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【東京】地盤が安定しているのに、地震の災害リスクが高い住宅街ってどこ?防災士が解説

防災
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地震大国日本で、住む場所を探す際に気にする方も多いのが「地盤の強さ」。

ただ、強い地盤だからといって、必ずしも地震による災害リスクが低いとは限らないことを知っていますか。

本記事では、こちらについてお伝えします。

・東京23区で、地盤が強いのに実は地震による災害リスクが高い住宅街
・地盤の強さ以外にも知っておきたい住まい選びの際の防災ポイント

まこぴ|防災をHappyに伝える防災士

2020年防災士取得以来、「防災をHAPPYに伝える防災士」としてSNS発信・防災イベント企画監修・セミナー・コンサルティング等実施。2024年2月 (株)ColorfulBosaiCreation設立。
神奈川県茅ヶ崎市&岩手県陸前高田市で2拠点生活。
趣味はお洒落な防災グッズ探し、特技はギャルと防災を語れること。

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東京23区の地盤の特徴は?

まず、東京23区の地盤の特徴について簡単に解説します。

東京23区は大きく台地低地に分けられます。

台地(23区の西部)は地盤がしっかりしており、低地(23区の東部)は地盤が軟弱であるとされています。

東京の地形図(出典:東京の原地形を学ぶ|桜草数奇
23区東部(ピンク部分)が低地、23区西部が台地である。

西部の武蔵野台地は、「洪積層」と呼ばれる地層で、関東ローム層や東京礫層などを含み、約100万年前から約2万年前に形成されたため、地盤が強いとされています。

一方、東部の低地は「沖積層」と呼ばれる比較的新しい地層が中心で、地盤が弱いとされています。

「地盤の強い地域」に住んでいれば安心?

では、23区での住まいを考えた場合、西部の地盤が強いとされる場所に住めば大きな地震がきても絶対安心なのでしょうか?

答えはNO。実は、地盤が強いエリアにも思わぬ落とし穴があるんです。

そもそも、「地震」は断層のずれにより地面が揺れるという自然現象であり、ただ揺れただけでは「災害」にはなりません。地震の揺れにより建物の損壊や人への被害などがあってはじめて「災害」となります。

地盤が強いということだけで一旦安心したくなってしまいますが、災害が起きやすい条件にはどんなものがあるのでしょうか?

住む場所を考えるときにぜひとも知っておいてほしい「地盤以外」のポイントをお伝えします!

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地震による被害は「地盤の弱さ」だけで左右されない

東京都が公開している「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」では、「建物倒壊危険度」「火災危険度」「総合危険度」の3種類でそれぞれの地域をランク分けしており、測定する際に考慮している要素は以下の3点です。

①建物が倒壊するか

能登半島地震被災現場。2024/3/4筆者撮影

2024年元旦の能登半島地震、また1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災では、家屋倒壊を背景とする圧死が死因の最も大きな割合を占めています。

「建物が倒壊するか」には地盤の強さももちろん大きく関わってきますが、実はそれだけではありません。

先述の「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」では、建物倒壊危険度を地盤特性に加え、建物量・建物の種類・構造・いつ建築されたかといった建物特性を考慮して測定しています。

出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)

東京都で建物倒壊危険度の高い地域は、沖積低地や谷底低地に分類される地盤上にあり、古い木造等の建物が密集している地域です。

主に荒川・隅田川沿いの地域などに分布していますが、耐震性の高い建物へ建替えや、再開発などのまちづくりが進んだことなどにより、多くの地域で建物倒壊危険量が減少しています。

②火災が発生するか

能登半島地震被災現場(輪島朝市の火災跡)。2024/3/4筆者撮影

「地震の後、一番怖いのは火事」とも言われるほど、火事は全てを焼き尽くす、非常に危険な災害です。

元旦の能登半島地震でも、輪島市の朝市エリアでは非常に広い面積の敷地が全焼しました。

筆者も震災の約2カ月後に訪れましたが、建物の基礎が無くなるほど燃え尽くされ、まだ焦げ臭さが残り、数カ月前までは活気のある観光地であったことが信じられない、戦場跡のような光景でした。

