東京都調布市にある「調布」駅。23区外とはいえ、新宿・渋谷まで30分以内でアクセスできる利便性の高さから、都心で働く人々にも人気の高い街です。
そんな調布駅周辺の地盤や防災情報について、解説します。
カーサミアでは、首都圏で30年近く不動産開発を行なってきた「土地のプロ」として、街の住みやすさ、地盤や防災情報などを発信しています。
街で見かける「普通の不動産屋さん」と違って、賃貸物件や中古マンションの紹介をしていないので、不動産屋さんが書きづらいことも記事にできる立場です。
一人暮らしのあなたのお部屋探しに、ぜひ役立ててくださいね。
調布駅周辺の防災情報
調布市にある調布駅は、野川と多摩川に挟まれた場所に位置します。2つの河川は調布駅から1km以上離れていますが、調布駅周辺のエリア内にも氾濫による浸水リスクが想定されています。特に、多摩川は規模が大きな河川で流量が多いため、氾濫の影響を受ける地域は広範囲に及んでいます。想定されている浸水深も程度が大きく、調布駅南側の一部エリアでは最大10mの深さまで浸水する可能性があります。
調布駅周辺における内水氾濫は、ほぼすべての地区で0.1〜0.5m未満の浸水が想定されています。調布駅周辺の中で最も洪水・内水氾濫の浸水想定が少ないのは、調布駅のすぐ南に位置する布田3 ・4丁目付近でした。
調布駅の周辺エリアは、比較的しっかりした地盤が広がっています。野川周辺では軟弱な地盤が見られるものの、地震発生時の揺れやすさに大きな影響は見られません。震度6強の揺れに見舞われる確率は、東京近郊の中では低めの予想となっています。
地震発生時の二次災害リスクでも、とりわけ高リスクな地区は見られませんでした。調布駅に近いエリアの方が、比較的安全性が高い予測です。
調布駅周辺でお部屋探しをする際は、ぜひ本記事の防災情報も参考にしてみてくださいね。
調布駅周辺の洪水リスク|南側エリアは多摩川の影響で浸水リスク大
調布駅周辺は近くに2つの川が流れているため、河川の氾濫による洪水リスクが高いエリアです。北側エリアでは野川の影響によって最大3.0m、南側エリアでは多摩川の影響によって最大10.0m程度の浸水が想定されています。
多摩川は比較的、急勾配になっている河川なので流路の変化が大きくなり、大規模な水害を起こしやすくなります。多摩川の氾濫による深い浸水は、広範囲で発生する可能性が高いため、悪天候時には早めの避難行動が必須です。
0.5m未満の内水氾濫に関しては、全体的に想定箇所が広がっています。調布駅周辺の中では、調布駅近くの南東側エリアが浸水想定の少ない地域です。
なお、調布駅周辺では土砂災害や津波、高潮、液状化に関する警戒区域はありませんでした。
調布駅周辺の洪水・内水氾濫ハザードマップ
調布駅周辺の浸水リスクは、調布市が提供しているハザードマップで確認できます。調布市の水害に関するハザードマップは、河川の洪水による浸水想定と内水氾濫による浸水想定で地図が分かれています。
また、ハザードマップポータルサイトの「重ねるハザードマップ」では、調布市が提供する洪水ハザードマップと多少異なった想定が見られます。
本記事では、調布市の洪水ハザードマップ・重ねるハザードマップの洪水浸水想定区域の地図・調布市の内水ハザードマップ、この3つを使って調布駅周辺の水害リスクを確認していきます。
調布市の洪水ハザードマップ
調布市の洪水ハザードマップでは、調布駅の北側が「野川・仙川・入間川浸水予想区域図」、南側が「多摩川浸水想定区域図」と区別されています。
調布駅北側のエリアでは、野川の氾濫による浸水の可能性があります。調布駅から約1km圏で影響を受ける地区は、調布ケ丘3丁目と佐須町3丁目、八雲台1丁目です。最も深いところでは約3.0mまでの浸水が想定されており、一般住宅の2階床下に匹敵する高さとなっています。
南側エリアは、多摩川の氾濫による浸水リスクが大きく見られます。最大10.0m程度の浸水想定で、建物の2階以上も水没してしまう深さです。調布駅周辺で多摩川の影響を受ける地区は、布田5・6丁目と小島町3丁目、染地1丁目、国領町6丁目、多摩川5 ・6丁目、下石原3丁目となっています。下石原2丁目や小島町2丁目では、0.5m未満の浅い浸水が想定されています。
調布駅周辺の「重ねるハザードマップ」
「重ねるハザードマップ」の洪水浸水想定区域では、調布市の洪水ハザードマップより多くの地区に浸水が想定されています。
野川の氾濫による浸水想定が、調布駅の北側エリアで広範囲に見られます。南は国領町1丁目付近まで、西は富士見町2丁目付近まで広がっています。
多摩川の影響を受ける南側エリアは、調布市の洪水ハザードマップと大きな差は見られませんでした。
調布市の内水ハザードマップ
調布駅周辺の内水氾濫は、0.1〜0.5m未満の浸水が大半の地区で想定されています。
