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空港の街で育った私。多少の騒音は平気なつもりでした。でも…【一人暮らしエッセイvol.11】

一人暮らしエッセイ
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飛行機の轟音は平気でも、小さな音が耐えられないこともあるのだと知りました。

社会人3年目の私が引っ越し先に選んだのは、ベランダから踏切の見える、駅徒歩1分のアパートでした。

そのころの私は、実家に住んでいました。会社まで片道1時間半、乗継ぎのタイミングが悪いと片道2時間以上かかる通勤にうんざりして、とはいえいきなり都会に住む勇気もなく、実家と会社の中間地点でお部屋を探していたのでした。

駅徒歩1分とはいえ、郊外の小さな各停駅です。周囲にはコンビニすらありません。

駅前にあるお店らしきものは3つだけ。
色褪せた看板を掲げた、日本家屋のお屋敷のような診療所。
女性の名前が店名になった、小さなスナック。
個人宅の1階でやっているクリーニング取次店。

ほかは戸建やアパートばかり。
よく言えば閑静な住宅街、悪く言えば何もない街です。

といっても、不便な場所ではありません。
自転車で5分も走れば、スーパーとドラッグストア。10分かからず行ける隣駅には、大型ショッピングモールや映画館、百貨店も揃っています。
そこから急行に乗り換えれば、通勤も便利。
なので、生活には問題ありません。

隣駅は、子供のころには親に連れられて、大きくなってからは友人たちと何度も遊びに行った駅でもありました。

そんなふうになじみのある駅のすぐ隣で、時代に取り残された風情の各停駅。
実家を出るとは決めたものの、都会に暮らす勇気のない私にとって、その穏やかさは魅力的でした。

お部屋は広くて新しく、キッチンは2口コンロ。お風呂には追い炊き機能。目の前が線路なので日当たりもバッチリ。
不動産屋によると、線路が近いぶん、窓や壁は防音性能が高いものを使っているとのことでした。

内見したところ、窓を閉めていれば電車や踏切の音はうっすら聞こえてくる程度。それでも気にする人は多いのでしょう、お部屋の広さや新しさの割に、家賃は安めに設定されていました。

でも私にとって、電車や踏切の音は、ほとんど気になりませんでした。
なぜなら私が生まれ育った街は、もっとずっと騒がしかったからです。

私が生まれ育ったのは、空港のある街でした。
昔は、飛行機が騒音公害として問題になったこともあるような街です。

曇りの日は、飛行機が特に低く飛ぶため、とんでもない轟音になります。校庭など見晴らしのいい場所からは、ジェット機の機体に描かれた人気キャラクターのイラストが見えるくらいでした。
窓を開けている季節だと、飛行機がくるたび授業が中断するのは当たり前。

そんな環境で育ったので、道路を挟んだ向こうの電車や踏切の音なんて、本当にちっとも気になりません。

ひとつだけ気になったのは、アパートのすぐ隣にスナックがあることでした。
といっても、酔っ払いが集まって騒ぐタイプのお店ではなく、地元の常連さんが集まるような小規模なお店です。お部屋を検討し始めてから数日、日々の通勤電車の中からスナックの様子を眺め、問題なさそうだと判断しました。

しかし、この判断が大きな間違いでした。
住み始めたあと、予想外の音の問題に悩まされることになったのです。

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騒音の発生元は、例のスナックでした。
最初に予想したとおり、路上で酔っ払いが騒ぐようなお店ではありません。
でも、毎晩毎晩、カラオケの音が聞こえてくるのです。

アパートは防音対策がしっかりされているので、ほとんどの音はカットされ、一部の低音部分だけが聞こえてきます。音自体も小さなものです。たとえるなら、古い扇風機が回る程度。ほんとうに僅かな音です。

でも、小さく不規則な低音が、じわじわと響いてくるのです。
特に気になるのは、夜、布団に入ったあとでした。
床がじんわり共鳴して、揺れているような感覚があります。

耳栓をしても、イヤホンで音楽を聞いても、響いてくる揺れは誤魔化せません。
私はなかなか寝付けなくなってしまいました。

仕方がないので、眠くなるギリギリまでゲームやSNSで気を紛らわし、寝落ちるような生活をしていました。
しかし、そんな生活を長く続けられるものではありません。ほどなくして体調を崩し、実家に戻ることになりました。

電車や踏切の音は気にならなかったのに。
生まれ育った街の、飛行機の轟音も平気だったのに。
カラオケスナックから漏れてくる小さな音が耐えられないなんて、思いもしませんでした。

その後、私は再び実家を出て、現在は大通り沿いに住んでいます。
消防署が近いので、救急車のサイレン音は毎日のように聞こえます。実家の街ほどではありませんが、天気によっては飛行機の音も聞こえます。でも、これらの音は全然気になりません。

音にはいろいろな種類があり、感じ方も人それぞれに違うのだと思います。
「私なら大丈夫」と思わず、謙虚な気持ちでお部屋探しをするべきだったと学んだできごとでした。

(エッセイ投稿者:Sakurako)

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