カーサミアの街情報では、街ごとの地震の際の揺れやすさや、揺れに見舞われる確率の予測値などを出しています。
しかし、「この情報は本当に信頼できるものなの?」「震度5強ってどのくらい怖いの?」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こんにちは。カーサミア編集部のアサノです。この記事では、上記の疑問に答えていきます。
Q. カーサミアの地震情報は信頼できる?
A. カーサミアで紹介している地震情報は 「国立研究開発法人 防災科学技術研究所」が公表しているデータです。
カーサミアを信頼するというより、防災科学技術研究所を信頼していただければと思います。
では、「防災科学技術研究所」とはどういった機関でしょうか。
この前身となる「国立防災科学技術センター」は、1963年に設立されました。60年近い歴史のある、国の研究施設です。
最新の科学技術を用いて、防災に関する研究を幅広く行っているようです。「地震・火山・気象・土砂および雪氷災害による被害の軽減に関する研究開発」とのことですので、地震以外にもあらゆる災害について研究しているのですね。
「防災科学技術研究所」のサイトでは、様々なデータを閲覧することができます。カーサミアではここで地震や揺れに関するデータを調べ、みなさんに分かりやすい形にしてご紹介しています。
カーサミアで紹介している地震情報
カーサミアの街情報記事で紹介している情報は、主に以下となります。
- 地震の際の揺れやすさ(表層地盤増幅率)
- 地震ハザード評価
- 今後30年以内に特定の強さ以上の地震がある確率(揺れに見舞われる確率)
分かりやすい部分を取り出して紹介していますが、もっと詳しい情報も調べることができます。
気になる方は国立研究開発法人 防災科学技術研究所の提供する「地震ハザードステーション」をご覧くださいね。住所を入れれば、いま自分が住んでいる場所についてピンポイントで調べることもできますよ。
Q. 東京は30年以内に必ず大地震が来るって本当?
A. 本当です。「震度5強以上」の地震は必ずあります。
地震は怖いですよね。
筆者も小学生のとき、阪神淡路大震災に遭っています。私の家では食器棚が倒れてお皿が全滅しました。祖父母宅も含め、近所の古い民家がいくつか倒壊しました。小学校の空き教室はしばらく避難者を受け入れていましたし、公園は臨時の瓦礫置場になりました。比較的被害の少ない地域ではありましたが、停電・断水もしばらく続き、大変でした。
近年は大きな地震が続いていますし、もっと被害の大きな地域で被災経験のある方もいらっしゃるでしょう。そういった方の心情を考えると、地震が来ない場所に住みたい気持ちはとてもよく分かります。
しかし、東京に住む以上、震度5強以上の地震はほぼ避けられません。
具体的に、東京の「地震の際の揺れやすさ」を見てみましょう。
比較的揺れにくいのは、台地エリア
首都圏における「地震の際の揺れやすさ(表層地盤増幅率)」を見てみましょう。
赤い部分が、揺れやすいエリア。
青い部分ほど、揺れにくいエリア。
黄色~オレンジ色の部分は、中間のエリアになります。
地図を見ていただければわかるように、揺れにくい緑~青のエリアは、丘陵地・山間部に多くなります。多摩・八王子・福生…などですね。通勤の便や、将来の売ったり貸したりしやすさを考えると、一人暮らし女性には少しおすすめしづらいエリアです。(もちろん勤務先や個別の条件にもよりますが)
多くの一人暮らし女性が検討するであろう平野部の地域は、ほぼオレンジ~赤の色がついています。