調布駅すぐ近くの南東エリアのみ、浸水の想定された場所が少ないことがわかります。内水氾濫においては、布田3・4・5・6丁目や国領町5・6丁目付近が最も浸水リスクの低い地区です。
調布駅周辺の避難所情報
調布駅から1km圏内には、5つの避難所があります。
北側のエリアでは小島町1丁目にある「第一小学校」と八雲台1丁目にある「八雲台小学校」、南側エリアでは小島町2丁目にある「グリーンホール」「文化会館たづくり」と小島町3丁目にある「富士見台小学校」が、避難所に指定されています。
調布駅周辺の地盤|東京近郊の中では比較的地震で揺れにくい地域
ここからは、国立研究開発法人の防災科学技術研究所が提供している「地震ハザードステーション」の地図を使って、調布駅周辺の地盤を見ていきます。
調布駅周辺は比較的しっかりした地盤が広がっており、野川周辺のみ軟弱な地盤でできています。地震発生時の揺れやすさや震度6強の揺れに見舞われる確率は、東西で多少の差が見られますが、河川の影響は少ないようです。東京近郊の中では、強い揺れの発生確率がやや低めとなっています。
調布駅周辺の地形区分
上のマップは、調布駅周辺における地盤の種類を表しています。
調布駅周辺は、比較的しっかりした地盤である「火山灰台地」が広く見られます。火山灰台地は火山灰が積もってできた台地で、関東の中では丈夫な地盤のひとつです。
野川周辺の地盤は「谷底低地」となっています。谷底低地は、粘土状の土や枯れた植物などが堆積している場所で、軟弱な地盤とされています。
また、多摩川の近くは「扇状地」でできています。通常、扇状地は山から平地になる場所で、川の流れが弱まることによって土砂が扇状に堆積し、形成されます。多摩川は、首都圏を流れる川の中では急勾配で流路の変化が激しいため、広範囲で扇状地を形成したと考えられています。
扇状地の地盤自体は、比較的強固で水はけが良いとされています。ただ、扇状地の近くには扇状地を形成した急流が存在することになるので、必然的に水害が発生しやすい場所となります。調布駅周辺で見ても、調布市洪水ハザードマップや重ねるハザードマップで深い浸水が想定されていたエリアと、扇状地で形成された場所は一致しています。
調布駅周辺の「揺れやすさ」目安
表層地盤増幅率を表した地図を使って、調布駅周辺における地震発生時の揺れやすさを確認していきます。表層地盤増幅率は数値が大きくなるほど、地震の揺れが大きい場所と捉えることができます。
調布駅周辺では、増幅率1.0〜1.2と増幅率1.2〜1.4の地域があります。西側エリアは緑色で示された増幅率1.0〜1.2が多いので、東側よりも地震の揺れが小さいと予想されます。
調布駅周辺で地震に見舞われる確率
上のマップは、調布駅周辺における震度6強以上の揺れに見舞われる確率を色分けしたものです。3〜6%の確率となっている場所が広いですが、東側は6〜26%のエリアが見られます。表層地盤増幅率のマップで東側が揺れやすいと出ていたことが、震度6強以上の揺れに見舞われる確率にも影響していると予想されます。
震度6強以上の揺れに見舞われる確率を東京近郊まで広げて見ると、6〜26%の確率となっている場所が多いことがわかります。調布駅周辺は、東京近郊の中では比較的大きな揺れが発生しにくい地域と見られます。
震度5弱 | 99.5% |
震度5強 | 83.1% |
震度6弱 | 34.1% |
震度6強 | 5.0% |
上記は、調布駅周辺において今後30年間に起こる地震の確率を、震度ごとに示した表です。
震度5弱は100%近い確率で発生すると予想されています。震度6弱になると確率は大きく下がりますが、30%超は決して低いとは言い難い数値です。気を緩めず、大きな地震への対策をしておきましょう。
調布駅周辺の地震リスク|全体的に二次災害リスクは低めの傾向
ここからは、東京都が提供する「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」を使って、調布駅周辺における地震発生時の二次災害リスクを見ていきます。この地図では、地区ごとに5段階のランク付けがされています。ランク1が最も危険性の低い地域で、数字が上がるほどリスクが高くなります。
調布駅周辺の火災危険度はランク3に該当する地区がありますが、建物倒壊危険度はランク1とランク2のみとなっています。総合的な二次災害リスクを見ても、ランク3に入っているのは2地区のみで、大半がランク1とランク2のエリアです。調布駅の周辺エリアでは、全体的に二次災害に対して低リスクの傾向が見られました。
調布駅周辺の「建物倒壊危険度」
調布駅周辺における建物倒壊危険度は、ランク1とランク2の地区が混在しています。
最も安全なランク1にあたるのは、調布ケ丘1・3丁目と布田3・4・6丁目、富士見町1・2・3丁目、小島町1・2丁目、下石原1・3丁目、多摩川5・6丁目、染地1丁目、国領町6丁目です。
