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不動産業者が購入したい中古マンションとは?業界ベテランが本音で対談

街・おうち
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中古マンションの購入を考えたとき、どういう物件がいいのか。
一般的な注意点はネット検索すればたくさん出てきます。

それらの知識はもちろん大事ですが、本記事では長年不動産に関わってきた分譲マンションのプロが、中古マンションについて、本音で対談。

不動産の広告・マーケティングを30年以上担当してきた石鍋紀彦さん。
分譲マンションの開発・販売に40年以上に携わってきた南薗浩一社長。
お二人に、日本のマンションの変遷とともにマンション開発の裏側まで語っていただきました。他ではなかなか読めない内容になったと思います。

業界のベテランが中古マンションを選ぶときに注目するポイントもわかるので、中古マンション購入に興味がある方、購入を検討している方はぜひ読んでみてください。

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お話を聞かせてくれたのは

石鍋紀彦
都市と言葉合同会社 代表社員

不動産広告のマーケティングが専門。
1980年代末から広告会社で、大手不動産デベロッパーの分譲マンション、建売住宅などの不動産分譲商品の広告立案のためのマーケティングリサーチ、戦略立案を担当。
現在は、自身が設立した「都市と言葉合同会社」の代表ととして、マンションを中心とした住宅・不動産のマーケティングリサーチ、ストラテジープランニングを行っている。

南薗 浩一
株式会社トラスト・ファイブ 代表取締役社長

1997年(平成9年)にトラスト・ファイブ設立。首都圏で20年以上マンションの企画・開発・販売に携わってきた。長年のマンション開発で培ってきた経験・知識を公開し、「仲介業者主導の家選び」から「購入者が主役の家選び」への転換を目指し、「カーサミア」を運営

石鍋さん
私は1988年に不動産専門の広告代理店に入社しました。ちょうどバブル景気の絶頂間近でした。

南薗さんはその前から不動産業界でマンションの開発を手がけられていたんですよね。

南薗社長
新卒で入社した会社が、私の入社とほぼ同時に不動産部門を設立。その部署に配属されたのが不動産の仕事をするきっかけでした。

会社としても新設部門、私も新卒入社ですからゼロからすべてを学ぶスタートでした。
1978年入社ですからバブル絶頂になる約10年前です。

石鍋さん
1970年代の後半からマンション開発に携わってこられたんですね。
現在購入対象になる中古マンションもその時代以降のものが中心だと思います。

日本のマンションのおおまかな変遷を教えていただきたいのですが、まず1970年代のマンションの特徴と言えばどんなものでしたか。

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初期のマンションは、埋め込み配管に要注意

南薗社長
今では考えられませんが、70年代はベランダのないマンションが多かったですね。ベランダがあっても奥行が70センチから90センチくらいの非常に狭いもので、洗濯物を干すだけの場所という使い方でした。

70年代の後半には部屋数を求めるニーズが高まってきて、3LDKのマンションが出てきました。
間取りで言うと、真ん中にリビングがあって洋室と和室が振り分けになっているタイプが増えてきたのもこの頃です。

超高級マンションが出てきたのも70年代の後半。
壁を厚くして防音性を高めたり、地下駐車場から外に出ないで専用エレベーターでエントランスに地下から上がれるようなセキュリティ面を意識したりしたマンションでした。

石鍋さん
そこからバブル期に向かっていくにしたがって変化したマンションの傾向はありますか。

南薗社長
80年代に入って変わっていったのは天井の高さです。
それまで2,300mmとか2,350mmだった天井の高さが、2,450mmや2,500mmまで上がっていきました。

天井とともに床も変わりました。

二重床が出てきたのがこの頃。
二重床は床下の空間に余裕があるので、配管がしやすくてパイプの中を通る排水も勾配がつけられるので流れやすくなります。

この頃の物件で注意が必要なのは、配水管を軽量コンクリートに埋め込んでいるケースです。
配水管がコンクリートに埋まっているわけですから、もし水漏れなどがあって修理するときには、コンクリートを削ったり、穴を開けたりする作業が必要になります。比較的削りやすい軽量コンクリートとはいえ、大変です。

当然ながら、中古マンションで買った場合のリフォーム費用も高額になりがちです。
この時代に建てられたマンションを購入するときは要注意です。

排水管のイメージ図

石鍋さん
二重床をうたい文句にしたマンションの広告を作った記憶があります。

そこからバブル期を迎えるわけですが、バブル期は特に首都圏でのマンション供給が減りました。

南薗社長
そうですね。
バブルの時は土地価格が高騰して建築価格も上がったので、マンション購入希望者が買いたくても高すぎて買えない。
そもそも、売らずに土地を持っていればどんどん地価が上がるので地主が土地を売らなかったんです。

売り地がないので、私たち不動産開発会社(デベロッパー)はマンションを作れない。
バブル期は不動産会社にとって良い時代だったと思われるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。作って売るほうも大変でした。

