この記事では「一人暮らしで猫を飼っていて、地震などの災害に遭ってしまったときどうすればいいか。普段から備えるべき防災対策」も含めて、猫のトレーニングサービスも行っているPeT2rainee(ペットレーニー)の代表トレーナー、高橋ルミさんが解説します。
こんにちは、アニマルトレーナーの高橋です。
今回は、一人暮らしの人が猫を飼っていて地震や台風などの災害時に愛猫をどう守ればいいかについて、トレーナーとして飼い主として日々猫と向き合う私が、解説するのでぜひ参考にしてください。
災害はいつ起こるかわかりません。
そんな時に大事な家族(愛猫)を守れるように準備をしておく必要があります。
特に食料、水、医薬品を備蓄し、避難計画を立てて、迷子対策をしておくことがとっても大切です。
具体的に【愛猫を守るため、災害時に向けた対策】にはどんな準備が必要なのか、この記事を通して確認していきましょう。
猫の防災対策1:愛猫と日頃からできるトレーニング
猫はしつけられないのでは?と思う方も多くいると思います。
ですが、しっかりと日頃からコミュニケーションの一環としてトレーニングすれば、猫もある程度学習します。
災害時に必要なアイテムを普段から揃えておくことは重要ですが、もしもの時にアイテムを使うことを愛猫が拒否してしまうと、せっかくの防災グッズの意味がなくなります。
猫は神経質な動物。環境が変わると大きなストレスがかかり、普段通りに居られるとは限りません。
子猫のうちから教える方がいいですが、成猫になってからのしつけは不可能ということでもありません。成猫は子猫より覚えてくれるまでに時間はかかるかもしれませんが、災害時に少しでも愛猫のストレスを減らして、落ち着いて過ごせるように今からトレーニングを実践しておきましょう。
ここでは緊急時に役に立つ基本のトレーニングを2つと、応用編のトレーニングを紹介します。
クレート(ハウス)トレーニング
避難所には多くの人が集まることから、猫はクレート(屋根が付いた箱型のハウス)の中で生活することが予想されます。
そのため、日頃から狭いクレートに入ることにも慣らしておくことが重要です。
ステップ1 クレートに慣れさせる
普段から部屋にクレートを置いておき入ることに慣れさせ、クレートは安全なものだと認識させる。
ステップ2 人の指示でクレートに入れるようにする
① 普段ごはんを与える場所をクレートの中にする、またはご褒美(おやつ)を欲しそうなタイミングでクレートの中にご褒美を置いて与える。
これを継続的に1、2週間くらい繰り返す。
② クレートに入ることに慣れてきたら、ご褒美を持った手で誘導しても良いので、完全にクレートに入った後にご褒美をあげるようにする。
① との違いはご褒美のタイミングです。
③ ②の行動が安定してできるようになったら、クレートを指差すなどクレートに入る合図を一つ決めて、合図で反応するようにするためご褒美を持った手での誘導を少しずつ減らして合図に替えていく。
- 1合図
- 2ご褒美を持った手で誘導(この誘導を減らしていく)
- 3クレートに入る
- 4ご褒美をあげる
ステップ3 クレートに入れられている時間を延ばす
クレートに入ることに慣れてきたら、ご褒美の量を増やして食べている間に扉を閉じるようにしましょう。
最初は食べ切ったらクレートから出られるように扉を開けます。そこから徐々に扉が閉まっている時間を延ばしていきましょう。
周囲が見えていると、「外に出して」とアピールすることがあるので、タオルなどをかけて暗くしてあげると落ち着きやすいです。
外に出してとアピールしている間は扉を開けないで、落ち着いたタイミングで出すようにしましょう。
ハーネストレーニング
被災した場合、急な環境の変化によって愛猫がいつパニックになるかわかりません。
愛猫がパニックになった時に突然どこかに行ってしまわないように、ハーネスを付けられることにも慣らしておきましょう。
ステップ1 首輪に慣らす
まず首輪に慣れることから始めましょう。
- パニックにならない場合: 付けたままにして慣らす。
- パニックになりそうな場合:ご褒美で気を紛らわしながら短い時間から首輪に慣らし、徐々につけている時間を延ばす。
ステップ2 ハーネスに慣らす
- 1ハーネスを付けながらご褒美を与える。
