非常用持ち出し袋(防災リュック)にいろいろなものを入れていると、実際に背負ったときに重すぎたり…。では、最低限入れておくものはなんでしょう?
こんにちは、カーサミアライターのえなです。防災士という防災系の資格保有者である私が、防災に関するQ&Aに回答していきます!
今回は「最低限用意するべき非常用持ち出し袋の中身」に関してです。
災害時に備えて、非常持ち出し袋をしっかり準備しているという方もいらっしゃるでしょう。しかし走って逃げると考えると、重たくて持てないなんてことはありませんか? それでは自分の命が危険にさらされる可能性があります。
いざというときに素早く・負担なく逃げられるよう、今回は非常用持ち出し袋の中身を見直してみてほしいです。
質問:最低限用意するべき、非常用持ち出し袋(防災リュック)の中身は?
防災リュックを用意しましたが、水や食糧など結構重く、いざ災害の際に運べるかどうか心配しています。
実は以前に台風がきたとき、非難するかどうかの瀬戸際だったのですが、大雨の中をこの荷物を持って移動することがためらわれ、結局避難しませんでした。
防災リュックの中身を取捨選択する場合の優先順位を教えてください。
わかります…!あれもこれも必要と、ついつい防災リュック(非常持ち出し袋)の中には沢山のものをいれてしまいますよね。
防災士さんに教えてもらって、一緒に見直しましょう!
回答:非常用持ち出し袋の中身の優先順位はこれ!
災害時は、支援物資等が届き始めるのは発災後3〜7日程度と言われています。そのため、多くて1週間程度の備えを行う必要があるでしょう。
しかし、一度に1週間分の荷物を持ち出す出すことは難しいですよね。また、災害時直後の一次避難は緊急性を要する場合もあるため、1日程度の分量のものを用意し、残りの備えは二次避難の際に持ち出すのが最適です。
では、一次避難の際に持ち出す非常持ち出し袋の中身にはどのようなものを優先的に入れたらいいのか、優先度を1〜3に分けて紹介します。
優先度1は「絶対に入れる」
優先度2は「なるべく入れる」
優先度3は「できるだけ入れる」
とお考えください。
優先度3とはいっても必要なものなので、入る限りは入れるようにしてくださいね。
非常用持ち出し袋の中身を、優先度別に紹介
優先度1:生命維持のために必要なもの
災害時に生き延びられるよう、生命維持に関わってくるものは優先順位が最も高いです。そのため、非常持ち出し袋の中には必ず入れてほしいアイテム。
水
まず、生命維持のために必要なものの中でも、いちばん大切なのが「水」です。私達の生命を維持する上で、水は欠かせないものであり、食料がないという最悪の事態に陥ったとしても、水さえあれば数日は生き延びることができますよね。
水を用意する際は、大きい2リットルタイプのペットボトルではなく、飲み切りやすく運びやすい500〜550mlほどの小さいペットボトルで用意しておきましょう。
また、1日に必要な量は3リットルと言われています。しかし、これは「飲料水+調理用」と考えた際の目安のため、非常持ち出し袋の中に用意するのは1日分の飲料水1.5〜2リットルほどで大丈夫です。
備蓄に適した長期保存水といったのものありますが、ローリングストック法(備える→使う→使った分だけ買い足すという備蓄法)を用いて備えている場合は、長期のものではなくても大丈夫です。
ローリングストック法について詳しく知りたい方は「ローリングストック法は一人暮らしにおすすめの防災備蓄」をご覧ください。
食料品
水と合わせて絶対に用意したいのが、食料品です。こちらも、生命を維持する上で欠かせないものです。水と同様に、1日分(3食分)の量を用意しましょう。
加熱料理が必要なく、手を汚さずに手軽に栄養補給できるものが最適です。例えば、アルファ米、カロリーメイトなどの栄養補助食品、ゼリー飲料などが挙げられます。
また、アルファ米を用意する場合は、作る際に水が必要となってくるため飲料水とは別に必要分量の水を別で用意しておくといいかもしれません。
救急セットや常用薬
持病がある方や常用薬があるという方は、必ず自分に必要な薬を用意しましょう。災害時は、必要な薬がすぐに手に入るとは限らないためです。薬が手に入らないことにより生命が脅かされる可能性がある方もいるでしょう。
その他にも、怪我をする可能性を考え、絆創膏・ガーゼ・包帯・消毒薬など応急処置に必要なものや、感染症予防のためのマスクなどを準備してください。
優先度2:避難所で1日生活するために必要なもの
次に優先度が高いのは、避難所で1日生活するために必要なものです。
簡易トイレ
簡易トイレは、最低でも1日3枚程度用意しましょう。
また、1日にトイレに行く回数は、体質などにより異なる場合があります。そのため、自分が1日に必要とするトイレの回数を事前にチャックし、分量は個々で調節してくださいね。
簡易トイレは手作りも可能なため、もし手持ちの簡易トイレがなくなっても大丈夫なように、「防災士が解説。段ボールでつらい避難所生活を改善する方法」で手作り方法も覚えておいてください。
また、女性の場合は簡易トイレと合わせて念の為生理用品の準備も必要ですね。
ポータブル充電器
家族や友人に安否を連絡するためや、災害の情報を入手するためにスマホはかかせません。
災害時は電気が使えない可能性があるため、スマホの充電が切れないようにポータブル充電器を用意しましょう。また、ソーラータイプの充電器を用意しておけば何度も繰り返し使用可能です。
詳細は下記記事をご覧ください。
