東京都渋谷区にある「笹塚」駅。京王線停車駅で都心へのアクセスが良く、住む場所によっては、小田急小田原線「代々木上原」駅も利用可能です。
駅直結のショッピングビルや商店街などもあって生活するのに便利な街です。街全体はのどかで落ち着きがあります。
そんな笹塚駅周辺の地盤や防災情報について、解説します。
カーサミアでは、首都圏で30年近く不動産開発を行なってきた「土地のプロ」として、街の住みやすさ、地盤や防災情報などを発信しています。
街で見かける「普通の不動産屋さん」と違って、賃貸物件や中古マンションの紹介をしていないので、不動産屋さんが書きづらいことも記事にできる立場です。
一人暮らしのあなたのお部屋探しに、ぜひ役立ててくださいね。
笹塚駅周辺の防災情報
笹塚駅周辺は、渋谷区と世田谷区、杉並区、中野区の4つの自治体に属するエリアです。
現在、この一帯に河川はありませんが、笹塚駅北側エリアでは過去に神田川の支流が流れていました。暗渠(地下に埋設された河川や水路)に整備され、下水道として転用された今でも、旧神田川支流の周辺は洪水リスクがあります。
また、笹塚駅南側には、かつて飲み水や田畑の灌がいに使われていた水路である「玉川上水」が通っています。現在は地上部が緑道化された区間が多く、一見すると水が流れていることに気づきにくいですが、悪天候時は周辺の水害に注意が必要です。
笹塚駅周辺は全面的にしっかりした地盤でできていますが、地震発生時の揺れやすさは場所によって多少の差があります。震度5の地震が発生する確率はほぼ100%、震度6弱でも60%以上の確率と予想されているエリアなので、震災への対策を万全にしてくださいね。
地震発生時の二次災害リスクは、笹塚駅から少し離れた地区で高めの傾向が見られます。特に、火災の発生には要注意です。
笹塚駅周辺でお部屋探しをする際には、ぜひ下記の詳しい防災情報も参考にして、安心して暮らせる住まい選びをしてみてください。
笹塚駅周辺の洪水リスク|水路周辺は浸水に注意
笹塚駅周辺は、旧神田川支流(現在は「十二社幹線」という下水道)や玉川上水など、古くからある水路が形を変えて多く現存しています。地下へ埋設する整備が行われたことで水害リスクは低くなったものの、局所的な大雨に見舞われると、水路周辺の地上に水が溢れる可能性があります。
笹塚駅の周辺エリアでは、最大3.0mの浸水が想定されています。洪水リスクは広い範囲にわたって予想されており、中でも水路周辺と中野通りの浸水が特に懸念されます。
ちなみに、玉川上水は何度か近隣に「玉川上水新水路」が作られています。笹塚駅北側の「水道道路」にも玉川上水新水路が通っていた時期がありましたが、現在は水路が埋設されていないため、こちらは水道道路の水害リスクはほとんどありません。
なお、笹塚駅周辺では液状化や津波、高潮、土砂災害の警戒区域はありませんでした。
笹塚駅周辺の洪水・内水氾濫ハザードマップ
笹塚駅周辺の浸水リスクは、4つの自治体が提供する洪水ハザードマップで確認することができます。世田谷区と杉並区、中野区の洪水ハザードマップはほとんど変わらない想定となっていますが、渋谷区の洪水ハザードマップは比較的、浸水リスクが高めに想定されているようです。
ここでは、笹塚駅周辺を占める面積の割合が高い渋谷区と世田谷区の洪水ハザードマップを使って、浸水想定箇所を見ていきます。
渋谷区の洪水ハザードマップ
渋谷区の洪水ハザードマップを見ると、笹塚3丁目から幡ヶ谷3丁目の旧神田川支流に沿って、広く浸水が想定されています。また、中野通りにも浸水深0.5〜1.0mの想定エリアが長く伸びています。
笹塚駅周辺の中で最も深い想定浸水である1.0〜3.0mのエリアは、笹塚2丁目の西側と中野通のごく一部に見られます。
世田谷区の洪水・内水氾濫ハザードマップ
世田谷区の洪水・内水氾濫ハザードマップを使って、笹塚駅の南側を中心に浸水リスクを見ていきます。
北沢4・5丁目と中野通り周辺では、最大で2.0mの浸水が予想されています。
玉川上水周辺で浸水想定が少ないところを見ると、旧神田川支流より玉川上水の方が洪水発生のリスクは低いと考えられます。
