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ありがとう、管理人のおばちゃん。あの夜の花火、忘れません。【一人暮らしエッセイvol.39】

一人暮らしエッセイ
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ありがとう、管理人のおばちゃん

社会人として一人暮らしを始めて、2年が経ったころのことです。

私は、50代の女性管理人が常駐するマンションの3階に住んでいました。
管理人さんは、おまんじゅうを持ってきてくれたり、部屋に遊びに来てくれたり、一人暮らしの私を何かと気遣ってくれる「おばちゃん」といった存在でした。

マンションの家賃はリーズナブルで、駅から近く、スーパーもあり、新人社会人でずぼらな私には最高の物件でした。

ところが、ある時から会社の経営状況が傾き始め、深夜まで残業が続くようになりました。終電に間に合ったらラッキーなほうで、逃してしまった場合は、同期の家に泊まらせてもらって、何とかしのいでいました。

しかし、無理がたたって体調を崩してしまい、夏の初めごろから、しばらく休みをもらうことになりました。

そのころの私は、誰にも会いたくありませんでした。やせてしまった体を鏡で見ては、落ち込む毎日を過ごしていました。

ある日、管理人さんから、家のインターホンに突然連絡がありました。

「今日の花火大会、誰かと見に行くん?」

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変わらぬ声に思わず泣きそうになったのですが、心を落ち着かせて今の自分の状況を話し、お断りしようとしました。すると、

「このマンションの屋上から、ばっちり見えるんや。私の友達も来るんやけれど、よかったに来ない?」

おばちゃん特有の圧にほだされて、一緒に見に行く約束をしてしまいました。

「あんまり、知らん人には会いたくないんやけどな」

ついつぶやいてしまいましたが、インターホンはもう切れていました。

出かける準備をして、「何か持っていかないと」と、久しぶりに外へ出ました。

スーパーに並ぶ商品はすでに秋の新商品が並んでいて、「意外と長い間、引きこもっていたんだな」と時間の流れの速さに驚きました。
私は、ラムネ味のドリンクと、たこ焼きや焼きイカを、数人分買って、マンションの屋上へと向かいました。

「あー、待っとったんやで!どうぞどうぞ」

管理人さんがドアを開けて、招き入れてくれました。
そこには、50~70代のおばちゃんたち5人が集まり、和気あいあいと花火が打ちあがるのを待っていました。

「こんばんは、若い子が私たちと過ごしてくれるなんてね」
「おばちゃん、お好み焼き持ってきたから、ゆっくりしましょうか」

次々と声をかけてくれて、久々に人の温もりを感じました。

午後8時になり、いよいよ花火大会が始まりました。

「ドォン」「ドォン」という音に合わせて、ビルの合間から見える花火の輝き…

思わず「うわぁ…」と声がもれました。

管理人さんは「な?きれいやろ?」と得意そうでした。

思えば、夏らしいことを何もできなかったので、こうした機会に巡りあえたことが本当にうれしかったです。

次の日の朝、管理人さんが掃き掃除をしていたので、「昨日はありがとうございました」と声を掛けに行くと、「いいんやって!また見ようか」と笑顔を見せてくれました。

ありがとう。管理人さん。

私は、今は別のところに住んでいますが、あの夜の花火の輝きを忘れた日はありません。

(エッセイ投稿者:ミノル/30代・女性)

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