「マンションブランド」とは
その成り立ちと、代表ブランドの解説
マンションの購入に興味をもつと、マンションブランドについて気になってきませんか。マンションブランドとは、特定の物件ではなく「マンション名」のこと。TVやインターネットでは、大手不動産会社のマンションブランド広告を目にする機会も多いと思います。
この記事では、中古・新築を問わずマンション購入を検討するときにブランドをどう考えていくか、整理していきたいと思います。
マンションブランドとは
分譲マンションの供給をしているデベロッパーは、一時期、150社を超えたと言われています。延べ社数は膨大な数に上るでしょう。これらのほとんどのデベロッパーは、分譲マンションを供給するときに、独自のマンション名=ブランドをつけます。
ですから、日本の分譲マンションブランド数は膨大な数になると考えられます。
他の商品(ファッション・自動車・家電など)のブランドと比較すると、マンションブランドの数はとても多いといえるでしょう。
では、「マンションブランド」は、そもそもどんなものなのでしょうか?
マンションブランドは、ファッション・自動車・家電など他商品のブランドと大きな違いがあります。
マンションは個々の物件で、建物の形や部屋の間取も異なります。さらに、設計している設計事務所、建設している建設会社も異なります。つまり、ブランドと商品の密接度が低いとも言えます。
しかし、マンションのブランドを持ち、継続的に供給しているデベロッパーはマンションブランドを重要視しています。
理由としては、ブランドに好印象を持ってもらうことで、個々の物件で他社と競合したときに優位に立ちたい。場合によっては、ブランドファン(会員)だけで売り切りたいという思惑があるからです。
具体的には、デベロッパーはブランドの商品企画を規定し、建築基準法などの最低限の法令以上の品質基準を定めています。
この商品規定は、一般には公開されていないので、なかなか具体的にイメージできないと思います。しかし、品質基準を定めているということが、ブランドマンションを買う実利的な利点のひとつであると言えます。
今回の記事では、日本を代表するマンションブランドを整理し、マンションブランドについて知っていただければと思います。
日本のマンション黎明期から現在まで、50年続く4つの老舗ブランド
最初に紹介するのは、分譲マンションの歴史の初期から続いている「老舗」ブランドです。
表のブランド開始年に着目してください。これらのブランドは1960、70年代に最初の物件が出てから、今現在でも供給が継続しているブランド。老舗かつ現役です。
第一次マンションブームは最初の東京オリンピック(1964年)が開催されたころです。当時発売され、今も同じブランドで(時代や企業グループの再編などで細かな修正はありますが)50年以上を経た長期ブランドになります。
他の商品分野に目を向けても、これだけ息の長いブランドが複数継続している分野は、あまりないのではないでしょうか。
①ザ・ライオンズ(大京)
ブランド | ザ・ライオンズ |
事業主(現在) | 大京 |
ブランド開始年 | 1968年 |
主なシリーズ | ライオンズ ライオンズタワー(超高層) ライオンズマンション(以前のブランド) |
ブランド形成の経緯など
1968年に「ライオンズマンション」の第一号物件を東京港区赤坂で建設。1980年代には分譲マンションシェアトップになり、累計の販売戸数は日本で一番多い。
日本で累積の供給量がもっとも多いのが「ライオンズマンション」です。今でこそ年間供給ランキングで上位ではなく、また地方での供給も多いことから、あまり目立つ存在ではありません。しかし、日本で一番多いマンションということになります。
最近「ザ・ライオンズ」と言うブランドに統一しました。以前は「ライオンズマンション」、その後「ライオンズ」というネーミングで供給している物件が多く見られます。また、タワーマンションでは「ライオンズタワー」というネーミングが採用されています。
特徴としては、70年代、80年代に茶色のタイル貼りの外観で統一していました。最近の物件の外観はかならずしもそうではありませんが、いろいろな場所で茶色のタイル貼りの「ライオンズマンション」を見る機会も多いのではないでしょうか。
日本のマンション老舗ブランドの筆頭だと思います。
②「パークマンション(ほか「パーク」シリーズ)(三井不動産→三井不動産レジデンシャル)
ブランド | 「パーク」シリーズ (パークマンション他) |
事業主(現在) | 三井不動産レジデンシャル |
ブランド開始年 | 1970年 |