渋谷区の洪水ハザードマップ同様、笹塚駅周辺で最も深い浸水が予想されているのは、方南1丁目と笹塚2丁目の境目エリアでした。
笹塚駅周辺の避難所情報
笹塚駅周辺は、渋谷区に2カ所の避難所と3カ所の自主避難施設があります。
避難所は2カ所とも笹塚駅の北側にあり、No.25の「笹塚小学校」とNo.26の「笹塚中学校」が災害時に開放されます。
自主避難施設は、笹塚駅北側にあるNo.10の笹塚区民会館、南側はNo.7の地域交流センター笹塚とNo.12の笹塚駅前区民施設です。
笹塚駅周辺の地盤|一帯は比較的しっかりした地盤
ここからは、国立研究開発法人の防災科学技術研究所が提供している「地震ハザードステーション」のデータで、笹塚駅周辺の地盤を見ていきます。
笹塚駅の周辺エリアは、全体的に丈夫な地盤でできています。弱くなりやすいとされる水路周辺でも、地盤の差は見られませんでした。
地震発生時の揺れやすさは、笹塚駅の南西側が周辺地域の中で最も揺れにくい予想となっています。
笹塚駅周辺の地形区分
笹塚駅から徒歩15分圏内の地盤は、すべて「火山灰台地」でできています。火山灰台地は、火山灰が降り積もって固まった台地のことで、比較的しっかりした地盤とされています。
一般的に、河川がある場所は地盤が弱くなりやすい傾向にありますが、神田川支流や玉川上水による地盤への影響は見られません。
笹塚駅の一帯は、関東の中でも地盤が丈夫なエリアのひとつといえるでしょう。
笹塚駅周辺の「揺れやすさ」目安
笹塚駅周辺における地震発生時の揺れやすさを見ていきます。上のマップは表層地盤増幅率を表したもので、数値が高いエリアほど地震の揺れが大きくなりやすいと考えることができます。
笹塚駅周辺は、増幅率1.6〜2.0のエリアが広範囲にわたっています。
笹塚駅周辺エリアで最も揺れにくいとされるのは、黄色で示された増幅率1.2〜1.4の代田橋駅付近です。大原1・2丁目を中心に、南西側は比較的揺れに強い地域となっています。
笹塚駅周辺で地震に見舞われる確率
以下の表は、笹塚駅周辺で今後30年間に起こる地震の確率を、震度ごとに表したものです。
震度5弱 | 100.0% |
震度5強 | 97.4% |
震度6弱 | 64.6% |
震度6強 | 16.7% |
震度5弱は100%、震度5強も100%に近い確率で発生すると予想されています。震度6弱でも今後30年間に起こる可能性は60%以上とされており、大地震が発生する日はいつ来てもおかしくない確率です。
笹塚駅周辺と同じように、東京近郊でも震度6強以上の揺れに見舞われる可能性が、広範囲に予想されています。防災意識をしっかり持って、いざという時に身を守れる準備をしておきたいですね。
笹塚駅周辺の地震リスク|笹塚駅から離れるほど高リスク
地震が発生した際の二次災害につながるリスクは、笹塚駅に近い地区が比較的安全と予想されています。
笹塚駅から離れるほど火災危険度の高いエリアが多くなっており、住宅街が広がっていることが影響していると考えられます。
震災発生時の詳しい各種リスクを、東京都が提供する「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」のマップで確認していきましょう。
笹塚駅周辺の「建物倒壊危険度」
地震発生時における建物の倒壊リスクを確認していきます。笹塚駅の北側は建物倒壊危険度ランク3、南側はランク2が多くなっています。
ランク3の地区は、笹塚3丁目と幡ヶ谷3丁目、方南1丁目、和泉1丁目、南台4丁目、北沢5丁目です。
ランク2には、笹塚1・2丁目と幡ヶ谷1・2丁目、西原2丁目、大原1・2丁目、北沢4丁目が該当します。
最も低リスクであるランク1は、大山町のみとなっています。
笹塚駅周辺は、昔ながらの商店街や下町情緒ある街並みが残る地域なので、建物倒壊リスクは中程度にあるようです。
笹塚駅周辺の「火災危険度」
笹塚駅周辺の火災危険度は、やや高めの傾向にあります。特に、笹塚駅から離れた地区は火災リスクの高さが目立ちます。
一番火災リスクの低いランク1は、幡ヶ谷1丁目と大山町です。