ランク2は、調布ケ丘2・4丁目と佐須町3丁目、八雲台1丁目、布田1・2・5丁目、国領町1 ・5丁目、小島町3丁目、下石原2丁目が該当します。
調布市周辺は、地震発生時における建物の倒壊リスクは比較的低く予想されています。
調布駅周辺の「火災危険度」
調布駅周辺の火災危険度は、ランク1からランク3までの地区があります。ランク1は調布駅すぐ近くの地区で見られ、全体的にはランク2の地区が多くなっています。
最も低リスクのランク1に該当する場所は、布田1・3・4丁目と調布ケ丘1丁目、小島町1丁目、富士見町1丁目です。
ランク2にあたる地区は、布田2・6丁目と調布ケ丘3丁目、国領町1・6丁目、多摩川5・6丁目、小島町2・3丁目、富士見町2・3丁目、下石原1・2・3丁目、染地1丁目となっています。
調布駅周辺の中で最もリスクの高いランク3には、調布ケ丘2・4丁目と八雲台1丁目、佐須町3丁目、国領町5丁目、布田5丁目が該当します。
調布駅周辺の地震に関する「総合危険度」
火災危険度と同様に、総合危険度でもランク2に入る地区が多く見られます。
ランク1に該当する地区は、布田1・4丁目と調布ケ丘1丁目、小島町1・2丁目、下石原1丁目、多摩川5丁目、染地1丁目です。
ランク2には、布田2・3・6丁目と調布ケ丘2・3・4丁目、富士見町1・2・3丁目、下石原2・3丁目、小島町3丁目、多摩川6丁目、国領町1 ・6丁目、八雲台1丁目、佐須町3丁目が該当します。
この一帯で最も高リスクなランク3の地区は、布田5丁目と国領町5丁目です。
火災危険度や総合危険度を見ると、調布駅に近い地区の方が低リスクの傾向が見られました。
調布駅周辺の災害事例|過去に6度の床上浸水が発生
調布市のホームページでは、1972年(昭和47年)から2024年(令和6年)現在までに発生した浸水被害の一覧表を掲載しています。
調布駅周辺では、6度の床上浸水被害が確認できました。台風による被害と大雨(集中豪雨)による被害が半数で、集中豪雨による床上浸水の方が複数の地域で被害に遭っています。
調布市の浸水事例(床上浸水)
1974年9月1日 | 台風16号 | 多摩川6 |
2005年9月4日 | 集中豪雨 | 国領町1 富士見町3 |
2011年8月26日 | 大雨(集中豪雨) | 布田5 国領町1 調布ケ丘2 |
2018年8月13日 | 大雨 | 調布ケ丘2 |
2019年10月12日 | 台風19号 | 小島町2 |
2024年8月31日 | 台風10号 | 国領町6 |
上の表は、調布駅周辺の地域で起きた床上浸水の被害をまとめたものです。
1番古い浸水履歴は、1974年の台風による被害となっています。この台風16号は多摩川における戦後最大規模の洪水被害を引き起こしており、調布駅周辺でも多摩川6丁目で床上浸水が発生しています。
2000年代に入ってからは大雨による浸水が3度続き、複数の地区で被害が発生しています。また、近年は再び台風による床上浸水が並んでいます。
国領町1丁目と調布ケ丘2丁目は2度の床上浸水、その他の地区は1度ずつの被害履歴となっており、水害発生地区に偏りは見られません。調布市の浸水履歴を見る限りでは、調布駅周辺エリアにおいて、とりわけ浸水被害が起きやすい地区はないようです。
多摩川の治水対策
豊かな自然が魅力的で人々から親しまれている多摩川は、古くからたびたび水害を引き起こす「あばれ川」としても有名な河川です。調布市の浸水箇所一覧にもあったように、1974年の台風16号では大規模な洪水が発生し、家屋が流されるなどの甚大な被害をもたらしました。近年でも、2019年の台風19号で多摩川の洪水による大きな被害が発生しています。
この2019年の台風による水害を受けて、関係機関は「多摩川緊急治水対策プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトでは、河川における対策・流域における対策・さらなる減災対策の3つを推進し、国や各自治体などが連携しながら、さらなる多摩川の治水対策に取り組むとしています。調布市を含む多摩川中流部では、2019年度から2023年度までの間に、川の面積を広くして水位を下げるための河道掘削が行われました。
気候変動によって、今後も日本各地で大規模な水害が増えていくと予測されています。洪水が発生しやすい多摩川では、抜本的な減災を目指し、治水計画を見直しながら水害対策が続けられています。
参考:多摩川緊急治水対策プロジェクト|国土交通省関東地方整備局、多摩川緊急治水対策プロジェクトの進捗状況【令和6年9月末時点】|国土交通省関東地方整備局
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