「一人暮らし女性のおうちライフを快適に!」がテーマのライフスタイルマガジン「カーサミア」では、一人暮らしに関するエッセイを公開しています。
おしゃれな物件は、「自分との相性」に気をつけて
人生初めての一人暮らしを始めて約4年ほどが経過した私は、「そろそろ大人っぽい部屋に住みたいなあ」と思い立ち、引っ越してきたのがこの部屋でした。
それまで住んでいた部屋は木造のアパートで、家賃が良心的で悪くはなかったものの、ちょっと古くて手狭な、新卒OLが初任給でも暮らせる家賃の物件でした。
4年間の一人暮らしで少しは一人暮らしスキルがアップし、お給料もアップした私は、少し家賃が高くても、客人を呼べるような「カッコつけた部屋」に住みたいとあこがれを持っていました。
そこで次の住処に選んだのが、コンクリート打ちっぱなしのデザイナーズマンションでした。
四角い部屋の3面は無骨なコンクリートむき出しの壁で、まるでおしゃれなアトリエやカフェのような雰囲気でしたし、残りの一面がすべて大きなガラス窓となっていることで、明るい日差しが降り注ぐところも気に入っていました。
外観もさすがのデザイナーズマンションとあっておしゃれで、これで友達や恋人を呼ぶことができる!と意気込みました。内見でこの物件を見て、即決でした。
早速持ってきた家具に追加して、新しい部屋に合う洗練された本棚やソファを買い、意気揚々と新しい部屋を自分色に変えていきました。
異変に気付いたのは引越して間もなくの、この部屋で初めて過ごす冬が来てからでした。まず、内見の時気に入ったはずの壁一面の大きな窓のそばがとても寒い。おしゃれさ重視だったのかこの窓には雨戸がないので、極寒の外と部屋を隔てるものはガラス窓1枚しかありませんでした。
また別の日、ベッドと壁の間にヘアクリップを落としてしまった私は、細い隙間からそれを拾い上げようと何気なく壁に手を触れた時、ぞっとしました。壁がびっしょりと濡れていたのです。
冬なのでもちろん窓は結露で濡れることはありましたが、しかしどうやら窓だけでなく、ライトグレーのおしゃれなコンクリートの壁が濡れているのです。
私はてっきり、コップの水でも寝ぼけてひっくり返したのだろうか?と訝しく思い、ベッドをちょっとだけずらして隠れていた壁を確認してみました。すると、ベッドが面している壁一面が結露しびっしょりと濡れていただけではなく、その水が滴ってベッドの下の床までが水浸しになっていました。
ベッドもその湿気により、普段見ることのないマットレスの裏や、その下のすのこの裏にびっしりとカビが繁栄していて、ギョッとしました。
急いで雑巾で水分を拭いましたが、数日もすると、またびしょ濡れの繰り返しでした。気付かなかっただけで、冷蔵庫の裏も新しい本棚やソファの裏も、コンクリート壁と家電・家具の面している壁はすべてひっそりと濡れていて、カビが繁殖しているようでした。
すぐにネットで調べると、これはコンクリート打ちっぱなし物件の「あるある」のようでした。今までコンクリート打ちっぱなし物件と無縁だった私は一切知らなかったのですが、コンクリートは壁紙の物件と比べて冬は結露しやすく、よくあるマイナートラブルだったようです。
ネットの口コミでは、「コンクリート打ちっぱなし物件は気密性が高いために夏は暑く冬は寒く、カビが繁殖しやすいので見た目に騙されてはいけない」というような情報がいくつもありました。内見の時の私は、まさに見た目に騙されて深く調べることもせず即決してしまっていました。
物件探しのタイミングでこの事実を知っていたら、ものぐさな私は絶対にこの物件は選ばなかったと思います。こうして私は人を呼ぶどころか、週末は掃除とカビ取りに追われる日々を送ることになりました。この部屋では3回の冬を過ごしましたが、すべて寒さ対策と壁と床の水分の拭き上げとカビ取りと格闘することになったのです。
ネットでコンクリート打ちっぱなし物件について調べた時、世の中には私と同じような部屋でも、上手におしゃれに快適に、何年も暮らしている人々がいることも知りました。
きっと部屋選びは、自分をよく知ったうえで相性というものがあるのだろうな、ちょっと恋愛と似てるな、なんて思いました。
(エッセイ投稿者:莢子/30代・女性/@sayako_mame)
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