主なシリーズ | パークマンション(超高級) パークコート(高級) パークホームズ(ファミリーマンション) パークシティ(大規模開発) パークタワー(超高層) パークリュクス(小家族向け) |
ブランド形成の経緯など
三井不動産が、都内高級立地を中心に分譲マンション事業を開始して、数棟目から「パークマンション」を使用。その後、マーケットイン型事業(一般層対象のパークホームズ)などに展開していった。
いわゆる財閥系不動産会社の三井不動産のマンションブランドが「パーク」シリーズです。最初の頃はいわゆる富裕層向けのマンションとして発売され、そのネーミングが「パークマンション」でした。
その後、一般サラリーマン層へターゲットを拡大時に「パークホームズ」などの一般向けブランドを追加。また「パークマンション」と「パークホームズ」の間の価格帯として「パークコート」などがあります。現在でもグレード別(価格帯別)のブランドラインナップをとっています。
このほか、タワーマンションでは「パークタワー」、大規模開発では「パークシティ」とったブランドを展開しています。
外観的な特徴としては、すべての物件ではありませんが、アースカラーの優しい色調が特徴です。
③ザ・パークハウス(三菱地所レジデンス)
ブランド | ザ・パークハウス |
事業主(現在) | 三菱地所レジデンス |
ブランド開始年 | 1971年 |
主なシリーズ | ザ・パークハウスグラン(超高級) 超高層マンションの場合などには 物件名後ろに「ザ・タワー」などを 付加することが多い。 |
ブランド形成の経緯など
三菱地所が最初に分譲したマンションで「パークハウス」を使用。その後、企業統合などを経て「ザ」が付く「ザ・パークハウス」となる。基本的に1ブランドで通している。
財閥系不動産会社の一角、丸の内にたくさんのビルを持つ三菱地所のマンションブランドが「パークハウス」です。今では「ザ・パークハウス」というブランドになっています。
供給量はそれほど多くないのですが、比較的高級な物件が多いと思います。
先述した三井不動産では、パークマンションから初めて、一般層へ拡大するときにブランドラインナップを作っていきました。一方でパークハウスは基本的には1ブランドです。
外観の特徴としては、瀟洒でシンプルな中に高級感がある物件が多いと思います。
④グランドメゾン(積水ハウス)
ブランド | グランドメゾン |
事業主(現在) | 積水ハウス |
ブランド開始年 | 1977年 |
主なシリーズ | 超高層の場合に、物件名後ろに 「ザ・タワー」などを付加する。 |
現在、ハウスメーカーとして大和ハウス工業に次いで2位、歴史も古い企業の供給する分譲マンション「グランドメゾン」。もともと大阪の会社であることもあり、近畿圏、首都圏、そして全国と広エリアでマンションの供給をしています。
1977年の最初の物件からブランドは一貫して「グランドメゾン」です。最近では少なくなりましたが、以前は屋根部分を「切妻」という戸建て住宅に近いデザインを採用することも多くありました。
全体として、マンションでもデザインとして「家」を感じさせる雰囲気があるマンションが多いと思います。
2000年代、分譲マンション黄金期に登場した3つのメジャーブランド
前回の記事で、マンション供給の黄金期は1990年代から2000年代というお話をしましたが、そのマンション供給黄金期にはたくさんのマンションブランドが誕生しました。
中でも下記の3つのブランドは、時代を代表するブランドです。供給量も多く、広告などでの露出もあり、今も存在感のあるマンションブランドだといえましょう。
⑤「プラウド」(野村不動産)
ブランド | プラウド |
事業主(現在) | 野村不動産 |
ブランド開始年 | 2002年 |
主なシリーズ | プラウドタワー(超高層物件) プラウドシティ(大規模開発) |
ブランド形成の経緯など
分譲マンション第一号は1963年。プラウド以前は、「コープ野村」「ヒルズ」「ステイツ」などのネーミングで分譲マンションを展開していたが、2002年以降プラウドに。
野村不動産が2002年に発表したマンションブランドが「プラウド」です。マンション事業自体は1960年代から展開していますが、このブランドでイメージが一新されたと思います。
調査方法・対象によって差異はありますが、ブランド知名度では最高レベルにあるブランドと言えます。
プラウドのCM「Someone To Watch Over Me」は、とても印象に残るものでした。世界のさまざまな景勝地の映像から、その時々のプラウドの代表物件の外観へ移っていき、バックに流れる音楽はその時々で演奏家が変わるCMシリーズです。
