先日、大和ハウス協力会社の従業員がマンション受水槽の中で泳いでいたというニュースがありました。
受水槽泳ぎ「めっちゃ気持ちいい」 動画投稿の下請け男性を工事会社が提訴 福岡(毎日新聞 2020/2/5)
あってはならない事件で、大和ハウスもお詫びを出しています。
が、一方でTwitterでは受水槽の綺麗さをたたえる投稿も。
受水槽の中で清掃員が泳いだニュース、Twitterの反応
泳いでた受水槽、やたら綺麗だったよね。あいつらしっかり仕事してる。— かずお君 (@kazuo57) 2019年6月13日
Twitterより引用
動画上げた人は愚かだが、受水槽は実はびっくりするほど汚いことがよくある。枯葉や砂、虫は当たり前、鳥の羽や動物の死骸がある場合も。外から中の様子を見られる仕様の受水槽があると安心。
Twitterより引用(編集部注:2021.6.18現在、ニュース記事は公開終了)
受水槽で遊泳、動画は協力会社作業員 大和ハウスおわび #ldnews https://t.co/fxtnjRRQu0— rioka (@kankitsusuppai) 2019年6月13日
「虫や動物の死骸は当たり前、泳ぐ気になんてとてもなれない」という声がたくさんあがっていました。
マンションの受水槽ってそんなに汚いの…?
このニュースとTwitterの反応を見て、
受水槽ってそんなに汚いの!?
私もマンション暮らしだから、ウォーターサーバーを買った方がいいのかな…?
飲み水はミネラルウォーターにするとしても、泳げないような水でお風呂に入るなんて無理…
と心配になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。私も自分のマンションが大丈夫なのか、心配になってしまいました。
でも安心してください。
調べてみたところ、いまは受水槽を使わないマンションも増えているようです。
このコーナーでは、カーサミア編集部が、みなさんの疑問・質問に答えていきます~。
実は、カーサミア編集部は全員が宅建士(おうちに関するプロ)です。
お部屋・住まい・不動産に関する一人暮らし女性の疑問に、宅建士としての立場から回答します。
マンションの給水方式は2種類
マンションの給水方式には、大きく2種類があります。
貯水槽水道方式
ひとつめは、貯水槽水道方式。
昔ながらの方式で、水をいったん建物内の水槽に貯めてから、増圧ポンプや高架水槽を使って各住戸に配水しています。今回、清掃スタッフが泳いでしまってニュースになっているのもこの方式ですね。
水槽がある場所が1階や地下の場合は「受水槽」。
マンションやビルの屋上に設置されていると、「高置水槽」と呼ばれます。
(高層建物の場合は、水圧の関係で受水槽を屋上に設置することがほとんどです)
「貯水槽」と「受水槽」、何がちがうのでしょうか?ここで簡単にそれぞれの違いも説明しておきましょう。
貯水槽 (ちょすいそう) | 水を貯めておく設備のこと。 受水槽、高置水槽、圧力水槽に分けられる。 |
受水槽 (じゅすいそう) | 上水道の配水管から引き込んだ水を、 建物の1階や地下に貯めておく貯水槽のこと。 貯水槽のひとつ。 |
安心・安全な水を住戸に供給するために、10トン超の貯水槽の場合には年1回以上の水質検査(残留塩素の濃度を確認)と清掃がそれぞれ法律で義務づけられています。
…… が、清掃は1年に1度なので、その間に虫や枯葉が溜まったり、小動物や鳥が入り込んでしまったり、今回のように清掃員が泳いでしまったり…といったことが起こります。これでは水道水をそのまま飲むのが心配になってしまいますね。
「古いマンションは水が臭い…」と言われるときは、このタイプの給水方式を取っている可能性が高いです。
しかし貯水槽方式にもメリットはあります。震災などで断水した際にも、1~2日の間は貯水槽に貯めておいた分の水を使うことができるので、病院などではあえて貯水槽方式を選ぶこともあるようです。
貯水槽水道方式の特徴
【貯水槽水道方式のメリット】
断水になっても、1~2日は貯水槽の中の水が使える。
【貯水槽水道方式のデメリット】
貯水槽の中が汚れている可能性がある。
直結給水方式
近年はポンプの性能がよくなるなど技術開発が進んだため、貯水槽を使わず、水道管からきれいな水を各戸に直接給水するタイプが増えています。
直接給水方式は、ポンプの種類や使い方によって「増圧直結」「直圧直結」などに細分化されます。
直接給水方式は、昔は3階建て以下の低層マンションのみ可能でしたが、いまでは増圧ポンプを多段階に設置することで、20階以上の高層マンションでも可能になっています。
