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一人暮らし歴20年。丁寧な暮らしの楽しさに目覚めました【一人暮らしエッセイvol.25】

一人暮らしエッセイ
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きっかけは手作りの柿酢から。部屋での楽しい過ごし方、見つけました!

一人暮らしを始めてから、20年ほど過ぎました。

洋服や海外旅行が好きで、とにかくお金が必要だった私は、長い間ダブルワーカーをして、忙しい日々でした。
ところが最近になって、「私、料理が好きなのかも?」と気づきました。

キッカケは、海外旅行に行きづらい世の中になってしまってしばらくした頃、何気なく挑戦した柿酢作り。

はじめて作った柿酢の味は、市販の酢よりも酸味がまろやかで、柿でこんなにも上品な味わいの酢が作れるのかと驚きました。

微生物は肉眼で見えなくとも、ブクブクと泡が放出されて発酵が進む様子から、その存在と力強い生命力を感じとることができます。

柿酢作りを通して『発酵』の魅力にトリコになった私は、次に味噌と醤油作りに挑戦しました。

麹の仕込みは、大豆の茹で加減や発酵温度に気をつけなければならず決してラクではありませんでしたが、仕込み終わった後の充実感は何とも言えません。
今は熟成期間中で、試食できる日をひたすら心待ちにしています。

そんなある日のこと。

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今まで何度も歩いている道に、それまで気づかなかった豆腐屋さんを発見しました。
おじいちゃんがやっている、小さな豆腐屋さんです。

ショーケースに並んでいるのは豆腐、がんもどき、油揚げに生揚げ。
さらに、『豆腐屋さんの豆乳』と印字された、カワイイ容器に入った豆乳まであります。

その中でも一際目立っている大きながんもどきに一目惚れし、買わずにはいられないほどでした。

寄せ豆腐とがんもどきを購入し、早速いただきました。
そのお味は…

「おいしい!!スーパーのと全然違う!!」

おじいちゃんの作る豆腐とがんもどきのあまりの美味しさに、ただ余韻に浸るだけではなく、「私も作ってみよう」と創作意欲が湧きました。

大豆と豆腐箱を購入し、初めて作った豆腐の感想は「やっぱりおいしい!!」

おじいちゃんのと同じように豆乳も豆腐も味が濃く、やはりスーパーの商品との差は明らかです。

がんもどきは、おじいちゃんの作るものとはかけ離れていますが、スーパーのよりもふっくらしていて美味しかったです。

それ以来、豆腐もがんもどきも、おじいちゃんの豆腐屋さんで購入するか、自分で作るようになりました。

発酵食品と豆腐作りがきっかけでキッチンに立つ時間がグンと増え、丁寧に料理することの楽しさを覚えた私。

マヨネーズやケチャップも手作り、パンも酵母から起こして作り、この間は小豆で納豆を作ってみました。

すっかり暑くなった最近は、ピクルス作りにハマっています。
酢に野菜を漬けるのではなく、塩水につけて発酵させることで微生物パワーもいただけるし、しょっぱ酸っぱさがとても美味なのです。

どの自家製食品も本当に美味しくて、毎日感動に包まれ、心地よい日々を過ごしています。

料理に手間ひまをかけることで『心』がこもり、『うまみ』が加味されて自分に返ってくるという、幸せな循環の方程式を発見することができました。

そして、丁寧に料理する生活スタイルを続けたいがために、家にいる時間を増やそうと働き方まで変え始めています。

以前は洋服や海外旅行のためのダブルワークで忙しい日々でした。
しかし、今の私は違います。

外の世界ばかりに目を向けて欲を満たしていましたが、半径5メートル以内でも充分に満たされるのだと気付きました。

一人暮らしの舞台であるこの部屋こそ、欲を満たしてくれる半径5メートルの『核』なのです。

今までの20年とは違う一人暮らしの楽しみを見つけられたのは、発酵食品と豆腐屋のおじいちゃんのおかげです。

三大欲求でもある『食欲』を自らの手づくり料理で満たす楽しさを見つけ、働き方まで変え始めた私は、今までの人生の中で最も本能に従って生きているのかもしれません。

(エッセイ投稿者:あんず/40代・女性)

エッセイ募集企画は終了しました。次回の開催をお楽しみに!

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