女性が企画!避難所セクハラ対策まで考えた、避難訓練最新アイデア2023・前編
女性9名が主導して、女性目線の大規模な避難訓練を計画している方々にインタビューを行いました。避難所でのセクハラ・性被害対策をはじめ、女性ならではの身近な意見が反映された避難所運営とは、どのようなものなのでしょうか?取材先は福岡県早良区有田。自主防災会「有田防災ナイン」とは、有田公民館を通じて校区内の女性に声をかけて、集まった女性たち9名。全員が女性であることを除いては、子育て真っ最中の世代からずっと上の世代まで幅広く、普段の活動も様々です。避難訓練のねらいは、人がたくさん集まることで、当日参加しない人にも「何か防災のイベントをしている」ということアピールし、地域の防災意識を育てていくこと。次世代や子どもたちに防災意識を持ってもらい、長い目で見て「防災」について啓蒙していければと考えているとのこと。今回の避難訓練が人のつながりも含めた防災意識、言うなれば防災のソフト面も考えるきっかけになればと思っているそうです。女性ばかり9名が集まっていることのメリットは、それまでの男性目線とは違う女性ならではの身近な意見が次々と出てきたこと。まず避難所の備品についても具体的で身近なもの(アルミホイル、紙皿、紙コップ、タオル等)の必要性があがりました。大勢の人が学校の体育館などに避難してきた場合、更衣室がなかったり、施設のトイレが使えなかったりするとプライバシーが守られませんし、性被害にも繋がりかねません。男性にとってはそれほど重大なことでなくても、女性には大問題なことに気づいて対策を取れるのは、やはり女性ではないでしょうか。また会合を重ねていく中で、避難先で女性の性被害があったという情報も共有されました。たとえば2016年4月に発生した熊本地震では、熊本県内の指定避難所で10台の少女がボランティアの少年から暴行を受けるという事件が実際に起きています。このときは少女の母親が気づいて警察に被害届を出しましたが、泣き寝入りして申告されなかったセクハラ・性被害は一定数あると考えられています。今回の避難訓練のために用意したものは、まず「ビブス(ゼッケンのようなもの)」。これを避難訓練の参加者全員が付けることで、地域に防災訓練を行っていることをアピールします。「救護場所」や「避難本部」、「受付」などの場所を告知するラミネート看板は、公民館が作成。子どもにもわかりやすいようキャラクターのイラストをあしらう配慮は、地域に根差した公民館ならではのもの。そして女性と子どものための「相談先カード」。女性や子どもが万が一避難所で性被害や暴力、セクハラに遭いそうになったときに使えるものです。性被害者の年齢層は若くて、「NO」と言えない子どもたちがターゲットになることも多いため、普段からそういう意識を持たせることは、先々の性被害防止につながると思います。また、災害時に女性に対する性暴力が起こる可能性があるので注意が必要ということを知ってもらうために、「有田防災9が女性目線で考えた避難所情報とおすすめ防犯グッズ」と題したリーフレット、「避難時や避難場所での防犯」についての資料も作りました。「参加記念エコバッグ」は、防災訓練当日に、飲料水(5年間賞味期限付き)のペットボトルと、真空パックの菓子パンを入れて、記念品として配ります。普段から使うことで、避難訓練に参加したことを訓練後もずっと覚えていてもらって、少しでも防災意識が根付く助けになればとの想いだそうです。今後は住民同士のつながりや防災に関する知識や避難のしくみといったソフト面の強化につながる活動もしていきたいとおっしゃっていました。「普通の主婦が集まり、防災を考えて企画した訓練です。」とおっしゃっていましたが、もともと地域のことを大切に考えて活動していらっしゃる女性たちだからこそ、女性目線で、優しく心配りのできる避難所開設という企画の避難訓練が企画できた様子の伝わるインタビューでした。