あなたは、首都圏近郊で一人暮らしをしている女性。大地震によって、避難所生活を余儀なくされたらどう行動しますか?
みなさんこんにちは、カーサミアライターのえなです。防災士という防災系の資格保有者である私が、防災に関する疑問を解決していきます。
災害で自宅が被害を受けてしまった場合、どうやって片付ければいいのでしょうか。 特に一人暮らし女性の場合、管理会社にどう連絡したらいいのかなど、疑問がありますよね。
そこで今回は、賃貸のお部屋を中心に災害後の後片付けの仕方や、自宅が被害を受けた際に受けられる補償に関して紹介していきます。
災害後の自宅の後片付けはどうすればいい?
まず災害後に後片付けを始める前に、どのように対処すれば良いのかを知っておきましょう。
被災状況を撮影し、管理会社に連絡する
共用部や自宅の中で壊れている部分があれば、写真を撮影してマンションやアパートの管理会社に連絡しましょう。
撮影した被災状況の写真は、被害程度を証明する「り災証明書」を発行してもらう際にも必要になるので重要です。
賃貸物件の場合は、建物の修繕費用はオーナー側が負担するため、自分で払う必要はありません。しかし、家財道具などが壊れている場合は、自己負担となるため注意が必要です。
専門家による「応急危険度判定」で建物の安全を確認する
応急危険度判定とは、災害による二次的被害を防ぐために、地震で被害を受けた建物がその後余震などで倒壊したり、ガラスなどが落下しないか危険性を判断するものです。
災害発生後、各自治体の指示のもとに応急危険度判定士が順次無料で調査を行っていきます。そのため、賃貸であっても自分で実施申込みをする必要はありません。また、建物の内部には入らず、外観で調査を行うため立ち会いは不要です。
判定の結果は、緑(調査済み)・黄(要注意)・赤(危険)の3段階のステッカーで区別されます。ステッカーは、建物の入り口など目につきやすい位置に貼られ、この判定をもとに「その建物(マンションやアパート)に入って良いか」を判断することができます。
もしも自宅マンションの判定がまだであったり、判定対象建築物かわからない場合は、各市町村またはマンションの管理会社に問い合わせてくださいね。
自宅を片付ける方法( 地震・水害被害後)
地震被害に遭ってしまったら、どのように自宅を片付ければいいのでしょうか。水害被害についても補足追記していきますね。
後片付けに必要なアイテム
まずは、災害後の後片付けに必要なアイテムを確認しておきましょう。
一人暮らしの女性の場合、なかなか持ち合わせていないアイテムばかりかもしれません。しかし、災害時は後片付けに必要な備品などを各自治体が避難所などで貸し出してくれたり、支援物資として配布されたり、中には企業が無料で備品レンタルを行ったりすることもあるので、そこは心配いりません。
防災の観点から自分で備えておきたいという方は、厚手の手袋やヘルメットなどをホームセンターで揃えておくといいですね。
また、マンションやアパートによっては管理会社やオーナー側が備品の用意や清掃サービスの手配など、何らかの措置をとってくれている可能性もあります。そのため、片付けの前に管理会社に連絡してみることが得策です。
必要なもの | 必要な理由・用途 |
---|---|
飲み物 | 特に夏場は熱中症対策として、 こまめな水分補給が必要 |
厚手の手袋 | ガラスやがれきなど、 素手や薄手の手袋で触ると怪我をする恐れがあるため |
長袖/長ズボン | がれきなどによる怪我や、 怪我を負って破傷風菌を起こさないためにも、 長袖・長ズボンで作業する必要がある |
マスク/ゴーグル | 目や口の中に、 がれきや砂などが入らないようにするため |
ヘルメット | 万が一、上からがれきなどが落ちてきても 頭を守ることができるように |
安全靴/ 踏み抜き防止長靴 | 通常の靴だと、ガラスやがれきなどを踏んだ際に 靴が破れて怪我をする恐れがあるため |
救急セット | 万が一、怪我をした際にすぐに治療できるように |
タオル | 汗を拭く、首に巻く、怪我を手当てするなど、 多様に使える |
掃除機/ ほうき・ちりとり | 壊れた家具・家電や、ガラスの破片などを 掃除する際に必要 |
雑巾 | 室内の汚れを拭き取る際に役立つ |
バケツ | 自宅の床や壁などを、雑巾で水拭きする際にあると便利 |
ゴミ袋 | 壊れた家具やガラスの破片など、 ゴミを整理する際に役立つ |
ダンボール | 壊れた家具や家電など、 大きなゴミを整理する際に役立つ |
★消毒液/アルコール | 水害で水が引いた後の室内は衛生状況が悪いため、 消毒するために必要 |
★デッキブラシ ・モップ | 水害で室内に泥が侵入した場合、泥を掻き出し、 汚れをきれいにするのに利用 |
※上から必要度が高い順
★水害の後片付けの際のみ必要
自宅を片付ける際に注意すべき点
災害後、自宅を片付ける際には、必ず次のようなことに注意しましょう。注意を怠ることで、自分の身が危険にさらされる可能性もあります。
避難経路を確保する