このオレンジ~赤色がついた平野部うち、比較的揺れにくいオレンジ色の部分は、武蔵野台地(地図の西側)や下総台地(地図の東側)など、台地です。
また、この地図を拡大していくとわかるのですが、全体的に黄色~オレンジ色(中程度)の地域でも、川沿いの部分だけ赤(揺れやすい)となっていることも多いです。
選べる状態であるなら、なるべく赤の「揺れやすい」エリアよりも、オレンジ色のエリアにある部屋を選ぶと安心です。
都内4ヵ所で地震の揺れ予測を比較
具体的に、主要駅で「一定の強さ以上の揺れに見舞われる確率」の予測を見てみましょう。
専門用語では 「超過確率の値」と呼ばれています。
今後30年間に、「震度〇以上の揺れに見舞われる確率が〇%」 という予測になります。
注:「その場所で地震が発生する確率」ではなく、「周辺で発生した地震によってその場所が震度〇以上の揺れに見舞われる確率」です。
まずは平野部の標準的な地盤である東京駅周辺と新宿駅周辺を見比べてみましょう。
東京駅周辺
千代田区丸の内一丁目 付近で、特定の震度以上の揺れに見舞われる確率の値です。
震度5弱以上 | 99.9% |
震度5強以上 | 91.8% |
震度6弱以上 | 45.4% |
震度6強以上 | 7.1% |
※出典: 国立研究開発法人 防災科学技術研究所 地震ハザードカルテ(以下同)
新宿駅周辺
新宿区新宿三丁目 付近で、特定の震度以上の揺れに見舞われる確率の値です。
震度5弱以上 | 99.9% |
震度5強以上 | 91.5% |
震度6弱以上 | 45.4% |
震度6強以上 | 7.1% |
東京駅、新宿駅ともに震度5弱以上の揺れがくる確率は99.9%。
震度5強以上の揺れがくる確率も91%以上です。
これはもう避けられないと思っていたほうがいいでしょう。
一方で、震度6強以上の揺れがくる確率は7.1%と、そこまで高くありません。
では、比較的揺れにくい八王子はどうでしょうか。
八王子周辺
八王子市子安町一丁目 付近で、特定の震度以上の揺れに見舞われる確率の値です。
震度5弱以上 | 97.1% |
震度5強以上 | 72.8% |
震度6弱以上 | 26.2% |
震度6強以上 | 2.8% |
震度5弱以上の揺れがくる確率は97.1%。
都心部と比べても、さほど違いがありません。
一方で、震度5強以上の揺れに見舞われる確率は72.8%。
少し下がりましたが、まだまだ高い確率です。
しかし、震度6弱以上の揺れに見舞われる確率となると、26.2%。
都心部と比べるとぐっと低くなり、揺れにくい地盤であることがわかります。
※確率が低いとはいえ、震度6強以上の揺れがくる可能性も2.8%ありますので、地震対策は必要です。
それでは、逆にさきほどの地図で「揺れやすい」とされていた、お台場周辺を見てみましょう。
お台場周辺
東京都江東区青海二丁目 付近で、特定の震度以上の揺れに見舞われる確率の値です。
震度5弱以上 | 100.0% |
震度5強以上 | 99.4% |
震度6弱以上 | 81.6% |
震度6強以上 | 28.7% |
震度5弱以上の揺れがくる確率は100%でした。
震度5強以上でも、99.4%です。
震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は、81.6%。
東京駅や新宿駅周辺では45.1%でしたから、確率だけでいうなら倍近くになっています。
さらに震度6強以上の揺れに見舞われる確率も、28.7%です。
東京駅や新宿駅周辺では7.1%、八王子では2.8%でしたから、かなり違いますね。
都心部であれば、9割以上の確率で震度5強以上
いかがでしたか?
