東日本大震災を経験した防災士が地震対策を考えた家具の配置を解説します。今回は「避難を邪魔しない、収納家具の配置のコツ」についてです。
こんにちは。カーサミアライターのしのです。東日本大震災で宮城県の自宅アパートで被災しました。その経験を役立てたいと思い防災士資格を取得。経験談と防災士の目線から情報をお伝えします。
地震対策を考えたときの収納家具の配置に不安がある方は最後までご覧いただき、参考にしてくださいね。
収納家具の置き方によっては、避難の邪魔になる!
東日本大震災のとき、私の部屋はハンガーラックが倒れて通路がふさがり、避難する際に手間取ってしまいました。
幸い、ハンガーラックだったから一人でも元の位置に戻すことができましたが、これが大きなタンスだったら一人では元に戻せず、避難できなかったかもしれません。
この経験から、いまでは地震対策を考えた家具配置を心がけています。
ドア付近に大きな収納家具を置かない

出典:東京消防庁 電子学習室 地震に備える〜家具類の転倒・落下・移動防止対策〜
地震がおきたとき、大きな家具(背の高いタンス、食器棚など)は倒れてくる可能性があります。特に壁を背に配置していると前に倒れます。ドア付近や通路など、避難経路に置かないようにしましょう。
特にドア付近は注意が必要です。家具が転倒してドアが開かなくなると、避難経路を完全にふさいでしまいます。
収納家具の向きや位置を少し変えるだけでも、倒れた場合のドアの開き方は変わってきます。スペースが限られている一人暮らしのお部屋でも、倒れた場合を想定して、なるべくドアが開くよう工夫してみてください。
就寝位置に向かって収納家具は置かない

出典:東京消防庁 電子学習室 地震に備える〜家具類の転倒・落下・移動防止策〜
もうひとつ、ベットや布団を敷く位置の向かい側に大きな収納家具を置かないことも重要です。
地震は日中起きるとはかぎりません。就寝中に地震が起きて家具が転倒したら下敷きになってしまいます。
東京消防庁の調査によると、地震でのケガ原因の30%から50%は家具の転倒や落下等によるものです。
こちらについては、次回の記事で詳しくお伝えしますね。
防災士が考える、避難経路に置いていい家具・注意が必要な家具
私が考える、避難経路(ドアの近くや通路など)に置いていい収納家具と、置き場所に注意が必要な収納家具を解説していきます。
置いていい収納家具

背が低くて軽いもの、具体的には倒れても一人で簡単に戻せる程度の高さのものであれば、避難経路に置いても良いと考えます。
- クリアケース
- カラーボックス
- 背の低いスチール棚
- 高さの低いタンス(ローチェスト)
- カウンターワゴン
置いてもよいとはいえ、地震に備えて、ちょっとした工夫は必要です。
例えば「重いものを下の方に収納する」「キャスター付きのものはキャスターが動かないようにロックをかける、ロックがない場合はキャスター置きを使う」などです。
要注意!置いてはいけない収納家具
ドアの近くや通路部分に置いてはいけない収納家具は以下の通りです。
- 高さのあるタンス(ハイチェスト)
- 高さのある食器棚
- 高さのある本棚
- 高さのあるハンガーラック
とはいえ、高さのある収納家具はたくさん収納できますし、部屋の間取りによってはドアの近くや通路部分に置かざるをえないこともありますよね。
そうした場合の対策をお伝えします。
背の高い家具を置く場合の対策

背の高い収納家具を使う場合は、地震の際に倒れてこないよう地震対策が必要です。
どこに置く場合であっても地震対策はしてほしいですが、特にドアの近くや通路などに置く場合は、避難の邪魔をしないために、必ず対策を行ってください。
賃貸ですと穴を開けないストッパーや突っ張り棒が使いやすいでしょう。
固定金具を壁にネジ止めする場合は、大家さんや管理会社に相談して、許可をもらってくださいね。
転倒防止アイテムと併せて、基本的なことではありますが、「重いものを下に置く」ことも大切です。
たとえば私も経験しましたが、ハンガーラックは、重心が高くなって倒れやすい家具の代表格でしょう。コートなど重いものをかけるため、バランスが悪くなりやすく、倒れやすくなります。かけすぎに注意しつつ、下に重いものを収納するなど工夫しましょう。
食器棚は中身の飛び出しにも注意
特に食器棚の場合は、転倒防止だけでなく、開き戸の対策も重要です。
東日本大震災の際、私の家では、背の高い食器棚を使用していました。突っ張り型の耐震対策をしていましたので倒れてはきませんでしたが、中の食器は出てきて落下・破損しました。
避難経路の床に割れた食器が散らばっていると、避難の際にケガをしかねません。
ですから、収納している中身の飛び出し防止も意識する必要があります。
耐震ラッチ(地震の際に自動でロックがかかって扉の開きを防止する機能)がついた食器棚を選ぶ、自分で後付の耐震ラッチをつける、といった方法がありますよ。
こちらについても、別の記事で詳しくお伝えしていきますね。
ここまで、一人暮らしの収納家具の配置についてのポイントを紹介しましたが、注意点があります。
「転倒防止の対策をしているなら避難経路に家具を置いても問題ない」というわけではありません。地震の揺れで家具が少し動いて通路がふさがれてしまう可能性もあります。可能なら置かないほうがベストです。
また言うまでもありませんが、避難経路以外の場所に置いてある収納家具にも、しっかりと転倒防止の対策が必要ですよ。
いざという時に安全のために、できることから地震対策を少しずつ始めていきましょう!
- Q地震対策として、避難を妨げない収納家具の配置は?
- A
避難経路となるドア付近や通路には、大きな収納家具を置くことは避けましょう。地震発生時に家具が倒れて避難の邪魔になる危険があるためです。
部屋の間取り上、通路に家具を置くしかない場合は、低めで軽いものを選び、必ず転倒防止対策を実施してください。また、背の大きな家具を設置する際は、突っ張り棒などで地震対策をすることが重要です。