出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)

東京都の火災危険度の高い地域は、耐火性能の低い木造住宅が密集している、区部の環状第7号線の内側を中心としてドーナツ状に分布するとともに、JR中央線沿線にも分布しています。

ただ、不燃化建替えや広幅員道路・公園の整備が進んだことなどにより、多くの地域で火災危険度が減少しています。

③災害時に活動困難とならないか

能登半島地震被災現場(家屋や電信柱などが倒れ、道が塞がれている)。2024/3/4筆者撮影

さらに地震に関する地域危険度測定調査(第9回)では、地震が発生した後に避難・消火・救助活動のしやすさを、災害時活動に有効な空間の多さ・道路ネットワーク密度の高さといった道路基盤などの整備状況から評価を加味して総合危険度を出しています。

「大災害が起きても自衛隊が3日で駆けつけてくれるだろう」と思っている方をたまにお見かけしますが、残念ながらそれは運が良かったときの話です。

特に東京都のような人口や建物が過密な地域では、避難・消火・救助活動ができにくくなる可能性が高く、地震の揺れによる建物の損壊や人への被害の大小に関わってきます。

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地盤が強いのに総合危険度が高いエリアは・・・?

地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」では、ここまでに見てきた①建物が倒壊する危険度、②火災の危険度、③災害時に活動困難となるかの3つの条件を掛け合わせて、総合的に危険度が高い地域をランクづけしています。

出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)

その結果を見ると、地盤が強い東京西部エリアでも、実は高円寺・中野といった人気エリアの一部区画も総合危険度上位に挙がっています。

<総合危険度ランク>出典:地震に関する地域危険度測定調査(第9回)

絶対に安全な場所はないことは想像がつきますが、地盤が強いエリアにも「総合危険度」のランク上位の地域があることは驚きですね。

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住む場所を選ぶときのポイント

それでは、いざ住む場所を選ぶときにはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。

住まい探しのときに気にしてほしい観点を3つ紹介します。

倒壊しにくい建物かどうか、「建築年」と「耐震性」をチェックする

家が倒壊してしまっては、どれだけ食料や水などを備蓄していたり家具の固定といった家の中の防災対策をしていたりしても意味がなくなってしまいます。そのため「倒壊しない丈夫な家に住む」ということは、何よりも重要な防災対策となります。

その家がいつ建てられたのかは、はじめに必ず見るべきポイントです。

建築基準法はこれまで何度か改正されており、その度に建築物の耐震基準が見直されてきました。

特に重要なのは「1981年(昭和56年)」の改正です。

この改正により、1981年5月31日までに確認申請を受けた建物は「旧耐震」、1981年6月1日以降に確認申請を受けた建物は「新耐震」と区別されるようになりました。

旧耐震基準では、震度5程度の地震で建物の大きな損傷を避けることが目標でしたが、新耐震基準では、震度5強程度の地震でも軽微な損傷にとどめ、震度6強以上の大規模な地震でも建物が倒壊しないことを目指しています。1995年に発生した阪神淡路大震災では、倒壊した住宅約9割が旧耐震基準のものという結果になっており、耐震基準によって家の倒壊リスクを下げられることが実証されています。

家を選ぶときは、地盤が強いというだけで安心せず、木造の場合は少なくとも2000年以降、その他の構造の場合は1981年6月1日以降の確認申請を受けた建物であるかを条件にするとよいでしょう。また、木造以外でも2000年の基準を満たしていると、より安心です。

もしどうしても1981年以前の建物に住む必要がある場合や、今住んでいる場合は、耐震診断を行って適合が認められているか、耐震補強工事などが行われているかを確認してください。

能登半島地震被災現場。(左は軽微な損壊で済んだ家屋、右は全壊してしまった家屋。
隣同士でも家により被害状態が大きくことなっていた。)2024/3/4筆者撮影

補足)建物の構造について

一般的な建物に用いられる建物の構造には、主に「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」があります。

