらって、あと自分でも調べて、『私の理想の部屋』っていうリストを作ってみたんです」
「そうなんですか。ちょっと拝見しても……おおお~!」
田中さんは、目を丸くした。
不動産屋さんにこんなリストを見せたら、嫌がられたりするかな……と思っていたけれど、杞憂だったようだ。
「実は、いままでより意識して貯金も始めたんです。駅までバス通勤じゃなくて自転車通勤にしたり……だから、この家賃で、このリストに照らし合わせて大きく違わなかったらすぐに決めたいなって!」
「これ、すごく助かりますよ家村さん!」
田中さんが、すごく褒めてくれる。
「こういう『理想』を持っててくださると、私たちも物件のご紹介がしやすいんです。その……失礼ですけど、『なんとなくイメージと違うんだよなー』みたいのだと、私たちとしても判断しかねるというか……」
「このリスト、変じゃないですかね……?」
「全然変じゃないですよ! 特にこの『コンセントの位置』とかリアルでいいですねぇ」
「会社の先輩に聞いたんですよ~。先輩の家はキッチンにコンセントが1つしかなくて、冷蔵庫と電子レンジを置いたら炊飯器を置くスペースもコンセントもなかったらしくて」
「あら! たこ足配線も、水回りに近い場所だとなんとなく心配ですもんね」
「それで、その先輩はその家に住んでいる間は、ガスコンロで土鍋でごはんを炊いてたそうです」
「あはは! それ逆にすごいですね!? 丁寧な暮らしって感じです」
陽気に笑う田中さん。
つられて、私も笑顔になってしまう。
お部屋探しやひとり暮らしには、ひとつひとつにドラマがある。
これから自分のドラマが始まるんだと思うと、なんだか無性にわくわくした。
「えっと、前提として、そんなに大急ぎで引っ越しとは考えてないです。このリスト、田中さんにお預けするので一緒に探してくれませんか? 私も情報集めて、田中さんにご連絡するようにするので!」
「了解です、がんばりましょうっ!」
田中さんと私は、不動産屋さんとお客さんの関係だ。
けれども、リストを渡してから、なんとなく……『空気』が変わった気がする。
私の本気が、田中さんにも伝わった。
今の私たちは、なんというか、よき「ビジネスパートナー」っていう感じかもしれない。
ちょっと大げさだけど。
引っ越しをしたら、きっと色々なことに1歩を踏み出せる。
夢だった猫ちゃんのいる生活や、彼氏とのお家デート、私の好きなインテリアに、静かな環境、通勤も楽々で、作るのは大好きなお料理、小さい家庭菜園……!
会社の同期とたこ焼きパーティしたり、高校時代の茶道部OGの藤吉先輩 思い浮かべただけで、わくわくする。
はじめての引っ越し、はじめてのひとり暮らし。
私の小さくて大きな、はじめの1歩。
たくさん悩んで、立ち止まって、私はちょっとだけ賢くなった。
それは、不動産の知識とか、ひとり暮らしのイメージだけじゃなくて――自分のことを自分で決める、最初の手がかりを得たっていうか。
いま、すごく、私って「オトナ」をしてる気がする!
「じゃあ、今日の内見に行きましょうか!」
「はい、行きましょうっ!」
――私のわくわくする家探しは、まだ始まったばかりだ。
*** ご挨拶 ***
こんにちは。
いつもウェブマガジン「カーサミア」をご覧いただきありがとうございます。
カーサミア編集長の吉村です。
『実家女子、かしこく家を出る。』
いかがでしたでしょうか。今回は、「一人暮らしをはじめる」=「単なる家探し」ではないことをお伝えしたいと思い、WEB小説にしてお届けしました。
2020年、新型コロナウイルスという日本や世界に激震が走る、未曽有の惨事が起こりました。今もまだ終息の目途は立っておらず、心配事ばかりの日々が続いています。
この新型コロナウイルスの影響で、日常生活や社会活動が制限され、今までとは違う日常が始まりました。そして企業の倒産や物価の高騰など、経済的な影響も大きくなるため、その影響を自分が受ける可能性出てきます。
そんな時だから、一人暮らしをはじめることを「家を借りる・家探し」という構成にせず、「かしこく家を出る」という一人暮らしをはじめる前に必要な【自分自身との向き合い】をテーマにしました。
今回お伝えしたかったのは、この2点です。
◆住む家で生活が変わるので、条件を整理して優先順位をはっきりさせる事が重要だということ(決して雰囲気では決めないこと)
> 私の選んだ家、大丈夫? 物件おすすめ度採点を試してみる
◆家賃が占めるウェイトは大きいので、事前に生活費内訳(マネープラン)や将来のライフプランを想定しておく必要があるということ
> その前に生活費の内訳目安を計算しておく
これは、すでに一人暮らしを始めている女性にも言えることです。
特に2つ目の部分、今まで「何となく」で成り行き管理をしていた家計にも改めて目を向けてほしいですし、マネープランやライフプランも一度想定してみてください。
もしかしたら、今の家ではダメかもしれません。そんな時は早めに変化していけば軌道修正可能です。
先日リリースした『腐女子、家を買う。』に続き、今回も蛙田アメコ先生に素敵なWEB小説に書き上げていただき、さらに八咲ヒサ先生にイラストをプラスしていただきました。
前回の「独立した一人暮らし女性が、自分の城を持つために家を買う決断をする」という大きなステップとは違い、多くの一人暮らし女性が当事者の身近なテーマです。
将来やお金に対する不安は、誰かが解決してくれるものでもありませんし、簡単で楽な解決方法もありません。地道に向き合い、解決していくのが自分を守ることに繋がります。
私たち「カーサミア」は、一人暮らし女性が今も将来も明るく笑顔で暮らせるように、今後も小さな「気づき」から「行動」や「学び」に発展させるお手伝いをしていきたいと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!