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便利さで選んだマンション。夏に判明した「地域本来の顔」に苦しんだ話【一人暮らしエッセイvol.33】

一人暮らしエッセイ
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利便性より大事なことを学びました

社会人になり初めて契約した部屋は、白い壁に黒褐色のフローリングが映える、6畳ほどの1Kでした。

学生時代にはちっとも足りなかった、収納やキッチンの幅もそれなりにあり、入口正面の掃出窓からは大きく空が見えて、高層マンションの眺めの良さを示すようでした。

駅にも職場にも近く、帰り道にそって飲食店街があり、歩けば地元のスーパーやドラッグストア、ケーキ屋さんなどがありました。
コンビニも大手3社が揃い、クリニックもひと通り近所にあって、街の中心部にも電車1本で出られる、本当に利便性の良いところでした。

そのぶん家賃は相場より高かったのですが、オートロックや宅配ボックス、なにより24時間いつでもどんなゴミも(分別にそってさえすれば)捨てられる、という共有設備に惹かれて、ここに入居を決めたのです。

もっとも実際に暮らしてみれば、部屋には柱や梁からくる出っ張りがいくつもあったため、置ける家具には予想以上に限りがありました。
デスクと、ベッドと、小ぶりの本棚をおくと、もうゴミ箱くらいしか置けないのです。

しかも、この地域は特に分別が細かく、キッチン兼用の廊下が狭いため、細かく分かれたゴミ箱は自分の部屋におくしかありません。
……今思えば、有料の指定袋がある可燃ゴミ以外は、小さいレジ袋にでもいれて毎日捨てればよかったのですが。

また、入居してから意外と困ったのが、外の騒音が絶え間ないことでした。

駅に近い関係で道路の往来が激しく、電車や新幹線の走行音も、始発から終電まで聞こえてきます。
窓を閉めれば音量は下がりますし、いずれ耳が慣れるだろうと思っていたのですが、結局最後まで慣れることはありませんでした。

それでも、頑張って部屋に入れた自動洗濯乾燥機の便利さを学んだり。
まな板がまともにおけるキッチンに感動したり。
柱と家具とで生まれた隙間が読書にふけるのにちょうどいいと気づいたり。
ささやかながらも、一人暮らしを堪能していたある日のこと。

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ドン ドドン ドン ドドン

突然、大きな和太鼓の音と、

ピィーヒー ピィーフョロー!

甲高い、複数の笛の音が駆け上がってきたのです。

一体どこから? と急ぎベランダに出ると、向かいの公園で大蛇たちがとぐろを巻いています。
赤に青に金の頭、太い銅でうごめくそれは、どこかの神楽団が演目をやっていたのでした。

街中らしい小さな公園で、よく動けるものだと感心しつつ、その日は部屋に戻ったのです、が……

ある日は縁日。
またある日は盆踊り。
さらにある日は運動会のようなもの。

毎週末、昼から和太鼓の稽古が続くこともあれば、ラジオ体操や神楽の別の演目のこともありました。

当時、季節は夏。
私が入居したのは春先だったので、年中行事らしいこのあれこれを知らなかったのです。

まあ夏休みが終われば落ち着くだろう、とその時は楽観視していました。
しかし、秋になっても似たようなにぎやかさが、不定期に続きます。

どうやら、近所に地域の寺社がいくつかあり、その関係で行事が多いらしいのです。

私が部屋探しをしていた頃は、どこも行事の時期ではなかったのだと、後で気づきました。
さらに単身用マンションで、近所づきあいがないことも重なって、私はこの地域の本来をまったく知らないまま暮らしはじめてしまったのです。

もちろん、地域での行事が盛んなのは悪いことでなく、子供のはしゃぎ声もよく聞こえたため、好きな人なら楽しめたかと思います。

けれども、毎日絶え間ない車や電車の走行音に、不定期な太鼓や笛などが重なると、私は窓を閉めても少し気分が悪くなるようになっていました。
マンションと同程度の高さの建物がなく、全ての音が直に届いてしまうことも、一因になっていたのでしょう。

当時は若かったこともあり、周囲の充実した利便性を手放しづらく、結局4年ほどここで暮らしました。

その後、職場の倒産を機に引っ越し、今は閑静な地域で暮らしています。
あのころ在宅勤務がなくて良かったとしみじみ思います。

環境が自分の体に合うかどうかを軽んじてはいけない、とよくよく学べた部屋でした。

(エッセイ投稿者:らっこ/30代・女性)

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