後片付けをしている最中に、余震などの二次被害が発生した場合、すぐに避難できるように避難経路を確保しておきましょう。そのため、次のようなことに注意が必要です。
・玄関以外のドアを開けておく
・足の踏み場を作っておく
・貴重品は常に身につけておく
・短時間で片付けは済ませる
熱中症・食中毒・感染症に注意する
片付けを行う際には、熱中症・食中毒・感染症などにも注意が必要です。
熱中症
夏場に被災した場合、暑い中で作業を行うケースが多く、熱中症にかかる危険性が高くなります。
また、早く自宅を片付けようと作業に熱中するあまり、休憩時間の確保を忘れてしまいがちに。作業時間の設定やこまめな水分補給、窓・ドアを開けて十分に換気を行うことが大切です。
食中毒
水災害で部屋が浸水してしまった場合、水が引いた後の室内は衛生状況がとても悪いです。室内にあった食べ物を口にしてしまうと食中毒にかかる可能性があるため、見た目がきれいであっても口に入れないように注意しましょう。
感染症
片付けの際に怪我を負ってしまった場合、泥などの中にいる破傷風菌が傷口に侵入し、感染症を引き起こす危険性があります。怪我をしたときは、すぐに傷口を清潔な水できれいに洗い流すようにしてください。もし、断水している場合は、ペットボトルに入った飲料水を活用しましょう。
参考:日本予防医学協会|企業における洪水被害に対する健康管理ガイドブック
電気・ガス・水道の安全確認を行う
災害時に停電してしまった場合、給電が再開されるとコードの損傷や通電火災を引き起こす危険性があるため、ブレーカーを落としておくことが推奨されています。
災害発生“直後”の
電気・ガス・水道の対処方法
災害発生後にやむを得ず自宅を離れる場合は、ガス漏れ・漏水・漏電を防ぐために元栓を締め、ブレーカーを落としてから避難しましょう。緊急を要する場合は無理に行う必要はありません。しかし、ヒーターなどの暖房器具を付けたままにすると、通電後に火災につながる恐れがあるため注意が必要です。
元栓やブレーカーの位置がわからないという方は、緊急時に対応できるよう自宅のどこにあるのかを確認しておきましょう。
災害発生“後”の
電気・ガス・水道の対処方法
元栓を閉めず、ブレーカーを落としていないまま、ライフラインが復旧してしまった場合は、まずガス・水道・電気の安全確認を行いましょう。電気は念のため、一度ブレーカーを落として、全てのコンセントを抜いてください。(冷蔵庫などの常時差したままの家電も含みます)
なぜコンセントを抜くかというと…“電気が復旧したときに、一度に高い電流が流れることによるコードや電化製品の破損を防ぐため”。
また、災害の被害によりコードや電化製品が破損している事も考えられます。破損したコードを使用してしまうと、それが出火の原因となることも考えられます。
ひと手間掛かりますが、安全を確認してからブレーカーをあげて、コンセントを元に戻してくださいね。
参考:ITmedia NEWS|地震後の停電は「ブレーカー落として」 火災の危険、消防庁らが呼びかけ
災害後の片付けの手順
ではここからは、「災害後の後片付け」の手順をお伝えします。
地震被害にあった場合を中心に、補足として水害(床上浸水)にあった場合も併せて説明していきますね。
地震被害にあった場合
①貴重品を集める
まずは、避難する際に持ち出せなかった貴重品や大事なものを集めましょう。
②ガラスなど床に散乱しているものを片付ける
続いて、大きな家電などはダンボールに詰めて整理し、ガラス片や小さないゴミは、ほうきや掃除機で掃除をしてください。窓ガラスなど自分で対処するのが危険な場合は、管理会社に専門業者を手配してもらいましょう。
また、二次被害のことを考えて避難経路を確保するために、足の踏み場も作っておいてください。対処できないガラスなどは、その上にダンボールなど硬いものを敷いておくことで、足の踏み場を作ることが可能です。
③冷蔵庫の中身や食材を片付ける
次に、冷蔵庫の中身や食材を片付けていきます。ライフラインが止まり、災害から数日が経過している場合、冷蔵庫の中身が腐敗している可能性が高いです。
冷蔵庫を開けると、ひどい悪臭がすることがあるので注意してくださいね。
④壊れた家電・家具を運び出す
壊れた家電や家具などを、室内から運び出しましょう。
冷蔵庫や洗濯機など大型の家電が壊れてしまった場合は、女性一人では持ち出すことが難しいですよね。そんなときには、ボランティアや周辺住民に手助けを依頼して、運び出してもらいましょう。ボランティアに手伝ってほしい際には、ボランティアセンターや各自治体に問い合わせをしてくださいね。
水害(床上浸水)被害にあった場合
①室内の泥をかき出す
水害で床上浸水してしまった場合、水が引いても室内が泥まみれになっている可能性があります。そのため、まずはデッキブラシなどで室内の泥をかき出しましょう。
②床・壁・家具などの汚れを水洗いする
泥がかき出せたら、次に汚れてしまった床・壁・家具などを水洗いしたり、雑巾で拭いたりするなどして、きれいにしていきます。
③水洗いしたものを乾燥させる