新建築基準法では、どの構造の建物でも震度6強から震度7程度の地震に耐えられるよう基準が定められています。各構造により耐震の仕組みが異なるため仮に倒壊に至った場合の被害状況に違いが生じると考えられますが、基本的には耐震性能に大きな差はありません。

ただ、一つ気をつけたい点として、火災への耐性の違いが挙げられます。

鉄骨造は、鉄そのものが燃えないため耐火性に優れています。しかし、高温になると鉄骨の強度が落ち、変形しやすくなるという性質があります。一方、燃えやすいイメージのある木材は、表面が燃えても芯の部分まではなかなか燃えないようになっています。さらに、木材には水分も含まれているので燃え尽きるまでには長い時間がかかります。

そのため木造は、鉄骨造に比べると火災時にすぐ倒壊してしまう危険は少ないといえます。また、火災に気づき、逃げるまでの時間も確保しやすいと考えられます。

木材は燃えるのに時間がかかるので、いきなり倒壊するということはありませんが、鉄骨は一定の温度に達すると曲がってしまい、建物が一気に崩れ落ちてしまう危険性があります。

「鉄骨造だから安心」というわけではないことを覚えておきましょう。

火災に巻き込まれるのを防ぐため、「木造住宅密集地」を避ける

延焼火災については、外部要因も大きく、個人の努力だけでは完全に防げません。

特に、都内で地盤が強い地域は住宅地として人気なため、住宅が密集している場所が多くあります。他人の火災に巻き込まれるのを防ぐため、可能であれば木造住宅が密集した地域は避けた方がいいでしょう。

少なくとも、自分の住む地域が延焼火災の起きやすい場所であることを十分に理解しておくことが重要です。

木造住宅密集地の例

補足)延焼クラスターについて

火事は、どこでも発生しえます。ですが、最も恐ろしいのは「延焼クラスター(延焼運命共同体)」とも呼ばれる、大規模地震時に同時多発的に火災が発生し、消火活動ができず、放置された場合その範囲内の建物全てが、焼失してしまう可能性がある建築群です。

これは、特に木造建築物が密集した地域において発生リスクが高くなっています。

前述の地震に関する地域危険度測定調査(第9回)における「火事危険度ランク」では、東京消防庁が測定した、火気、電気器具の出火率や使用状況などに基づく出火の危険性と、建物の構造や間隔などに基づく延焼の危険性とにより火災危険量を測定し、それを基にランク分けしています。

その結果、東京西部エリアでも杉並区・北区をはじめとして広範地域で火事危険性が高い地域があることがわかります。

「地盤が強い、昔ながらの住宅街にもデメリットがある」ことを知る

昔ながらの住宅街は不思議と落ち着くものです。過去の歴史を紐解いてみても、山の手エリアの古くからある住宅街は比較的安全性が高いとする情報も多いです。

一方で、このようなエリアにも見落としがちなデメリットがあります。

上述した総合危険度上位にランクインしている高円寺・中野といった地域なども、まさにこうした条件に該当します。

今後発生が予測される南海トラフ巨大地震では関東〜九州までの広域、首都直下型地震は首都圏を中心に大きな被害が出るといわれています。

その際、全体的に見て大きな被害が出るのは、地盤が強い地域よりは地盤の弱い地域、また津波が発生した場合は沿岸地区。

自衛隊をはじめとした「公助」は激甚災害の場合、支援活動をする場所の優先順位を付け(トリアージ)、より被害の大きいところから派遣されていきます。

そうなると地盤が強い地域は「他よりはマシだろう」という判断で後回しにされる可能性が高くなる、地盤の強い地域ならではの落とし穴があります。

もちろん実際の対応はケースバイケース。すぐに公助が来ないとも言い切れません。

一方で本当にあったエピソードとして、3.11で被災した福島県内陸部在住の友人は、自宅は半壊しインフラも途絶え、食事もお風呂も何日間もないほどの被害を受けていました。しかし、公助は沿岸部を優先していたため、長期間支援を受けられないままだったといいます。

昔ながらの住宅街は、普段は落ち着いた雰囲気でとても住み心地も良いのですが、災害発生時には地盤の強い地域ならではの落とし穴も潜んでいることを、知っておいてもらいたいです。