ご褒美を食べ終えたと同時にすぐに外してあげる。まずは、ハーネスを付けられること=ご褒美が貰える良いことだと思ってもらえるようにします。
嫌がらずにご褒美が食べられるくらいになるまで継続しましょう。
- 2ご褒美で誘導しながら少し歩かせてみる。
拘束されることに慣れていない猫ちゃんの場合は、“コテン”と転がってしまうことが多いので、短い距離から始めましょう。
「ご褒美に気が取られているうちに歩いていた」という状態を作っていくとうまくいきます。
上達するにはとにかくハーネスの感覚に慣れてもらうしかないので、根気よく練習していきましょう。 - 3リードを付けて歩いてみる
リードを付けた状態で②のステップと同様に徐々に距離を伸ばしていく。
- 4引っ張られて歩くことに慣れる
引っ張られて歩く先にご褒美を置いて、引っ張られることにも少しずつ慣らしていきましょう。弱い力から始めるのがコツです。
【応用編】呼び戻しトレーニング
もし万が一パニックで逃げ出してしまった場合、日頃から呼び戻し訓練をしていなければ、いくら関係を築いていても、人が呼んだタイミングで来てくれるとは限りません。
基本的に猫は自分のタイミングで動く動物のため、日頃から人に呼ばれたら来るという習慣をつけておくとピンチの状況で役に立ちます。
ステップ1 合図を決める
名前で来るようにするのか、「おいで」などの合図で来るようにするのか決める。
ステップ2 合図で呼ぶ
① まずはご褒美を見せてでも良いので、見せると同時に合図で呼ぶ。
日頃から繰り返し、呼ばれること=何かいいもの(おやつ)をもらえると学習させましょう。
② ご褒美を隠した状態で呼ぶ。
来たらご褒美をあげる。
その他に教えておくと良いこと
- 色々な種類のごはんを食べられるようにしておく。
- 飼い主以外の人にも触られたりすることに慣らしておく。
- 新しい環境に移動することに慣らしておく。
飼い主は、愛猫がストレスや恐怖を感じた時の行動パターンを理解し、対応方法を知っておくようにしましょう。
猫の防災対策2:愛猫の身体にしておくこと
マイクロチップを装着しておく
迷子になった時に、飼い主を特定するための手立てになります。
令和4年からペットショップやブリーダーなどで販売される犬猫に関しては、装着が義務化されています。
保護猫を譲り受けた場合や、令和4年以前に迎えた猫の場合は、マイクロチップを装着するようにしましょう。
装着後、環境省の専用サイトでの登録も忘れないようにしてください。
ワクチンの接種
ワクチン接種は毎年することが理想ですが、体調面から毎年接種が難しい場合は抗体検査でも構いません。
避難所には多くのペットが集まるので感染予防につながります。
ノミ・ダニ予防
外に出さないから家猫にノミ・ダニ予防は必要ないと考える飼い主さんも多いと思いますが、飼い主さんの靴や衣類などに付着して外部から室内に持ち込まれたノミやダニが繁殖して猫が感染してしまうことも。
完全に室内で猫を飼っていても、ノミやダニを100%避けることはできません。
ノミ・ダニ予防をしていないと、避難所から受け入れ不可とされる可能性もあるので、日頃から予防しておきましょう。
ノミ・ダニ駆除剤は市販のもの(下記リンク参照)もありますが、動物病院で処方してもらう方がより効果的で安全性も高いでしょう。
避妊去勢実施
避難所で保護してもらう時のために、避妊去勢もしておくことをおすすめします。
猫の防災対策3:住まいでできること
大型家具の固定
家具は壁や天井・床に固定具で留めておくようにしましょう。
キャットタワーは、床と天井でしっかりと固定できるつっぱり式がおすすめです。
落下防止対策
落ちてきてケガの要因になるものは高いところに置かないようにしましょう。
猫の防災対策4:備えておくべき、必要なグッズ
ここでは災害時に自宅待機や避難所で過ごすことになった時、食料など最低限必要なものについて解説していきます。
防災グッズ1. 食料と水
日頃から食べ慣れているキャットフードに加え、断水時のための飲用水、災害に遭ったストレスで食欲が落ちた場合のために食いつきの良いドライフード(長期保存の利くもの)やおやつなども用意しておくとベストです。
少なくとも7日分あるといいと言われています。
防災グッズ2. ケージ
ケージは、少なくともいずれか一つは準備するようにしましょう。
ハードケース