CMのイメージ通り、「プラウド」の外観デザインは、特定のイメージカラーやモチーフがあるわけではないのですが、高級感、特別感を感じる物件が多いと思います。
⑥ 「ブリリア」(東京建物)
ブランド | ブリリア |
事業主(現在) | 東京建物 |
ブランド開始年 | 2004年 |
主なシリーズ | ブリリアタワー(超高層) ブリリアシティ(大規模開発) |
ブランド形成の経緯など
分譲マンション第一号は1968年。ブリリア以前は、「ヴェール」シリーズとして展開されていたブランドを「ブリリア」に統一。
東京建物が2004年に発表したマンションブランドが「ブリリア」です。マンション事業自体はやはり1960年代から展開しています。
東京建物は、安田財閥の創始者安田善次郎が明治29年に創立した会社で、とても古く歴史のある会社です。どちらかと言えば地味な印象がありました。しかし「ブリリア」以来、分譲マンション業界で存在感が増したのではないかと思います。
ちなみに、「ブリリア」以前は、グレード別ブランドの「ヴェール」シリーズを採用していました。「グランヴェール」「アールヴェール」「プリヴェール」です。
「ブリリア」のブランド広告や物件サイトなどで、「洗練と安心」というキーワードをよく見ます。企業の歴史からくる安心感と洗練されたデザインを言い表しているなと思います。
⑦ 「ブランズ」(東急不動産)
ブランド | ブランズ |
事業主(現在) | 東急不動産 |
ブランド開始年 | 2005年 |
主なシリーズ | ブランズタワー(超高層) ブランズシティ(大規模) |
ブランド形成の経緯など
ブランズ以前は、基幹ブランド「アルス」を中心に展開。当初は「QUOLIA」他3ブランドとマルチブランド体制を取っていたが、2010年にブランズに統合。2012年にリブランディングを実施。
東急不動産が2005年に発表したブランドが「ブランズ」です。
2005年以前の東急不動産は「アルス」というブランドが主力ブランドでした。まずは「アルス」を「ブランズ」にしたのですが、当初は小家族向けの「QUALIA」なども併存していました。
それを2010年に統一して、今は東急不動産の分譲マンションといえば「ブランズ」となりました。
東急不動産の分譲マンションへの取り組みの歴史は特に古く、1958年に、いわゆる分譲マンションの建設をしています。これは1962年の区分所有法(現在の分譲マンションの権利形態を定めた法律)成立前の時期です。
また、同じ東急グループの電鉄会社である「東京急行電鉄」(現「東急」)も分譲マンションを供給しています。企業としては別の会社なのですが、「東急」には非常に多くのブランドがあるイメージでした。こうしたブランド面でやや拡散してしまっているイメージを集約するという意味もあったのではないかと思います。(現在「東急」は、ブランズとは別のブランドを展開しています。)
最近では、「環境先進マンション」としての商品企画の取り組みに積極的です。
異色(?)のマンションブランド
⑧「シティハウス」(住友不動産)
ブランド | シティハウス |
事業主(現在) | 住友不動産 |
ブランド開始年 | ― |
主なシリーズ | シティテラス (板状の大型物件に多く使用されている) シティタワー (超高層物件に多く使用されている) |
ブランド形成の経緯など
分譲マンション第一号は1964年。その後も多くのマンションを供給してきたが、明確な統一ネーミングはなかった。
80年代、90年代は「ガーデンハウス」というネーミングが多く、90年代中ごろに一部の物件で、「シティハウス」というネーミングが見られ、2003年くらいからシティハウスが多くなり、最近ではシティハウス、シティテラス、シティタワーなど「シティ」を冠している。
最後に、「異色」と銘打つのは失礼かも知れませんが、住友不動産のブランド「シティハウス」を紹介します。住友不動産は、三井不動産レジデンシャル、野村不動産などとマンション供給ランキングトップを争うデベロッパーです。
住友不動産も、1960年代から分譲マンション事業を行う財閥系不動産会社です。しかし物件ネーミングは、当初からのものを使っている老舗ブランド系ではありません。また、ある時期にブランドの一新を発表したわけでもありません。いろいろな物件名を使いつつ、2000年以降はほぼ「シティハウス」が主力になってきています。
一時は、物件名よりも「住不の」「すみふの」と企業名を冠する広告が多かったように思います。物件ブランドより企業ブランドを優先させたのかもしれません。