水を貯めておくタンクがないため、いつもきれいな水が出てきますが、デメリットもあります。震災で断水した際には、水が使えなくなってしまいます。また、台風での停電などがあった場合は増圧ポンプが動かないため、 水道管が無事でも水が使えなくなってしまいます。
停電だけで断水がない場合、増圧ポンプが必要ない低層階や1階の共用水栓では、水道を使えることもあるようです。
2019年の台風15号で千葉県が大規模に停電した際も、話題になりましたね。もちろんマンションによるので過信はできませんが、いざというときには試してみてください。
マンションの断水、停電しても給水できます 北海道で学んだ対処法 https://t.co/FuKU4Wts8U 受水槽方式の建物では地下の受水槽付近に水抜き用バルブが、直結加圧方式では1階の庭などに植物への水やり用の散水栓があることが多いです。電動ポンプが作動しない時でも、これらの水栓を使えば給水でき
— s.ogawa (@dounan_TW) September 14, 2019
マンションの断水、停電しても給水できます 北海道で学んだ対処法 https://withnews.jp/article/f0190914001qq000000000000000G00110101qq000019824A… 受水槽方式の建物では地下の受水槽付近に水抜き用バルブが、直結加圧方式では1階の庭などに植物への水やり用の散水栓があることが多いです。電動ポンプが作動しない時でも、これらの水栓を使えば給水でき — s.ogawa @dounan_TW
なお、東京都は直結給水方式への切替を推奨しています。
2017年度末における直結給水率は74%で約15万3千件増加したようです。安全でおいしい水の供給を継続して目指しているということですね。
直結給水方式の特徴
【直結給水方式のメリット】
いつでもきれいな水が使える
【 直結給水方式のデメリット】
水道管直結なので、断水した場合は水が使えない。
停電しただけでもポンプが止まるので、高層階では水が使えなくなる(低層階や1階の共用水栓は使える場合もある)。
マンションの給水方式、見分け方は?
直結給水方式であれば、水道管から直接水が来るので、安心できそうです。
東京都は直結給水方式を推奨しているので、新しいマンションであれば直結給水方式を選んでいる可能性が高いです。
とはいえ、古い建物であっても、大規模修繕などのタイミングで直結給水方式に変更しているかもしれません。
では、どうやって給水方式を見分ければいいのでしょうか。
目視で確認
写真のように、受水槽が見える位置にあれば分かりやすいですね。
しかし外から見えづらい位置や、地下にある場合もあります。
一見して受水槽が見当たらない場合は、次の方法で調べてみましょう。
図面で確認
図面と言えば、ついつい自分の住む部屋の間取りだけが気になってしまいがちですが、ぜひマンション全体の図面を見てみましょう。
手元に全体の図面がないときは、管理会社や管理組合で保管されているものを見せてもらいましょう。
「受水槽」「貯水槽」などがあれば、きちんと記載されていますよ。
長期修繕計画で確認
分譲マンションに住んでいる場合は、買ったときに「長期修繕計画」をもらっていると思います。手元に図面が見当たらず、管理組合で保管している図面を見に行く時間もないときは、この書類で判断することもできます。
修繕計画の中に「受水槽」の修繕計画が書かれていれば受水槽方式、「加圧ポンプ」 の修繕計画が書かれていれば加圧給水方式だと判断できますね。
自分で調べきれないときは、信頼できる営業マンに頼る
自分がいま住んでいるマンションであれば、持家・賃貸に関わらず、管理会社に確認することができますね。
しかし、もしあなたがいま引っ越し(orマンション購入)を検討中の場合は、候補のマンションすべてについて確認することになります。
引っ越し時には、水道以外にも考えなくてはいけないことがたくさんあります。仕事をしながら、自分ですべてを調べようと思うと大変です。
そこで不動産屋の営業マンに質問するのですが、きちんと答えてくれるとは限りません。なぜなら、営業マンにとっても調べるのはそれなりに面倒だからです。
「もし貯水槽方式でも、きちんと清掃も水質検査もしているから大丈夫ですよ~」
「住んでから気になるようだったら、ウォーターサーバーを使えばいいんじゃないですか?」
みたいに、トークで流されてしまったら要注意。イエローカードです。
信頼できる営業マンであれば、きちんと手間をかけて調べてくれます。
そういう「信頼できる営業マン」と出会えたら、その縁を大切にしてくださいね。