- メリット:頑丈で衝撃から守れる。
- デメリット:場所を取る。やや重量がある。
簡易ケージ
- メリット:コンパクトに保管できて軽い。サイズが大きく中が広いものが多い。
- デメリット:堅牢性に欠けるので、衝撃などに弱い。
防災グッズ3. トイレグッズ
特に神経質な猫の場合、トイレ環境はとても重要。折りたたみ式の簡易トイレと猫砂を用意しておきましょう。
日頃からトイレシーツですることにも慣らしておくと、猫砂がない場合にトイレシーツで代用できるので緊急時の排泄環境の選択肢が増えます。
もし、普段から猫ちゃんと外出する機会があるなら、移動先でもトイレをすることに慣れさせましょう。
防災グッズ4. 首輪とリード(ハーネス)
脱走して迷子になった時のために、飼い主の連絡先情報が入っている首輪を付けておくことが理想です。
また、万が一パニックになった際や避難所に行った際に、ハーネスは必ず必要になります。
拘束されることが苦手な猫は、ハーネスを付けた瞬間固まってしまったり、寝転んでしまったりする子も多くいます。普段からハーネスを付けて歩くことには慣れさせておきましょう。
※長毛猫用はこちら
防災グッズ5. ワクチン接種や、即往症がわかる書類
他のペットも集まる可能性がある避難先では、ワクチン接種状況によっても受け入れ可否が変わります。
ワクチン情報がわかる書類をコピーして一緒に保管しておくようにしましょう。
防災グッズ6. その他にあると助かるペット用品
猫は洗濯ネットに入れると落ち着く場合が多いです。災害時にパニックになりやすい猫を安心させて、動きを制限するには洗濯ネットはもってこいのアイテム。
愛猫の身体より一回りくらい大きいサイズの洗濯ネットがおすすめです。
このほか、食器、ペットの写真(はぐれた時用)、飼い主情報を記載した書類、ガムテープ(クレートなどが壊れた時の修理用)、タオル、ブラシ、おもちゃ、排泄用袋もあらかじめ準備しておくと、もしもの時に慌てなくて済みますよ。
災害時の対応について
ここでは、実際に災害が起こった際にどう動けばよいのかを解説していきます。
<同行避難のフロー図>を確認
上の図は環境省が出している、実際に災害に遭った時、どのように動けば良いのかをまとめたフロー図です。ぜひ参考にしてみてください。
避難中のペットの飼育環境
避難先での過ごし方はいくつかあるので、図をもとに自分の住むエリアの避難経路や、ペット受け入れ可能な避難所の有無などを事前に調べておき、どのように過ごすかイメージしておきましょう。
災害時の愛猫との接し方
1. 落ち着かせるには
- 身を隠せるようなものを用意して、周囲の状況が気にならないように暗くしてあげる。
- 猫は音に敏感なため、できるだけ静かな場所を選ぶ。
- 喜ぶポイントを撫でてあげる。
- ご褒美で気分を上げてあげる。
2. 運動について
猫の場合、パニックになった際にどこかに逃げてしまうことも考えられるので、避難所の限られたスペースで十分な運動をさせるのは難しいです。
長期間にわたる避難所生活になる場合は、可能なら知人もしくはボランティア団体に預けることも視野に入れましょう。
猫とはぐれてしまった場合
すぐに自治体の動物担当部署や警察に届け出るようにしましょう。
また、今はSNSも普及しているので、SNSに愛猫の写真や情報をアップして情報提供を求めるのも一つの策かもしれません。
もっと詳しいことが知りたいという方は、環境省のホームページに「人とペットの災害対策ガイドライン」や、特に重要な点をまとめた「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」が掲載されているので、ぜひ読んでみてください。
- Q地震などの災害時に備えた、猫の防災対策は?
- A
猫がパニックになったり、迷子になったりしないために、普段からクレート(ハウス)に入ることに慣れさせたり、ハーネスをつけて飼い主といっしょに歩けたりできるようにトレーニングしておくといいです。
猫もある程度のしつけはできます。成猫になってからでも遅くはありません。
- Q災害時に備えて備蓄しておくべきものは?
- A
食料と水を7日分。ケージ、トイレグッズ、首輪とリード(ハーネス)、ワクチン接種や、即往症がわかる書類、落ち着かせるための洗濯ネットを用意しておきましょう。