ランク2の地区は、笹塚1・2・3丁目と幡ヶ谷2丁目、大原2丁目、西原2丁目となっています。
ランク3には幡ヶ谷3丁目と南台4丁目が該当します。
笹塚駅周辺で最も地震発生時の火災が心配されるランク4は、方南1丁目と和泉1丁目、大原1丁目、北沢4・5丁目です。
この一帯は住宅が立ち並び、昔ながらの街並みが広がっているため、火災リスクはやや高めに想定されていると考えられます。
笹塚駅周辺の地震に関する「総合危険度」
火災危険度と同様に、総合危険度でも笹塚駅から離れたエリアは高めのランクです。
最もリスクの低いランク1は、火災危険度でもランク1だった幡ヶ谷1丁目と大山町となっています。
ランク2は、笹塚1・2丁目と幡ヶ谷2丁目、大原2丁目、西原2丁目が該当する地区です。
ランク3の地区は、笹塚3丁目と大原1丁目、北沢4丁目です。
笹塚駅周辺で最もリスクが高いランク4には、北沢5丁目と幡ヶ谷3丁目、南台4丁目、方南1丁目、和泉1丁目が該当します。
笹塚駅近郊の店や施設が多いエリアは、地震発生時の二次災害につながるリスクが低い予想となり、住宅街のほうは比較的リスクが高めに想定されています。
笹塚駅周辺の災害事例|過去に集中豪雨による床上浸水被害
渋谷区と世田谷区、中野区のホームページでは、過去の浸水被害を掲載しています。渋谷区は平成12年4月1日から令和6年3月31日まで、世田谷区は平成元年から令和6年まで、中野区は昭和60年7月14日から現在までの浸水履歴を確認できるようになっています。
笹塚駅周辺の床上浸水被害は3度起きており、すべて集中豪雨によるものです。
また、東京都が提供する「水害リスク情報システム」でも過去の浸水実績が掲載されています。笹塚駅周辺は、1件の水害実績が確認できました。
渋谷区・世田谷区・中野区の浸水事例(床上浸水以上)
平成17年9月4日 | 集中豪雨 | 北沢4 |
平成26年6月29日 | 集中豪雨 | 笹塚1・2・3 北沢4・5 南台4 |
平成27年7月24日 | 集中豪雨 | 北沢4 |
上の表は、渋谷区・世田谷区・中野区の床上浸水履歴をまとめたものです。
※杉並区は浸水履歴の一覧を公開していませんでした。
平成17年からの10年間に、3度の床上浸水が起きています。すべて集中豪雨による被害で、北沢4丁目は3度とも床上浸水が起きたエリアです。
平成26年に発生した集中豪雨が、最も多くの地区で被害をもたらしました。北は南台4丁目から南は北沢4・5丁目まで、広範囲で浸水被害が起こっています。
東京都「水害リスク情報システム」に掲載された浸水実績図
浸水実績図では、1989年7月26日から2019年10月13日までの浸水被害を地図上で確認することができます。
笹塚駅周辺では、笹塚1丁目での浸水被害が1件あります。平成元年8月1日の大雨(雷雨)による被害で、床下浸水17棟・床上浸水3棟の浸水実績が出ています。
また少し離れた場所ですが、北側の善福寺川流域でも浸水被害が出ていることがわかります。
笹塚駅周辺の水害対策
近年は集中豪雨による浸水被害が増え、2005年9月の集中豪雨では世田谷区や杉並区などを中心に3,000戸以上が被災するという甚大な水害をもたらしました。
こうした異常気象がもたらす水害に対応するため、世田谷区は2009年10月に「世田谷区豪雨対策基本方針」を、2010年3月には「世田谷区豪雨対策行動計画」を策定しています。具体的な豪雨対策の取り組みを掲げ、東京都と連携・調整を図りながら河川・下水道の整備や流域対策の強化などといった豪雨対策が進められています。
また、中野区では2018年8月に「中野区豪雨対策実施計画」を策定し、区道の雨水桝増設などを行なったり、杉並区では雨水流出抑制対策などに力を入れています。
各自治体や東京都が懸命に水害対策を実施している現在でも、局所的な豪雨の降雨量に完全には対応しきれておらず、浸水被害は続いています。水害から区民の命と財産を守るべく、各自治体の豪雨対策は随時更新しながら実施されています。
参考:世田谷区の豪雨対策|世田谷区ホームページ、中野区豪雨対策実施計画を策定しました|中野区ホームページ、雨水流出抑制対策|杉並区ホームページ