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外が怖く、家族に縛られていた私。一人暮らしを許され、世界が変わった【一人暮らしエッセイvol.42】

一人暮らしエッセイ
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この街に住んでいるのは、私たち家族だけではなかった

私は東京の下町育ちです。実家に住んでいた頃、休日に家族行事以外で街を歩くことはありませんでした。

一人っ子の私は、家での遊び方しか知らない子供で、友人もほぼおらず、近所の人に会っても目を伏せて、小声で挨拶するような内気な子でした。

漠然と外の世界に出ることが怖く、一人っ子のせいか「みんなの期待を裏切らないように」という謎の責任感があり、家族という社会で生きることに一生懸命だったのかもしれません。

社会人になり、実家から近距離での一人暮らしを許された私は、実家から自転車で10分の距離に引っ越しをしました。

一人暮らしを始めた理由は、2つあります。
ひとつ目は、自分が生きていくうえで必要なお金が最低いくらなのか、を知りたかったからです。
ふたつ目は、祖父母と同居していたこともあり、お風呂もご飯も大黒柱が一番!等、伝統的な家庭のルールに縛られ、窮屈に感じていたからです。

そのため、一人暮らしをして初めて抱いた感情は「自由だ。」でした。

きっと心の奥底では求めていたはずなのに、いざ自由が手に入ると手持ち無沙汰で、何をしていいかわかりませんでした。ためしに休日、近所を散歩してみたところ、すっかりマイブームになりました。

ある日、散歩コースの途中の古民家前で野菜を売っている青年に出会いました。

内気な私にしては珍しく、思い切って「野菜、いつも、ここで売っているんですか?」と、話しかけると、

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「いえ、今日だけです!●●ビルの前で毎週土曜日に野菜を売っているのですが、今日は余ってしまったのでここでも売っているんです!」

と、思った以上の情報量と爽やかな回答が返ってきて、私の心に新しい風が吹き込んだ感覚に陥りました。

よく考えてみると、地元なのに家族や学校以外の近所の人と挨拶以外で話しをしたのは初めてで、私はなんだか嬉しくなり「●●ビルわかります!今度行ってみますね!」といつもより二トーン高い声で返答をしてしまいました。

「お姉さん、近くに住んでいるのですか?」

「はい、最近一人暮らしをはじめて、地元なのですがよく地元のこと知らないな、と思い、散歩をして開拓をしようかと・・。」

「そうなんですね!?僕、この街地元じゃないけど面白いよ!ちょっとまっててください!」

その爽やかな青年は、店の奥にいた、ふくよかな青年を連れてきました。

「こいつは幸雄といって、この辺り詳しいんです。お姉さん時間があれば、こいつが案内しますよ!」

そして私は、いかにも親切そうなふくよかな青年こと、幸雄さんに案内をしてもらうことになりました。
幸雄さんは、この街で有名な喫茶店がある、と一人ではとても入りにくい喫茶店へ連れて行ってくれました。

そこは、地元に住む常連さんがたくさんいて、チェーン店とは異なるアットホームな空気が流れており、私は一瞬でその世界に魅了されてしまいました。

超甘党の私には、マスターの入れるドリップコーヒーは、苦くて、ブラックコーヒーの入ったカップを片手に談笑する常連さん達の会話が、きちんと耳まで入ってこなかったのですが、心だけは甘く温かく、また来よう、という気持ちにさせてくれました。

後日、ドキドキを隠せないまま、一人で喫茶店に行くと、マスターは喫茶店に居たご近所さん達を紹介してくれました。

自由を手に入れると人は欲深くなるものなのか、私は地元に住んでいる人との繋がりを求めて、そこへ通うようになりました。

きっかけは些細なことでも、それが繋がると大きな輪となり、気が付けばSNSで「共通する友人 100人」と表示されるほど、一歩外を歩けばご近所さんに会う、という日常へと変化しました。

私の知らない人がこの街にはたくさん住んでいました。
昔ながらの喫茶店、銭湯・おいしいご飯があるお店・面白くて優しい人たち…
一人暮らしをしなかったら、新たにコミュニティを構築したい、なんて絶対になかったし、出会うこともなかったと思います。

今では近所の人達と旅行に行ったり、具合が悪いときには差し入れをし合う仲になりました。

実家に居た頃、私の世界には家族以外の色が無くて、生きづらい世の中だとさえ感じていたこともありました。

「外の世界は広く、家族じゃなくても家族のように親身になり助けてくれる人達がいる」

何も怖いことはない、ということに、もっと早く気が付いていれば、家から飛び出し外の世界でたくさんの友人達と遊び、幼い頃に大きな声でご近所さんとも挨拶ができたのかもしれません。

ただ、その後悔はなく、今では、喫茶店で飲む苦いコーヒーが私の中で家庭の味のようになっています。

マスターのコーヒーは「人との繋がりを、知ることができてよかったね」と、調子に乗りそうな私を初心に戻らせ、そのありがたさを教えてくれています。

(エッセイ投稿者:なる。/女性・30代)

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