一方、住友不動産の物件のデザインは、特徴がはっきりしていると思います。
一言で言うと、シャープで、クールな印象が強い都会的なデザインです。
外観デザインは黒に近い色を多用し、バルコニーのパネルも濃い色のアクリル板が採用されていることが多いです。タワーマンションなどでは、リビングの上から下まで一面の窓ガラスを配している例が多く見られます。
中古マンションの検討における「ブランド」との付き合いかた
繰り返しになりますが、マンションブランドがあっても個々の物件に、まったく同じ物件はありません。立地はもとより外観のデザイン、間取、いずれも個々の物件で企画されています。
また、同じブランドでも、物件の仕様も様々です。つまり、マンションブランドは「このブランドだから絶対にいい」というものではありません。
一方で、大手デベロッパーのマンションブランドには、社外に公開してこそいませんが、商品の設計規定が存在していることがほとんどです。ブランドとして品質の基準を設けている場合が多いと思います。
また、マンションブランドには、商品企画の「世界観」というか、個性のようなものも存在します。
下記の写真をご覧ください。ブランドの異なるマンションが並ぶ風景を撮影したものです。
瀟洒でシンプルなザ・パークハウス(左・中央)と、優しい色調のパークシリーズ(右)
左:ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス(三菱地所レジデンス)
中:ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス(三菱地所レジデンス)
右:パークタワー晴海(三井不動産レジデンシャル)
パークシリーズと比較すると、シティタワーのクールさが際立ちます
手前:シティタワー麻布十番(住友不動産)
奥:パークコート麻布十番ザ タワー(三井不動産レジデンシャル)
つまり、マンションブランドを知ることは、それぞれの物件がどんな背景をもって企画されてきたかということを知る一助になると思います。
中古マンションの検討時には、あくまでも個別の物件が自分にとって良い物件なのかということを優先して選んでいくのがよいでしょう。しかし、マンションブランドを見て、そのマンションの企画背景に思いをはせるのも、物件選びの楽しみかも知れません。
<コラム> 「パーク」がつくマンションブランド、なぜ多い?
マンションブランドが気になってくると、「パーク〇〇〇」といった「パーク」が含まれるマンションが多いことに気が付きます。
今回も取り上げましたが、日本の不動産デベロッパーの代表でもある三井不動産と三菱地所のマンションブランドは
・三井は「パークマンション」
・三菱が「パークハウス」
と、似ているので混乱しやすいですよね。
大枠としては、三菱地所(三菱地所レジデンス)は基本的に「ザ・パークハウス」のみを使用しています。
それ以外の「パークマンション」「パークホームズ」「パークコート」などは三井が使用しているマンション名。なので、「パークハウス」以外の「パーク」は三井不動産(三井不動産レジデンシャル)の場合が多いとおぼえておくといいと思います。
ただし、三井、三菱以外で「パーク」をブランドとしているデベロッパーもあります。代表的なのはパナソニックホームズ(旧 パナホーム)の「パークナード」があります。こちらも供給量はそれほど多くありませんが、現在も継続して使われているブランドです。
また、三井、三菱の両社とも通常使っている「パーク〇〇」とは異なる物件を出していることがあります。
つまり「パークハウス」以外の「パーク」は三井、という法則も絶対ではないのです。
ちょっと蘊蓄話になりますが、一例をご紹介します。
三井、三菱とならぶ財閥系デベロッパー住友不動産も、1990年代末を中心に「パークスクエア」というマンションを供給していました。
さらに「パークスクエア」というマンションは、三井、三菱からも(数は少ないでのですが)供給されたことがあります。結果、「パークスクエア」の商標は3社がそれぞれ保有している非常にまれな例となりました。
「パーク」とは、もちろん「公園」のことですが、なぜパークというネーミングが好まれるのでしょうか。
私の考えではありますが、「公園」には、地域住民の憩いの場、緑美しく癒される場」という要素があります。これが複数の世帯が集まって住む、共用部分を持ったマンション=集合住宅の考え方に何か符合するのでは、と思っています。
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