防寒具
冬に被災した場合、寒い避難所で過ごすことになる可能性があるため、防寒具を用意しておきましょう。ブランケットなど、少しかさばるものを用意する場合は、圧縮袋に入れて準備するのがおすすめです。
また、コンパクトなものを用意したいという場合は、100円ショップでもお手軽に購入できるアルミブランケットがおすすめです。
衛生用品や着替え
衣類・下着といった着替えや、タオル・歯ブラシ・スキンケアセットなどの衛生用品も1日分用意しましょう。
災害時は、お風呂に入れない可能性があるため、体をふけるシートやタオルと水を必要としないドライシャンプーなどを用意しておくといいです。
着替えについて詳細はこちらをご覧ください。
懐中電灯
ライフラインが途絶え電気が利用できない場合、夜に外に出る際など危険です。そのため、懐中電灯・LEDランタンなどの明かりの代わりとなるものを用意しましょう。
電池式の物を用意する場合は、乾電池も忘れず合わせて準備してください。また、懐中電灯の中には、手動式やラジオ付き懐中電灯といった災害時に使うのに優れた商品もあります。
もし懐中電灯などを用意できない場合は、スマホのライトで代用するという手もありますね。
優先度3:自分にとって絶対に必要なもの
身分証明証など自分にとって絶対に必要なものや、今後入手できないと考えられるものは3番目に優先順位が高いと考えます。しかし、人によって大切なものの価値は異なるため、ほかのものが入ってくることもあるでしょう。
身分証明証や現金などの貴重品
身分証明証・通帳・現金などの貴重品は、自分にとって絶対に必要なものですね。また、貴重品は災害でなくしてしまうと、同じものが手元に戻ってこない可能性があるものです。
小銭を現金で用意しておくことで、公衆電話が利用できます。公衆電話の使い方を知りたい方は、「防災士が解説。スマホが使えない災害時に備えた連絡手段とは」をご覧ください。
今後入手できないもの
メガネ、コンタクト、家族の写真など、自分にとって必要であり今後入手できないと考えられるものを準備しましょう。人によって、必要なものは異なってくるため、自分にとって絶対に必要なものはないかを考えてくださいね。
非常持ち出し袋の中身を軽くするためのコツ
非常持ち出し袋を用意したけど、重たくて持っていけないかもという方は、次に紹介する非常持ち出し袋の中身を軽くするコツを試してみてください。
また、いま体力に自信がある人も、軽くするためのコツを知っておくことで、将来けがをしたときや体力が落ちたときにも役立ちます。
事前にシミュレーションし重さをチェックしよう
災害時避難する際に「非常持ち出し袋が重くて持っていけない」という事態にならないよう、事前にシミュレーションを行いましょう。非常持ち出し袋を実際に背負い、避難経路を歩いてみてください。
また、緊急を要する際は、非常持ち出し袋を背負って走らなければいけない場合もあるでしょう。そのため、歩くだけではなく、走った際にも持ち出せるかもチェックしてください。
持ち出せないと感じた際には、中身を減らしたり軽くするための工夫をしましょう。
軽量型の防災リュックを非常持ち出し袋にしよう
非常持ち出し袋として活用するリュックは、軽量でウエストベルト付きの防災リュックを選ぶのがおすすめです。軽量に加えウエストベルト付きであれば、リュックの重さが軽減でき、背負って逃げる際にもリュックがぶらつくことがありません。
また、防水性のものを選択すれば雨の中の避難でも中身が濡れずにすみますね。
私が実際に利用している防災リュックはこちらです。
「女性防災士が非常用持ち出し袋に入れるものとは?リアルな中身を紹介【一覧リスト付き】」の記事では、詳細を紹介しているのでご覧ください。
中身の詰め方しだいで重さの感じ方が変わる
実は、非常持ち出し袋の中身の詰め方しだいで重さの感じ方が変わります。
警察庁が、重いものが軽くなるコツとして「重いものはリュックの上の背中側に入れて、軽いものはリュックの下の外側に入れるといい」と提言しています。
重い物を上に持ってきて、重心を上にすることで軽く感じるようですので、みなさん詰め方も試してみてくださいね。
入りきらないものは「二次避難用の防災袋」に入れよう
非常用持ち出し袋に入りきらないもの・重たくて持ち出せないものは、二次避難用の防災袋に入れましょう。
二次避難とは、「長期避難できる場所へ避難すること」です。大きな災害の場合や、自宅が破損してしまった場合、避難が長期化する可能性があります。そのため、長期的に生活できるよう二次避難用の防災袋も用意しておきましょう。
一次避難用の非常持ち出し袋に入らなかったものは、こちらの二次避難用に入れることで中身を軽くできます。
二次避難用の防災袋の中身は、「防災士おすすめ、女性が非常用持ち出し袋に入れたいグッズ7選」の後半をご覧ください。
非常持ち出し袋の中身を見直すきっかけになったでしょうか?
もし、自分の非常持ち出し袋の中には不必要なものが入っていると感じた方や、重たくて持っていけないと感じた方は、今回紹介した優先度の高いアイテムのみに絞ったり、軽くするためのコツを試したりしてください。
災害時は、一刻を争う場合があります。非常持ち出し袋が重すぎて逃げ遅れるという最悪の事態を避けるためにも、非常持ち出し袋の中身を見直してくださいね。
「絶対に入れる」
「なるべく入れる」
「できるだけ入れる」
の三段階ですね…!雨の中を避難したり、走って移動したりすることを考えて、実際に背負ってみます…!