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20代・海外赴任中。平凡な家具付きアパートで輝く、モロッコの絨毯【一人暮らしエッセイvol.101】

一人暮らしエッセイ
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平凡な部屋の中で光る、唯一の私らしさ

私の家の家具のほとんどが、自分で選んだものではありません。
ソファも、テーブルも、ベッドも、冷蔵庫も、何なら食器も自分で選んでいません。
理由は単純で、家具付きのアパートを借りているからです。

今、私は仕事の関係で1年だけ海外に住んでいます。短期間の拠点なので、生活に必要な家具・家電がすべて備わっている部屋を借りました。インテリアは最初からそこにあった物ばかりで、自分で選んだわけではないので特に愛着もありません。

ただ、唯一自分で選んだ、こだわりのインテリアがあります。絨毯です。

大きさは3m×2mほど、オレンジの地に赤・青・黄・緑・白・黒・茶の太さの異なる縞模様が並んでいます。全体的にどことなく光沢のある生地で、両端には黒いフリンジが付いています。
珍しい配色と柄が気に入っていますが、それを買った時の思い出もまた、このインテリアを私にとって特別なものにしています。

この絨毯は、友人とモロッコに旅行したときに、偶然入った絨毯屋で見つけました。
その絨毯屋は、観光地の目抜き通りにあるのに、お客さんは一人もおらず、90歳近くに見える、髭の立派なおじいさんが一人で店番をしていました。

友人と私は少しためらいながらも薄暗い店内に入りました。
店は20畳程の広さで、中央に平台があり、壁に沿って棚が並んでいました。平台と棚には、色とりどりの絨毯が隙間なく積まれていました。

商品を見ていると、おじいさんが無言で絨毯を次々と広げて見せてくれました。
私たちは柄の美しさに感動し、気に入るものを見つけようと店中をくまなく見て回りました。その間、おじいさんは、どこからともなくやって来た別のおじいさんとお喋りしていました。
その押しの強くない様子がモロッコでは珍しく、じっくりと自分の気に入るものを探すことができました。

ふと鮮やかなオレンジ色が目に留まり、私は平台の下の方からそれを引っ張り出し、広げてみて、これだと直感しました。友人も「あなたらしい」と言ってくれました。
絨毯は、丸めてもヨガマットぐらいの大きさがあり、持ち帰る大変さを考えて迷いましたが、結局バックパックの頭になんとか括りつけ、家まで持ち帰りました。

帰宅し、この新しいインテリアを部屋のどこに置こうかと考え始めました。

絨毯と言っても、一枚の布のように薄いので、最初はベッドにかけてみました。
しかし、しっくりこず、他にないかと部屋を見渡したところ、ソファが目に留まりました。試しにかけてみたら大きさがピッタリ。それ以来、ソファにかけた絨毯の上が、私の一番のお気に入りの場所です。
そこで本を読み、映画を見て、ラジオを聞き、ボーっとします。ここが、この絨毯の上が、一番自分の世界に浸れる場所だと感じます。

もともと私は、自分の好きなもので部屋を埋め尽くしたいタイプでした。
以前の一人暮らしの部屋は、明るい色の木目の家具で揃え、壁一面にポスターや写真、絵などを飾り、好きな本や漫画を見えるように置いていました。
狭い部屋でも自分の城だと思い、気に入っていました。

当時の自分が今の部屋を見たら、部屋の無機質さに驚くでしょう。
ただ、今の部屋の中でひと際温かさを感じるのが、この絨毯のある場所なのです。その大きさや色の明るさだけでなく、それを見て思い出す記憶が、部屋をぼんやり照らしてくれ、温かくしてくれている気がします。

先日、絨毯の上に座り本を読む自分を写真に撮りました。
好きな音楽を流しながら、部屋着姿で絨毯の上に胡坐をかき、好きな本を読む自分の写真です。誰に見せるわけでもありませんが、たった1年でお別れしなくてはならないこの空間を何かに残しておきたかったのだと思います。
写真で見るとなおさら、何の特徴も無い部屋の中で、その濃いオレンジ色の絨毯がひと際輝いて見えました。

(エッセイ投稿者:サクライ/女性/20代)

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