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災害リスクが高い地域に実際に住むときのポイント

地震による災害をできるだけ避けるには、災害リスクが高い地域に住まないのが何より。

しかしそうは言っても、いろんな事情でそういう場所を選ばざるを得ない、またすでにそうしたエリアに住んでいるという方もいると思います。

そういう方に、少しでも危険度を下げるために取り組んでもらいたい防災対策についてご紹介します。

自力で 3日〜1週間程度 生きられるように備えておく

ここまでに解説した通り、地盤が強い昔ながらの住宅街は大地震が起きた後に道が塞がってしまったり支援の優先度が低くなったりする可能性があり、すぐに消防や自衛隊などの助けを受けられないかもしれません。

水・食料・災害用トイレ・ポータブルバッテリーなど基本的な防災アイテムを準備して、災害時に助けが来てくれなくても自力で一定期間生き延びられるようにしておきましょう。

感震ブレーカーの設置

火事を防ぐためには、まず「起こさないこと」が大切。

火事の原因はキッチンのコンロやストーブなど様々な要因がありますが、地震による火災の半数以上は、実は電気による火災です。この電気火災を防ぐには「感震ブレーカー」を設置するのが効果的。

地震の揺れを感じたら自動で電気を止めてくれる装置で、賃貸の物件にも電気工事なしで取り付け可能なタイプがあります。また、多くの自治体で設置費用を補助していますので、役所に相談してみるといいでしょう。

出典:内閣府 感震ブレーカー等普及啓発用チラシ

初期消火訓練の実施

地域や自治体などで防災訓練や消火訓練などを行っているはずなので、ぜひ参加をしてみてください。

いざというときに消火栓が街のどこにあるかや、消火器の使い方移動式ホース格納箱での放水の仕方がパッとわかる方は少ないと思います。

大災害では消防車が駆けつけられない場合が大いにありえます。初期消火ができるか否かで延焼クラスターを未然に防げるかが変わってきます。

筆者が参加した地域自治体主催の初期消火訓練。消火栓(オレンジの枠で囲われたマンホール)を開け、放水訓練を行った

火災発生時の避難場所を複数確認

初期消火では対応できないほど燃えはじめてしまったら、後はとにかく自分の身を守るしかありません。とにかく逃げましょう。

逃げる場所は「広域避難場所」が基本です。
学校や広い公園、会社、スポーツ施設などが指定されていることが多いです。

近隣で「避難所」として指定されている学校の状態によっては「広域避難場所」ではない場合がある(その学校自体も延焼クラスター内に立地している場合など)ので、十分注意しましょう。

火事時に逃げる場所は「広域避難場所」が基本

また、実際の火事のときには通ろうと思っていた道が火で阻まれるなどの可能性もあるので、複数の行き先と、行き先までの道順を事前にシミュレーションしておきましょう。

まず、いかに自分の家で火災を発生させないか。そして万が一発生してしまったときのために、日頃から地域の防災・消火訓練に参加したり、避難場所を複数確認したりしておきましょう。

ご近所付き合いをする

昨今はご近所付き合いが薄くなってしまいましたが、ご近所付き合いは防災の観点で非常に重要なこと。公助が来てくれないかもしれない中、自分だけではどうにもならない場合、物理的な助けあいをできるのはご近所同士だけです。

普段付き合いがない方には手を差し伸べにくいものでしょう。しかし存在を認識だけでもされていれば、「あの人大丈夫かな」と思い出してもらえるかもしれません。

いきなり仲良くまではならなくとも、すれ違い様に会釈だけでもいいので挨拶をして顔見知りになっておく。これも無料でできる立派な防災活動です。

いかがだったでしょうか。地盤が強いことは住まい選びの際に重要な基準ではありますが、「地盤が強い=地震に強いというわけではない」ということが伝わっているとうれしいです。

全国どこの地域でも防災や火災予防の対策は必ず必要ですが、特に地盤が強いことで油断しがちなエリアに住む方は、弱点もあることをしっかりと理解した上で物件選び、おうちの内外での防災、初期消火対策をしておきましょう!

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