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バブル後、特徴的で魅力的なマンションが増えた

石鍋さん
バブルが弾けた後は、少しずつ良いマンションの供給が増えていきました。
それまでになかったような間取りのマンションが出てきたと記憶しています。
広さ100平方メートルのマンションや、今はおなじみの納戸やサービスルーム、ウォークインクローゼットがあるマンションの始まりもバブル後でした。

南薗社長
特徴を打ち出したマンションが増えましたね。
土地の価格も建築費も下がって、デベロッパーがマンション開発にかけられる費用に余裕が出てきたため、間取りの自由度が増してきました。

ワイドスパンと呼ばれる、バルコニー側の間口が広い間取りのマンションが作られ始めたのもバブル後の90年代でした。

ワイドスパンの間取り例

石鍋さん
土地が安くなったので都心部でもたくさんマンションが建てられるようになりました。

ですが、バブル後は購入者にとっては「来年まで待っていれば、もっと安い物件が出てくる」「もっと安い金利で住宅ローンが組める」状態なので、特徴を出していかないとなかなか買ってもらえない。

デベロッパーが競争してユニークで魅力的な間取りのマンションを作っていましたね。

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「耐震偽装問題」以降、建築確認が厳しくなった

石鍋さん
2005年には「耐震偽装問題」が発覚しました。
鉄筋不足で耐震強度の足りないマンションなど、構造に欠陥のあるものが複数見つかって、大騒ぎになりましたね。

南薗社長
この問題を受けて、2007年6月、建築基準法や建築士法が改正され、建築確認の検査が厳しくなりました。偽装が起きにくいよう、チェック体制も強化されたんです。
ですから2007年6月以降の物件、正確に言えば2007年6月以降に建築確認を受けた物件だと、より安心ですね。

もちろん2007年以前の物件でも、ほとんどのものは偽装されていないでしょうが……

石鍋さん
「竣工日」は不動産広告に記載しますが、「建築確認日」は載せませんから、一般の方には分かりにくいですよね。

南薗社長
不動産会社がちょっと調べればすぐ分かりますから、中古マンションを検討する場合は、営業担当者に訊くのが早いでしょうね。

(編注:竣工日と建築確認日の違いは下記参照)

マンション建設の工程
  • 計画・設計

  • 建築確認

    設計内容が耐震基準等を満たしているか、検査する
    建築確認日が「2007年6月以降」なら、
    厳しくなった検査を通っている

  • 建設工事

    工事期間は、マンションによって異なる(数ヶ月~数年)

  • 竣工(完成)

    「築年数」は、竣工日を基に計算する

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マンション開発のベテランは、「設計図面と修繕計画」「立地」を重視

石鍋さん
南薗さんが中古マンションを購入するとしたら、どのような点を重視しますか?

南薗社長
中古マンションを開発したデベロッパーや建設工事をした施工会社が現存しているかどうか。これは大事ですよね。

中古マンションの場合、特にバブル崩壊後にはデベロッパーや施工会社が倒産してしまいましたので、建築時の会社がなくなっている場合があります。

デベロッパーや施工会社が倒産していると、マンションの設計図面が残っていなかったり、修繕計画が引き継がれていない可能性があるんです。
図面が残っていないと、マンションをリフォームしたり修繕したりするときに困ったことになります。

建築時の会社がなくなっていても、事業を引き継いだほかの会社があれば大丈夫です。
たとえばリーマンショックで倒産した会社は、多くのケースでほかの会社に引き継がれました。
ほかにも、マンションの管理組合などによって維持されるケースもあるでしょう。

石鍋さん
建物の寿命を延ばすためには、適切な修繕が欠かせませんからね。

南薗社長
次に立地ですね。
立地は普遍的な条件。建物はリフォームできても、立地条件は変えられません。

避けたいのは、水害に遭いやすい場所、地盤が弱くて地震の影響を受けやすい場所など、災害に弱い地域。

良いと思うのは、10年後や20年後にも人が住んでいて、栄えている姿がイメージできる街です。

それからリフォーム後の間取りについては、上下階との位置関係に注目します。
自分の部屋だけの問題じゃないですからね。寝室の真上がお風呂、なんて間取りは避けたいものです。

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不動産マーケティングのベテランは、アベノミクス以前の物件を狙う

南薗社長
石鍋さんが中古マンションを買うとしたら、どんなものを買いますか?

石鍋さん
私の場合、中古マンションについては「5年前のものだから良い、20年前のものだから悪い」といった先入観はありませんね。

建ってから年数があまり経っていない築浅物件は、最新の設備を備えている魅力もありますが、2013年ごろに始まったアベノミクス以降、コストカットを意識したマンションが増えてきたと感じます。

一方で、デベロッパーが競い合っていた2000年前後のマンションにはクオリティが高いものがあります。

もちろん物件によってさまざまなので一概には言えませんが、2000年前後に建てられた物件は狙い目だと考えています。
築20年くらいですから価格もこなれていますし。

もちろん南薗さんがおっしゃるような建物の寿命や修繕のこと、立地なども総合的に考慮して、中古マンションを選びたいものです。

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