「一人暮らし女性のおうちライフを快適に!」がテーマのライフスタイルマガジン「カーサミア」では、一人暮らしに関するエッセイを公開しています。
日々新しくなっていく、大きな本棚と歩む生活
仕事帰りは、いつも両手が荷物でいっぱいになります。
鞄の中からどうにか鍵を取り出して玄関の扉を開け、入り口にドサッと荷物を置くと、解放感で一気に手の平が軽くなります。
玄関を入ってすぐのキッチンで、スーパーで買ってきた牛乳と豚肉を冷蔵庫に突っ込みます。
代わりにりんごジュースを手に取ってリビングへと向かいます。
仕事鞄の中からワクワクした気持ちで紙袋を取り出します。
今日の帰りは、この袋を開ける楽しみで頭がいっぱいでした。
紙袋の中身は、最新のレシピ本と旅行ガイドブックです。
仕事帰りに寄った本屋で気になって買ってみた本です。
パラパラと中身をめくった後、本棚の一番真ん中に、表紙を表に向けてドドンと置きました。
学生時代から、本を買う時にはお金をケチらないと決めていました。
自分が気になった本は、できるだけ一回買ってみるようにしていました。
図書館や本屋の、足元から天井まで本がミッチリと詰まった空間が大好きでした。
ただ、図書館で借りたり、立ち読みしたりするのは、汚したらいけないというプレッシャーを感じて苦手でした。
「家が本屋だったらいいのに」なんていう突拍子もないことを、昔から常にぼんやり考えていました。
この本棚は、一人暮らしを始めてから一番奮発した買い物かもしれません。
バラバラに買った家具を組み合わせて作ったオリジナルの本棚です。
右に三段、左に四段の棚をテレビ台の上にドーンと置いて、なかなかの迫力です。
正直、ワンルームの部屋には大きすぎて圧迫感もありますが、それすら心地よく感じます。
色は濃いブラウンの木目調で統一しています。
誰に見せる訳でもないけれど、見栄えにもこだわっています。
本の高さが滑らかにそろうように並べたり、表紙が綺麗な本は表紙を表に向けるように置いたり。
昔、美術館で買った金魚の写真集は表紙がキラキラと美しくてお気に入りです。
季節や気分に応じて、花を生けたり床の間を作ったりするように、本棚のレイアウトを変えるのが日々の楽しみです。
ベッドの中で枕に肩肘をつきながら、巨大な本棚を一望すると、充足感で満たされます。
憧れの、「本屋での生活」が叶ったみたいで嬉しくなります。
本以外にも、職場の人から貰ったチョコレートや、観葉植物など色々な雑貨も置いています。
誰かに「私ってどんな人?」って聞かれたら、ここへ連れてきたら一発で説明ができると思います。
今の自分が大好きなものや、大切にしている価値観などが、自覚している以上に詰まっていると思います。
左上から3冊目には、高校時代の友人から勧められて読んだ小説があります。
そのすぐ下の段には、大学時代の恩師からいただいた専門書が並んでいます。
他にも、人の勧めで読んでみた本が何冊かあります。
どれも自分じゃ絶対に選ばなかった本ばかりです。
そんな本を眺めていると、私は一人じゃないんだなぁと感じます。
週末には、ネット通販で買った本が何冊か届きます。
SNSで話題になっていた推理小説で、今から届くのが待ち遠しいです。
そして半年に一度、読み終わった本を段ボールに詰めてまとめて買い取ってもらいます。
自然とできたサイクルです。
好きな小説も、一回読んだら手放して、読みたくなった時に再び手に入れるルールにしています。
少しもったいないですが、棚に収められる冊数に限りがあるのでこうしています。
本棚と自分が日々更新されていくような感じがして、意外と心地よさもあります。
最近は読めていない本が溜まってきていて、本棚から溢れ始めています。
思い切って棚を買い足そうか、そのためにもう少し大きな部屋に引っ越そうか。
今の棚に並ぶ本たちの顔ぶれを眺めながら、今後の人生プランを練っている時間も幸せです。
(エッセイ投稿者:マツオカ/女性)
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