「東京は30年以内に、ほぼ必ず大地震が起きる」と言われることもありますが、より正確に言うなら「ほぼ必ず震度5強以上の揺れに見舞われる」ということになります。
震度5強以上の地震がくる確率は、揺れにくいとされる八王子でも72.8%。都心部に住むのであれば、90%~99%以上となります。
ですが、この部分だけを見て「東京は近いうちに地震が起きてみんな死ぬ」と悲観するのは早すぎます。
実際に震度とゆれによる被害の状況を見てみましょう。
Q. 震度5強の地震が来ると、どうなる?
A. 震度と被害の関係は、以下の通りです。
気象庁が震度と揺れの状況を解説している図を引用します。
震度5強は「思ったより怖くないかも?」と感じる方もいるかもしれません。
図の文字は少し小さいので、抜粋しておきます。
震度5弱
・棚にある食器類や本が落ちることがある
・固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある。
引用元:気象庁「震度について」 (以下同じ)
震度5強
・棚のものが落ちることが多くなる
・固定していない家具が倒れることもある
・補強されていないブロック塀が崩れることがある
震度5強の揺れは9割以上の確率でありますので、家具の転倒対策は必須です。
とはいえ、家具の転倒対策をきちんとしておけば、さほど大きな被害は出ない…と考えてよさそうです。(家の外にいるときは、補強されていないブロック塀に気を付ける必要がありますね。)
一方、震度6以上となると、このような状況になります。
震度6弱
・固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。ドアが開かなくなることがある
・耐震性の低い木造建物は、(中略)倒れるものもある。
震度6強
・固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなる。
・耐震性の低い木造建物は、傾くものや、倒れるものが多くなる。
・大きな地割れが生じたり、大規模な地滑りや山体の崩壊が発生することがある。
6弱を超えると、被害も大きくなってきます。注目していただきたいのは、絵のこの部分。
震度6弱
震度6強
耐震性が低い建物は、大きな被害が出て、倒壊の可能性もあります。
しかし、耐震性の高い建物であれば軽微な被害で抑えられます。
耐震性が高い建物であれば、震度6~7でも倒壊しない
新耐震基準で建てられた建物であれば、耐震性の高い建物といえます。
新耐震基準については、以下の説明がわかりやすいでしょう。
建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年6月1日以降の建築確認において適用されている基準をいう。
これに対して、その前日まで適用されていた基準を「旧耐震基準」という。
新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されている。技術的には、地震力が加えられた場合の構造部材に生じる応力が許容応力以下であるだけでなく、一定以上の規模の建物については、靱性(粘り強さ)を確保することが求められる。また、建物強度のバランスも必要とされる。
なお、旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないような構造基準として設定されていた。
引用元:不動産流通研究所
1981年以前に建てられた旧耐震基準の中でも、当時の基準を上回る耐震性能で建てられた建物もあります。ヴィンテージマンションと呼ばれる希少なマンションですね。数はとても少ないですが、そのぶん価値があります。
一方で1981年6月1日以降に建築確認を受けている建物であれば、すべて震度6強~7程度にも耐えられる基準で建てられています。
これは2019年現在で、おおむね築38年以内の建物になります。建築確認から竣工まで時間がかかることもありますので、竣工が1981年~82年の場合は、念のため建築確認の日付も確認しておきましょう。
建てるときに、新耐震の耐震基準がしっかり守られているか不安な場合は、「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」(2000年)以降の建物を選ぶようにするれば、さらに安心できるでしょう。
古いマンションのリノベーションについて
最近はリノベーションが流行っていますね。不動産屋として気になっていることがあるので、少し書いておきます。
築40年以上の旧耐震基準で建てられた建物でも、フルリノベーションして素敵な見た目に生まれ変わった物件がたくさん流通しています。
デザイナーズリノベーションで魅力ある間取り。見た目も新築同様のきれいさ。築年数が古いぶん、お値頃で手が届きそう……そんな物件に一目惚れで購入を決める方もいらっしゃいます。
しかし、どんなにリノベーションをしても、共有部分やコンクリートなど、建物そのものの造りは新しくなっていません。
もし旧耐震基準で建てられたリノベーション物件を買う場合は、 耐震診断と、ホームインスペクションの両方を受けるなどして、きちんと「耐震基準の高い建物である」ことを確認してくださいね。
※ホームインスペクション(住宅診断)は、 住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期などを調べるものですので、耐震性を調べる耐震診断とは異なります。
地震は「正しく恐れる」こと
地震は怖いものです。
その気持ちを忘れてしまうと、備えがおろそかになってしまいます。ですので、怖いと思うことは必要です。
ですが、いたずらに怖がるのは違います。
被害を抑えるために、できることはたくさんあります。
- なるべく揺れにくい台地のエリアを選ぶこと。
- 台地エリアでも、揺れにくい地盤を選ぶこと。
- 揺れやすい地盤に住むときは、耐震性を妥協しないこと。
- 新耐震基準で建てられた、耐震性の高い建物を選ぶこと。
- 家の中では、家具の転倒防止対策をすること。
- もし家具が倒れても怪我をしにくい位置に家具を配置すること。
ほかにも、停電や断水にそなえて備蓄したり、避難所の場所を確認したり。できる対策はいくつもあります。
また、東京都の発行する、「東京くらし防災」「東京防災」というとても優れたパンフレットもあります。東京都民でなくても、電子版を無料で閲覧することができます。気になった方は、こちらもぜひ読んでみてください。
「東京くらし防災」「東京防災」|東京防災ホームページ
東京の平野部では、比較的揺れにくい地盤を選んだとしても、震度5弱が99%以上・5強が90%以上の確率で起こります。ですので、地震を正しく恐れて、対策を考えながら暮らしていく必要があります。
私たちは、住まい選びのときに少しでも地震のことを意識して選んでほしいという思いで、街情報記事でも地震情報を掲載しています。
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