水洗いしたものは、しっかり乾燥させてから室内に戻してください。また、壁や床などは窓を開けたり、扇風機を使ったりして乾かします。最後に、消毒液などを用いて室内をきれいにしましょう。
汚れがあまりにひどい場合は、自分で室内を完全に消毒することは難しいでしょう。その際は賃貸物件の管理会社に連絡し、専門業者の手配を頼みましょう。
災害時のごみの処分に関して
災害直後は、通常の家庭ごみの収集が行われていないケースが多くあります。概ね発災後3日以内ぐらいで収集が再開されるため、それまでに出たゴミは自宅で保管しておく必要があります。
また、ごみ収集が再開されたとしても、通常とは異なる場所で収集が行われる場合があります。避難所の掲示板や、各自治体のホームページなどのチェックは必須ですよ。
災害の被害で壊れてしまった家電・家具などは、各自治体で定められている一次仮置場へ分別して出すようにしてください。蛍光管など、場合によっては梱包・ラベリングが必要なものもあるため、特殊なゴミを捨てる際には確認するようにしましょう。
家電などの重くて自分一人では処分できないものに関しては、運び出しを依頼するという手もあります。また、トラックなどで災害ゴミの回収を業者やボランティアなどが行っている場合もあるので、確認してみてくださいね。
災害時に受けられる「公的支援制度」と事前に備える「災害保険」について
最後は災害に被災した際に使える制度や保険についてご紹介します。
建物や家財に被害を受けた場合に受けられる、公的支援の「被災者生活再建支援制度」と自分で加入する「災害保険」の2種類が活用できます。
賃貸でも利用できる「被災者生活再建支援制度」
被災者生活再建支援制度とは、災害により自宅に被害を受けた場合、国の指定を受けた被災者生活再建支援法人(財団法人都道府県会館)が、支援金を支給してくれる制度です。
こちらは何と持ち家だけではなく、賃貸住宅も利用することができます。申請の際には、被害程度を証明する「り災証明書」が必要となります。「り災証明書」をもらうためには、後片づけを始める前の被災状況写真が必要になるので、必ず撮影しておきましょう。
市役所で手続きを行うことで「り災証明書」の発行と「被災者生活再建支援制度」への申込みが行えます。詳細を知りたい場合には、各自治体のホームページを確認するほか、直接各自治体に問い合わせしてくださいね。
賃貸でも家財の補償を受けたいなら「災害保険(火災保険・地震保険)」
災害保険(災保険・地震保険)とは、建物や家財に生じた損害を補償してくれる保険です。
火災保険とは
火災保険は、火災による被害だけでなく、水害・台風などによる被害を補償してくれます。しかし、地震による火災の場合は補償を受けることができないため、地震保険は多くの場合で火災保険とセットで加入しなければなりません。
地震保険とは
地震保険では、火災保険でカバーできない「地震による火災」を始めとする、様々な地震による被害補償を受けられます。
賃貸の場合、建物の損壊に関しては基本的に建物の所有者(オーナー)が負担するため、家財のみが補償の対象となります。家財まで補償を手厚く受けたいという方は地震保険にも加入しておくと良いでしょう。
賃貸であれば火災保険は基本的に契約時に加入している
賃貸の場合、概ね契約時に火災保険加入が必須条件となるため、賃貸住宅にお住まいの一人暮らし女性の場合、基本的に火災保険に加入しているはず。
今から災害に備えて、何かあった時にすぐに連絡できるように自分が加入している火災保険の内容や、連絡先を確認しておくことが重要です。
※加入している保険によって、細かい制度や補償内容は異なります
参考:りそな銀行|意外と知らない災害保険(火災保険・地震保険)の基本
実は、自宅をきれいに整理整頓された状態に保つことが、災害対策にもつながっていきます。物が散乱している状態と、きれいな状態とでは、災害の被害に大きな差が生まれることが想像できますね。
災害に見舞われた際に大きな被害を受けたり、災害後の後片付けで困らないようにしたりするためにも、普段から物を収納して室内をきれいに保つなど対策を行ってください。
一人暮らし女性に防災知識を持ってもらいたいという思いからスタートした「地震による災害の備え」のシリーズ企画。第10回の今回で予備知識はラストです。
実際に災害が発生し、被災してから調べるよりも、事前に知識を入れておく方が圧倒的に有利です。特に一人暮らし女性は、自分で自分の身を守ることになります。できる備えは事前に済ませておきたいですよね。
災害に対する予備知識はこちらからチェック
知っておきたい防災の知恵
《災害発生前》
①ライフラインの停止に備えて準備しておきたいアイテム
②非常用持ち出し袋に用意しておきたいアイテム
《災害発生時》
③怪我をした際の応急処置法
④家族や友人に連絡を取る方法
《災害発生後》
➄避難所で支給される食料・物品について
⑥避難所でのお風呂やトイレについて
⑦避難所生活に役立つアイデア
⑧避難所での女性問題(性被害など)
⑨自身が行う救助活動・ボランティア活動
⑩自宅の後片付けについて